※若干の流血表現注意


朝。


香霖堂で買った電池をいれた香霖堂で買った目覚ましで目を覚ます。
○○はベットからおりるとすぐに寝間着から執事服に着替える。
半年前に初めて袖を通した執事服という存在も今ではだいぶなじんでいる。
着替え終わるとすぐに上司であるメイド長の十六夜咲夜に指示をあおぐ。


「今日はお嬢様がお茶をするから。今日もあなたの参加を希望されてるから参加して」
「わかりました。お嬢様が起きるまではなにを?」
「そうね。図書館までの廊下を掃除している妖精メイドを手伝ってちょうだい」
「わかりました」

今ではこんな感じで普通に指示を受けてはいるが、執事として働きだした当初はこの様な普通の上下関係的な会話ではなかった。
咲夜はもっと命令口調だったし、○○はオドオドしていた。
その様な関係は咲夜だけではなく。紅魔館の住民全員がそうだった。
しかし、今では紅魔館の主であるレミリア・スカーレットに執事程度であるはずの○○は茶を飲む際に相手をするように言われるほどに友好な関係を築いていた。

レミリア曰く、レディたるもの紳士と茶を嗜むもの。紳士とは程遠い上、立場はしたの○○だが、紅魔館唯一の男なので妥協しているとのこと。
ここに来た当初はこんな友好な関係を築けるとは思わなかったなぁと○○は昔を思い出す。


幻想郷に来てしまい、さらに紅魔館に迷い込んでしまった○○。
そこで彼を待ち受けていたのは、吸血鬼の威嚇する様な目、同じ人間であるとは思えないその従者の冷たい目、実験動物を目踏みするかのような魔女の目だった。
○○はどんな雑用もするので命だけは助けてほしいと懇願した。それから○○は執事として○○は紅魔館で……

「ちょっと○○?なにボーっとしているのかしら」
「え?あれ?ああ!すみません」


思考がレミリアの声で中断される。
すでに掃除は終わり、レミリアと紅茶を飲んでいる時だった。
掃除の時にしていた思考の続きを、レミリアとの茶を飲む場で再開してしまった様だ。


「主に茶に誘われておいて考え事とは偉くなったわね○○。ちゃっかり紅茶は飲み干してるし」
「ははは……。すみません。あ、咲夜さんおかわり」

レミリアの茶の相手をしている時は、いつもと違って上司の咲夜に要求できるので意気揚々とおかわりを要求する○○。
咲夜は「はいはい」と言いながらあきれ顔でおかわりを注いでくれる。
思考のせいで無視されたレミリアも怒っているというより拗ねているような顔だ。
ふたりのこんな顔を見ることができるとは当初は思わなかったなと○○は思う。

「さて、○○。今日も外界の面白い話を話しなさい」
「はい、お嬢様。では今日は外界の物語の中に登場する吸血鬼の話でも……」


茶会は今日も主と執事が和気藹々と会話を続けて終了した。

「ちなみに○○、あなたのこの後の予定ってどうなっているの?だたの興味本位なんだけど」
パチュリー様より図書館の本の整理を是非手伝って欲しいと言われています。その後は自由時間ですのでそのまま読書をしようかと」
「そう。じゃあ、早く言ってあげるといいわ」
「はい、それでは失礼します」

○○が部屋から出て廊下に出る。
と、なにかが横から飛んで来て○○にぶつかる。衝撃でぶつかった何者かとゴロゴロと転がってしまった○○。
その正体は○○を発見し、飛んできた抱き着いたフランドール・スカーレットである。

「痛い痛い!!なに?敵襲!?」
「○○!遊ぼう!」
「フランちゃん!?あの、マジで怪我するから飛びついてくるのやめてくれない?」
「えー!美鈴は受けとめてくれるよ?」
「いや、戦闘能力的に俺には無理だから。下手したら怪我するから……あれ?腰がすでに痛い。
てか、お嬢様からも何か言ってやってください!!」
「フランーほどほどにねー」
「注意が投げやり過ぎませんか!?」
「ねー遊ぼうよー」
「あー、ごめんね。この後は図書館で仕事なんだよ」
「えー!!別に小悪魔がいれば問題ないじゃん」
「うーん。でも是非手伝って欲しいってパチュリー様に言われてるからな」
「よし、私が一緒に説得してあげる!行こう!!」
「あ、待って!引きずってるから!擦れる擦れる!!」

