「貴方はこのままでは地獄行きです。悪行を溜めすぎています」

出された茶を啜りながら、彼女はそう曰わった。
どう悪いのかと聞いたが、それは教えてもらえない。

「日々の生活での行いを悔い改めるのです」

俺はそれから行いを正すことを意識した。
日々まじめに仕事に精を出した。
困っている同胞たる外来人には、あれこれ積極的に手助けをした。
寂れた神社の巫女のトコに行って賽銭を与えた。
竹林で採取中に現れた兎に募金をした。
永遠亭で暇を持て余しているお姫様の遊び相手をボランティアでした。
紅魔館の吸血鬼姉妹が行っている献血活動に参加した。報酬はワインだった。
秋口なのに奉納が少ないと愚痴ってた豊穣神に供物を奉納した。
山ネズミの天ぷらを揚げていたら九尾の狐がやってきたので見返り無しでご馳走してあげた。
里の居酒屋で上司の横暴を愚痴っていた兎耳娘が居たので愚痴を聞いてやり一晩介抱してあげた。
胡散臭いブン屋が来た時は快く取材に応じ、更にやってきた引き篭もりっぽいブン屋の取材にも付き合ってあげた。
里近くの寺に行ってあれこれお手伝いをしたり、仙界の聖人の布教も手伝ってみたりしてみた。


なのに、何故か法廷に引っ張りだされた。

「もはや、勘弁なりません。このままでは貴方は地獄どころか煉獄行きとなり、魂の転生すら許されなくなります!!」

青筋を立てた彼女が笏を俺の目の前に突きつける。
俺は異議ありと叫んでしまった。
俺は困った相手を助けるよう意識してきたし、善行を心がけてきたつもりだ。
なのに逆に溜まっているとはどうしてもおかしいと叫ぶと彼女は笏で俺の頭を引っ叩き叫んだ。

「私に対して、善行を行ってないじゃないですか!!」


今から思えば、アレは彼女なりの照れ隠しじゃないかと思っている。
あれの翌日から俺は法廷付きの従者兼世話役となり、映姫の世話をして善行を積み重ねているつもりだ。

つもりだ、と言うのは今自分がどれだけ罪を晴らしたか、功徳を積んだか分からないからだ。
それの基準を知るのは映姫や死神だけのようだし、知り合いの死神に訪ねようにも直ぐに逃げてしまう。

「そ、それは映姫様本人から聴きだしておくれよ。あたいから話そうものなら、ど、どんな説教が待っているか」

そんな訳で俺はもう時間の感覚が忘れる程に映姫の側で善行を積み続けている。

「ふふ、このまま永久就職も悪くありませんね」
「え、何か言ったの映姫様?」
「言っていませんよ、それと、プライベートでは映姫と呼べと言っているでしょ」

俺の善行修行はまだまだ続くようだ。

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最終更新:2013年10月22日 14:36