「じゃあ、お兄ちゃん行ってくるね」
「いってらっしゃい。楽しんで来いよ」

友達グループと出掛ける妹を玄関で見送る。
昔はこんな仲の良い兄妹じゃなかった。どっちかっていうとお互い邪魔ぐらいに思っていた。
交通事故で両親が亡くなっていたため唯一の肉親なのにな。昔の俺何やってんだか。

そんなある日俺は神隠しにあった。
最終的には向こう、幻想郷から逃げるようにして博麗神社からこっちに戻ってくることに成功した。
ある女の子とひと悶着あったが。

とにもかくにも神隠しから生還した俺は妹と再会した。
本当に大事なものってのは、なくなって初めて気が付くもので再会をはたした俺と妹の仲は以前とは比べ物にならないほどよくなった。
今や俺は自分の命より妹の方が大切だと断言できる。

最近は妹の友人グループとも親交がある。みんないい奴らで今日も誘われていたのだが今回は断った。

「ごめんね。みんな、どうしても行きたいっていうから、今度はお兄ちゃんも楽しめる場所にするから」
「気にすんな。罰当たりなことだけはすんなよー」
「わかってるー」

今日は隣町の都市伝説探検ツアーらしい。隣町には、別世界につながっていると噂される神社があってそこを見に行くらしい。
もっともメインはその近くにあるおいしいと評判のレストランらしいが。
都市伝説と聞いて俺は今回は参加を辞退した。

そういった都市伝説の中には、本物が混じっていることを俺は知ってしまった。
とはいっても確率は低いうえ、当たってもその現象が発動することはさらに稀だ。
だから妹たちが都市伝説体験ツアーに行くのを止めはしなかった。

だが、一度神隠しにあった俺は、危険だ。
一度そういったものに遭遇すると魅入られてしまうと幻想郷で教わった。
だから万が一にもあたりの場所だった場合はえらいことになる。だから留守番することにした。
ちなみにちょっと調べてみたがこちら側の博麗神社というわけじゃなさそうだ。もしそうだったらさすがに全力で止めた。



数時間後、俺は隣町の警察署にいた。
妹が行方不明になったらしい。
妹の友人グループに話を聞いたが皆混乱した様子だった。
例の神社を探索中、不思議な、心霊現象のようなそうともいえない現象の直後、こつぜんと姿を消したらしい。

友人グループの中の、妹の親友が特に青ざめた顔をしていた。
その子が、警察には言わなかったことを小声で俺に話してくれた。

妹が消えた直後、女の子の声が聞こえ、その声はなんと俺を名指しにして伝言を頼んできたという。
その伝言とはこういったものだった。

「○○ー。早く戻ってこないと、大切な妹さんが食糧になっちゃうよ?」


俺は警察署から自宅には帰らず例の神社に向かった。
妹を攫ったのはあいつだ。外界に帰った俺を監視でもしていたのか。
結界に綻びがあるのか、場所のせいか都市伝説は本物で、別世界、幻想郷に繋がっているようだ。
こうなってしまった以上はしょうがない。妹の命には代えられない。

俺は幻想郷に、あいつ元に戻ることを決めた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年10月22日 15:02