○○の悲鳴が遠ざかっていくのをレミリアは紅茶を飲んでいた席に座ったまま聞いていた。

「すっかり紅魔館に馴染んじゃって。フランはあんなになついているし。パチェもわざわざ必要ではない仕事を頼んいる様だし」
「あら、一介の執事を茶会に誘っているお嬢様も人のことを言えないのでは?」
「咲夜はあんまりそういうスタンスがないわよね?普通に厳しく上司しているみたいじゃない」
「どうでしょう。個人的には早く立派な執事になってほしいので厳しくしている面がありますので。
あ、忘れるところでした。お嬢様」
「なにかしら?」
「博麗神社より宴会の連絡が来ています。参加なさりますか?」
「ええ、参加するわ。でも前回の様にはなりたくないわね」
「そうですね……」

酒には強い妖怪たちだが、博麗神社での宴会時の飲酒は年々エスカレートしており、宴会が終わるころには酔いつぶれる者たちが続出していた。
前回、レミリアは完全に酔いつぶれ、自力での帰宅が不可能となった。
レミリアは同行していた咲夜に連れてってもらうよう指示を出したが咲夜自身も大分酔っており、そんな状態で主を抱えて飛べないと拒否した。
レミリアの為ならレミリアの命令に従わないことがある咲夜にはあった。結局酔いがさめるころには太陽が昇っており、日傘を使って帰宅したのだった。

「なんとか対応法を考えないといけないわね」
「今回は私が飲酒を自重いたします」
「いいわよ。宴会の時ぐらいあなたもハメを外しなさい。というかこんな時ぐらいしかあなたハメを外さないじゃない」
「どこかの門番と執事とは違うので」
「まぁ、当日までに考えればいいわ。……下がっていいわよ咲夜」
「はい。失礼いたします、お嬢様」

咲夜が出ていきひとりとなった自室でレミリアは思考する。

○○が紅魔館の住民になって半年、よく馴染んだものだと感心する。
レミリア自身が気まぐれによって、○○の懇願通り彼を生かしておいてよかったと思うほどに。
今では咲夜やフラン同様に○○のことを家族の一員だと思っている。
その中で親友であるパチュリーと実の妹であるフラン・従者の咲夜と美鈴への好意の種類がそれぞれ違うように○○への好意も種類が違う。
ただ、同じ従者・部下である咲夜と美鈴への好意ともまた種類が違うような気がする。
それは○○が外来人だからか?力を持たない人間だからか?それとも、○○が男だから……?
○○に対する好意はなんというか、こう、切ない感情が混ざっている様な気がする。この感情はなんなのだろうか。
最近そのことについてちょいちょい考えるが答えはでていない。

レミリアはそのうち答えの出ない○○に対する感情について考えることをやめて、博麗神社での泥酔対策について考え始めた。





レミリアは紅魔館の廊下にいた。

「あら?」

自分がどうして廊下に、どこに向かうために廊下に出ていたのか思い出せない。
と、ふと目的を思い出す。

「そう、○○に用があったのよ。どこかしら……なんかおかしいわね。誰もいない」

その用の内容が連想できないことも、咲夜にでも頼めばいいのに主である自分が探すという不自然な状況も気にならなかった。
ただ、紅魔館に人の気配がないことは気になった。
廊下にメイド妖精のひとりも見当たらない。


「…お……ま…」
「誰?」

どこからか声が消えた。
レミリアはその声が聞こえた方に向かう。そこは紅魔館のロビーだった。

「…お嬢…様」

そこにいたのは○○だった。
その状態は普通ではなく、全身血だらけで倒れていた。

「○○!?いったい何があったの!?」

レミリアは○○を助け起こす。自身が血で汚れることもいとわず。
しかし、その時にはすでに○○はなにも口にせず、開かれている眼からも光は失われていた。

「○○?そんな…○○…」

レミリアはいやいやと首を振る。

「○○!!!」


そう叫んだレミリア。
気が付くと自身の部屋にいた。自身の部屋のベットの中に。


「……夢?」

思わずため息をつく。
悪夢を見て、叫んで起きてしまうとは、我ながら情けないと思った。
今までこんなことは年齢が100を越える以前に1度あったぐらいだろうか。
ただ、夢の中で○○の目の光が消えていく時に胸に抱いた喪失感はまだ残っていた。それ程にはリアルに感じてしまう夢だった。
今から思い出せば、夢だろうと判断できる材料はあったのだか。夢というものは見ている時にそれと気づけない時には気づけないものなのだ。


