スレタイSSその8。テーマは第10夜。
長編が書ける人は妬ま……いや羨ましい。


彼女達は満足気に笑いながら俺を小部屋へ閉じ込めた。
「○○は私のなんだからどこにも行っちゃだめだよ」
「お前は今日から橙のものだ」

「○○、ご飯だよ!」
襖が勢いよく開けられ、橙が姿を現す。
その手にはお盆と皿が乗せられている。言葉通り俺の食事だ。
「食べさせてあげるね。はい、あーん」
無理矢理口に匙を突っ込まれ反射的に吐き出しかけるがなんとか飲み込む。
皮肉なことに飯は美味かった。
「美味しい? 良かったぁ。まだまだたくさんあるからね!」
にこにこと笑いながら再び匙が差し出される。
ほらほら、早く。無理矢理それが押し付けられたせいで汁が溢れる。
当然それは俺の服を汚した。
「あー! もうなにやってんの!」
橙がポケットからハンカチを取り出し、素早く拭う。
口では咎めながらもその瞳には歓喜の光が宿っていた。
「○○は一人じゃご飯も食べれないんだね。でも安心して? 私がずっと面倒見てあげるから」
ずっと。それは恐らく俺が死ぬまで続くのだろう。
俺が老いて死ぬその日まで――解放されることはない。
抵抗は無意味だ。外見は幼くとも彼女は妖怪。無力な人間など相手にならない。

「んふふ、○○ー♪」
食事が終われば次は触れ合いの時間。
座ったまま身動きの取れない俺を橙は嬉しそうに抱きしめている。
「はぁ、○○はあったかいなぁ。いつまでもこうしていたいな」
夢中で頬ずりされる傍ら、俺は開けっ放しの出入り口――正確にはそこにいる人物――を見ていた。
いつの間に来たのか、橙の主人である八雲藍が佇んでいたのだ。
恐らくは様子を見に来たのであろう藍は、しばらく俺達を眺め、やがて満足したのか踵を返し去っていった。

だが俺は見逃さなかった。振り返る直前に藍が僅かに唇を動かしていたのを。
声は出さなかったが奴は確かにこう言っていたのだ。

「永遠にここにいろ」

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最終更新:2014年07月08日 15:24