河童達に幻想郷で携帯を使えるようにしてもらった。
これで彼女である早苗さんといつでも連絡が取れる。
と思っていたのだが、携帯を携帯し忘れてしまっていたことに外出先で気が付いた。
外界でもよくやってしまったミスだ。
といっても、連絡を取り合うのは基本早苗さんだけだなので(何故か登録時に今までにアドレス全部消された。もう連絡取れない外界のアドレスだからいいけど)
連絡をくれる人が少なければ、連絡が来る可能性も低くなるだろうし
そんなに問題はないだろうと帰宅後に携帯を確認すると
不在着信 :46件
未読メール:128件
怖い!怖いよ早苗さん!!
受信メールとか最初は「返信まだですか~?」的な質問だったのに途中から
「無視ですか?」という内容が延々と・・・
マズイ。これはマズイ。どうやら早苗さんはご立腹の様子だ。
100件を超える無視ですか?メールに戦慄していると携帯が鳴った。
素でビビッて携帯を落としそうになった。
画面にて早苗さんからの着信であることを確認すると速攻で電話に出る。
「しゃなえさん?ど、どうしたの?」
噛んだ。
「あ、○○さんやっと出てくれましたね」
いつもの明るい声とは違う、暗く棘のある声だった。
「あ、ごめんね。家に携帯忘れたまま外出しちゃっててさ」
「・・・本当ですか?」
「え?」
「本当は、私に言えないようなことを、電話に出たら気付かれるような場所で、私の事なんか忘れてしていたんじゃないですか?」
「そんなことないって!」
「背後から女の声が聞こえるんですが」
「家の外の女の子だよ。ほら、幻想郷の民家って防音対策ゼロだから」
「・・・信じていいんですね」
「ああ、神に誓って!神奈子様・諏訪子様に誓って!!」
「わかりました・・・信じます」
「ところで、最初の電話の用はなんだったの?」
「ただ、○○さんの声が聴きたくなっただけだったんですけど・・・話せたからもういいです」
どうやら信じてくれたようだ。だが、すぐに出なかったことでご機嫌ななめなご様子。
「これからお団子でも買って遊びに行くよ。だからさ、機嫌直してよ早苗さん」
「わかりました。いつまでもへそを曲げてもいられませんね。
・・・お団子につられたんじゃないですからね!」
そういうことにしておこう。
というわけでお団子を持って守矢神社に来た。
俺と早苗さんの仲は神奈子様・諏訪子様公認の仲であり、よく守矢神社にお邪魔させてもらっている。
その神奈子様・諏訪子様といえば、現在横で最後の1本のお団子をめぐって醜い争いを繰り広げている。
せめて弾幕ごっごで華麗に決めればいいのにと思う。
最近、俺のなかで神に対する威厳的なものが薄れてきてしまっている気がする。主にこの2柱のせいで。
ちなみに早苗さんはというと・・・ん?
「早苗さん?なんで俺の携帯を勝手にいじってるんですか?」
「ねぇ・・・○○さん」
俺の質問には答えず、早苗さんは先程の電話の時の声とは比べ物にならないレベルの怖い声を出す。
「なんで私以外の女の名前が登録されているんですか?」
「あ、それはね早苗さん・・・」
「メールを見たら会う約束までしてますね?どういうことですか?」
怖い!怖いよ早苗さん!!
どれだけ怖いっていうと、醜い争いをしていた2柱が「ヒィ!」と悲鳴をあげて
ふたり仲良く目に涙を浮かべながらこの部屋から逃げ出していくレベル。
え?俺?腰が抜けて動けませんが何か?