と、部屋のドアがノックされた。

「お嬢様、私です」
「咲夜ね。入っていいわよ」
「失礼します。お嬢様、叫び声が聞こえましたが、どうされました?」
「心配をかけてしまったみたいね。何でもないわ……嫌な夢を見ただけよ」
「そうですか……」
「ねぇ、咲夜」
「なんでしょう」
「お願いがあるのだけど……」




その日も○○は、朝7時に起床し執事服に着替える。
そして朝食をとるよりも前に一度咲夜に本日の作業予定を聞く。
いつもと同じように。ただ、作業内容がいつもと違っていた。


「今日からあなたのシフトというか、掃除の担当場所が変更になるわ」
「担当場所変更ですか?どこです?」
「お嬢様の部屋よ」
「わかりました。お嬢様の部屋ですね……って?え?お嬢様の部屋ですか?」
「そうよ」
「いやぁ、咲夜さん。新人の俺がお嬢様の部屋はマズいんじゃ……」
「あら?なにか文句でもあるのかしら?」
「いいえ!ありません!!」


そういうわけで○○はレミリアの部屋の掃除をしていた。
部屋の中の、掃除の対象である装飾品・壺などは普段掃除している廊下にある物とは明らかに格の違うものだった。
紅魔館の主はこの部屋の主であるレミリア・スカーレットであることを再認識させられる。
今ではそれなりの給料をもらっている○○だが現在ふいている壺がその給料何か月分に、いや下手したら何年分に相当するかと思うと冷汗が止まらなかった。


「どうしたの?○○、だいぶ緊張しているじゃない」
「いや、それはするでしょう……」

さらに、咲夜に指定された時間に掃除しに行ったら普通にレミリアがいた。
改めて後ほど掃除しに行こうかと帰ろうとしたら掃除してから帰れと言われた。
部屋の主、というか紅魔館の主が、目の前で掃除している自分を見ているというのも緊張する原因のひとつとなっていた。

「ここに来たばかりじゃあるまいし、そんなに緊張しなくてもいいじゃない」
「お嬢様に見られながら高価そうなものをふくとなるとやっぱり緊張しますよ。
それにしても急に担当変更なんて。咲夜さん何かあったんですかね?お嬢様、何か聞いてませんか?」
「いえ……知らないわ」

本当は咲夜に自分の部屋の掃除の担当を○○にするように言ったのはレミリアであった。
今日見た悪夢のせいかもう少し、○○と一緒にいる時間、話す機会を増やしたいなと内心思ってのことである。
そしてこの機会に前々から気になっていたことを聞いてみることにした。

「……ねぇ、○○」
「はい、なんでしょう」

改めてレミリアに声をかけられ○○は作業を止めてレミリアに向き直る。

「正直に答えてほしいのだけど……ここに来た当初、あなたは私達に恐怖し、命乞いをしたわよね。
今でもあなたは、私達のことが怖いのかしら?」
「……ええ、怖いですよ。」

○○は少し黙ったのち、静かにレミリアの問いに答えた。
答えは肯定。レミリアは自身の抱いていたある懸念があたってしまったのだと一瞬思った。

「だって咲夜さん、少しサボってただけですぐナイフ投げてくるんですよ。正直怖すぎます」
「それ、恐怖のベクトルが私の質問のそれと違うと思うんだけど」

しかし、肯定のはずのその答えはレミリアの思っていたものと違っていた。

「待って、○○。そんな厳しい上司としてではなく、妖怪として、異能力者としての私達についての感想を聞いているのだけれど」
「そういう意味ですか?ぶっちゃけお嬢様とか仲良くなってみたら、結構歳相応の幼女ですからねー」
「ごめん、やっぱり吸血鬼の主に対して、もうちょい畏怖の感情持ってくれる?」
「そういわれましても。外部の人間じゃなければ怖い目とかしないってわかりましたからね。
家族の一員となった今ではそういった恐怖はありませんね。まぁ、咲夜さんのさらに上司ではあるっていう認識はあるんで今緊張したりしてますけど。
いやでも、なんだかんだで長生きしているというか時折大人の女性としての魅力というか、そう。カリスマ的なのもしっかり感じますよ」
「なら、まぁいいけど……」

レミリアとしては○○の言った『家族の一員』という言葉が聞けただけで不安に思っていたことが解消された。
正直、○○が未だ恐怖が原動力でここで働いているのではないかという心配があったのだが杞憂だったようだ。

「てか、本当。咲夜さんすぐナイフ投げるのやめてほしいですよねー」

レミリアがホッとしている間にいつの間にか○○は愚痴り始めていた。

「顔も肌も綺麗なんですからあのキツイ性格をなんとかしないと勿体ないと思うんですよ。
俺も人のこと言えませんが、咲夜さんは人間ですから、美鈴と違って賞味期限もあっという間に過ぎちゃいますからね。そのうち小皺とか出てきますよ。
いや、十分若いのはわかっていますよ。でも美鈴や小悪魔と比べるとやっぱりねぇ……。
早くあの性格を改善しないと嫁の貰い手がなくなりますよ」
「ねぇ、○○。後ろ」
「え?後ろですか?……あ」

いつの間にか○○の背後にはにっこりとしながらも、あきらかな怒気のオーラを出している咲夜がいた。

「申し訳ありませんお嬢様。ノックもせず時を止めて部屋に入ってしまいまして」
「気にしなくていいわ咲夜。女性に問題発言をするような部下の教育には理解を示すわ」
「あ…え、あ…違っ…咲夜さん今のは……」
「安心しなさい。ナイフは使わないから」

メキ、ゴキと咲夜の手がなる。



10分後。

「そういえば○○」
「…はい……なんでしょう」

床に撃沈する○○にレミリアが声をかける。

「今度私と咲夜は霊夢のとこの宴会に行くのだけど、たぶんうまく飛べないレベルまで泥酔してしまうと思うのよ。
そこで、あなたに向かいに来てほしいの」
「……構いませんが、どうせ向かいに来るなら飛べる美鈴の方がいいのでは?
お嬢様を運ぶってことですよね、徒歩だと時間かかりますよ?」
「……美鈴は門番じゃない。門を離れさせたら門番の意味がないでしょう」
「はぁ……わかりました」

正直、日ごろからレミリア自身が美鈴の昼寝による門番の無意味さを愚痴っているので美鈴に頼まない理由に関しては納得できない○○であったが、別段拒む理由はない。
執事である以上、理不尽で無理な仕事以外は例え面倒な仕事だろうと引き受けようと思う○○。レミリアや咲夜が理不尽であったり無理な仕事を指示してきたことは皆無だが。

「それじゃあ、よろしく頼むわ」
「はい。お嬢様」
「それと、そろそろ掃除を再開しなさい」
「……はい。お嬢様」

ヨロヨロと立ち上がった○○は掃除を再開するのだった。









博麗神社での宴会当日。

博麗霊夢の懸念した通り、今までにも増して妖怪の許容量を越えた量を飲んだ妖怪たちは泥酔しまくっていた。
なんとか帰って行った者たちもいるが、かなりの数が泥酔状態で横になっていた。


「もう宴会は終わったってのに。片づけ手伝わないんなら帰りなさいよ」

そうは言うものの泥酔した者たちは動かない。
霊夢はため息をつく。と、ここで新たに誰かが鳥居をくぐって神社に入ってくるのを見かけた。
とりあえず霊夢は近づいて声をかける。

「ねぇ、あなた。今宴会後で妖怪どもが横になってるわよ。参拝ならまた今度来た方がいいわ」
「これは親切にどうも。ですがその横になっている妖怪に用がありまして」

ここで霊夢はその男が人里の人間がしているような服装でなく、西洋風なものであることに気付く。
妖怪などではないようだが、どこかの勢力の一員なのだろうかと分析する。

「なんだ。参拝客じゃないみたいね……誰かを向かいに来たのかしら?」
「はい。紅魔館の新米執事の○○と申します。博麗霊夢さんですよね?
レミリアお嬢様がいつもお世話になっております。それでお嬢様は?」
「あの辺で寝てるわ」

霊夢が指さした先に咲夜と一緒に眠りっているレミリアがいた。
○○はふたりの横でかがみふたりに声をかける。

「お嬢様、お迎えに上がりました。咲夜さん、立てますか?」
「あー○○ー!私のことも抱えなさい!」
「いや、さすがにふたりは無理ですよ」
「なによー私が重いっていうの!?」
「そんなことは言っていないでしょう!?」

計画では、咲夜が自力でフラフラとしながらも移動し、シラフの○○がレミリアを連れていく手はずだったのだが、咲夜も現在は動けない状態だった。
なんとか立とうとしてひっくり返ったりしている。
ただ、まったく反応を示さないレミリアよりは移動可能までの時間は短そうだ。
○○は霊夢の元に戻り声をかける。