「違うんだ早苗さん、前後のメールをよく見て!はたてさんとは取材を受ける約束をしただけで
やましいことは何もないって!取材の連絡用にアドレス交換しただけなんだよ」
早苗さんとしか連絡を取らない俺の携帯だったが、例外ができた。
先日外界のことについての取材を申し込んできた烏天狗が何故か携帯を所持しており、
アドレスを交換した。その日は取材を受けることを承諾しただけで終わり
詳しい日程や待ち合わせの時間や場所などについてはメールでやり取りを行っている。
「そうですね。確かにそのようです。○○さんは悪くないです」
「わかってくれた?」
「ただ、このメール相手・・・やけに○○さんに対して馴れ馴れしくありません?かわいらしい絵文字とか使ってますし」
「はたてさんの性格じゃないかな?もしくは烏天狗の」
「・・・消していいですか?」
「え?」
取材後ならともかく、こちらから予定変更の連絡をしたくなった場合などの為にアドレス帳から消されると辛いのですが・・・
あと、増えると思わなかったアドレス帳が増えて正直嬉しいので消したくない。
なんだかんだで登録されてるアドレスがひとつっていうのは外界にいた時の考えが残っているのか非リア充みたいでいやだった。
連絡取れないアドレスは消して問題なかったが、幻想郷内での新アドレスを消すというのは抵抗がある。
そんなこともあって言いよどんでいると・・・
「け し て い い で す か ?」
「はい!問題ありいません!消しちゃってください!!」
怖い!怖いよ早苗さん!!
どれだけ怖いっていうと守矢神社周辺の木々の鳥が一斉に飛び上がり逃げ出していくレベル。
え?俺?あと一歩で漏らすとこでしたが何か?
俺、結婚したら早苗さんの尻に敷かれるのかなぁと将来のことを考えながら早苗さんに返してもらった携帯を確認。
アドレス帳だけでなく、メールのやり取りも消されておりました。
これは、取材の日までこちらの都合で行けなくなるようなことがないよう、健康には気を付けよう。
というわけで取材当日。
待ち合わせ場所である人里はずれの一本杉に現在俺はいる。
待ち合わせ時間の正午は既に過ぎている。はたてさんはまだこない。
待ち合わせに関するメールは早苗さんに消されたので確認できないが、時間も場所も間違っていない自信はある。
つまりはたてさんの遅刻ということになるが、連絡はまだ来ない。
はたてさんの性格によるものだろうか?もしくは烏天狗の。
時間が経過し現在午後3時。さすがにおかしい。
遅刻というよりは何かがあったんじゃないかと疑う方が自然だ。
気になるので、妖怪の山へ向かうことにする。
すぐに誠実な方の天狗、白狼天狗の椛と遭遇した。
彼女ならはたてさんのことを知っている可能性が高いだろう。聞いてみることにした。
今の今まで爆睡してたとしたらどうしてくれようか。
なんてことだ、はたてさんは数日前から行方不明になっているらしい。
椛を始めとした天狗達が総出で現在捜索を行っているが見つからないらしい。
椛の話によるとなんらかの事件に巻き込まれた可能性が高いらしい。
はたてさんとはそんなに面識があったわけではないが、今日会うはずだった人物が行方不明というのはショックだった。
妖怪の山をおり、人里に向かってフラフラしていると早苗さんにあった。人里からの買い物の帰りらしい。
ショックを受けている俺の顔色を見て「どうしたんですか?大丈夫ですか?」と気遣ってくれた。
俺は、さっき聞いたはたてさんのことを早苗さんに話した。
「はたてさん・・・どうして行方不明なんかに・・・」
早苗さんに話し終わった後、俺は誰に言うでもなく呟いた。
「どうしてって・・・何言ってるんですか?○○さん?」
意外なことに早苗さんがその呟きに反応した。
「この前話したじゃないですか?忘れちゃったんですか?了承してくれたじゃないですかー」
「えっと・・・なんのこと?」
「やだなー。本当に覚えてないんですか?この前話した時に聞いたじゃないですか」
はたてさんがどこかに消えてしまったことと、俺と早苗さんの会話に関連があるとは思えない。
会話がかみ合っていないように思える。
まぁ、早苗さんは天然なところがあるから・・・
「消していいですか?って」
「・・・・・・え?」
最終更新:2013年10月22日 14:42