「あの、すいません。咲夜さんが歩けるというか、飛べるまで?お邪魔させてもらってもよろしいでしょうか?」
「どうせ他の連中も寝てるし別にいいわよ」
「ありがとうございます。
……あと、このままお嬢様を屋外に寝かせておくのは忍びないので、神社の建物の中で横にさせてもらってもかまいませんか?できれば咲夜さんも」
「自分で運ぶならね」
「ありがとうございます」

一旦霊夢と○○は別れるがふたりを運び終えるとすぐに○○はまた霊夢に話しかけた。
霊夢は食器を片づける為に重ねているところだった。

「あの、何かお手伝いできることはありますか?」
「あら、手伝ってくれるの?」
「はい」

○○の手伝いもあって霊夢は食器や酒などをいつもより早く片付けることができた。

「あとはテーブルですね」
「ああ、それは後で萃香にやらせるからいいわよ。……こっち来て。手伝ってくれたお礼にお茶ぐらい出すわ」

確認してみると咲夜の回復にはまだもう少し時間がかかりそうなのでお言葉に甘えることにした。

「あ、いただきます」

○○が縁側に座ってお茶を飲んでいると隣で一緒にお茶を飲んでいた霊夢が話しかけてきた。

「あなたって紅魔館で働いているのよね。怖くないの?」
「働き出したきっかけが命乞いだったので最初は怖かったですよ。
でも今は……怖いって厳しい上司としてって意味じゃないですよね?」
「そりゃそうでしょ」

先日同じ質問を受けた際にレミリアに突っ込まれたので事前に確認してみる。

「今はもう怖くないですよ。敵意さえ向けられなければ誰でもそうだと思いますが……」
「そうかしら。あなた外来人?」
「そうです。よくわかりましたね」
「わかるわよ。里の連中はこっちが敵意を見せなくても余所余所しいもの。
慧音あたりには普通に話したりもするんだろうけど、私とかには必要最低限な会話しかしないわ」
「でも霊夢さんって普通に人間ですよね?」
「普通に人間だけど、普通の人間じゃないのよ。
まぁ、そういう風に疑問に思うようだからレミリアや咲夜とうまくやれてるのかもね。……羨ましいわ」
「羨ましいですか?」
「男…じゃなかった、一般人とこうして話す機会なんてあんまりないのよね。話すのはこういう連中ばかりだし。
だからあんたみたいのがいるレミリアが羨ましいなって」
「そういうもんですかね……あ、怖いといえば……」
「なに?どうかした?」
「同じような質問をされた時、お嬢様にも言わなかったここだけの話なんですが、フランちゃんのことは正直ちょっと怖いですね」
フランドールが?」
「ええ。いつも飛びついてきて痛いからってのもありますが、フランちゃんは若干情緒不安定と言いますか癇癪を起す時がありまして。
例えばお嬢様と喧嘩した時ですとか。その時の暴れようはちょっと怖いですねー。
あと、仲良くなってもなんていうか、最初に恐怖した狂気的なものが特にかわっていないというのが大きいですかねー」
「とても怖がっているものを語る口調じゃないわね。余裕じゃない」
「まぁ、強いて言うならってぐらいの話ですから……あ、咲夜さん」

気が付くとフラフラながらも咲夜がこちらに歩いてきていた。

「悪いわね、○○。もう歩けるわ」
「じゃあ、帰りますか。霊夢さん、お茶ご馳走様でした」
「あっ……」

霊夢は何か言おうとしたが何を言うか定まらないうちに○○は離れていった。


「○○…」
「お迎えに上がりました、お嬢様」

○○のことを認知するほどには回復していたレミリアに再び迎えに来たことを告げる。

「じゃあ、紅魔館までお願いするわ」
「はい……そのことなんですがお嬢様」
「なによ?」
「はい。お嬢様を運ぶ際NGな方法ってあります?てか運ばれる方法の希望あります?」
「方法?」
「はい。おんぶとか抱っことかの紅魔館に運ぶまでの方法です」
「そ、そうね……横になりたいから……その、俗にいうお姫様抱っこの形を取ってもらってもいいかしら?」
「はい、わかりました」
「よし、いくわよ○○」
「咲夜さん、もう少し休んだ方がいいんじゃないですか?」
「大丈夫よ!ほら、行くわよ」


フラフラと飛んでいく咲夜とレミリアをお姫様抱っこした○○が神社の階段を降り行く姿を、霊夢はその姿が見えなくなるまで見続けていた。



<続く>

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最終更新:2024年07月07日 21:22