アットウィキロゴ
○月○日
今日から家計簿を付けるついでに、日記も付ける事にした。
あいつに勧められて書いてみたが、何を書けばいいんだ?
明日はあいつに頼んだ品を買い取りに行く予定になっているから、
その時についでで聞いてみるか。

○月×日
今日、久々にあいつの家に遊びに行った。
ここのところ仕事の用事でしかここに来ていないから、
たまには仕事の事を忘れて、一人の友人としてあいつと遊んでやろう。
家に入るまではそう思っていた。
あいつの家にどこかで会ったような気がする、お面をつけた幼女がいた。
状況がよく読めない俺に、あいつは幼女について説明してくれた。
なんでもあいつの家の前で倒れているのをあいつが見つけた、との事だ。
てっきりあいつが誘拐したのかと思った。あいつロリコンだから。
幼女は倒れていた理由を話さないところを見ると、どうも訳ありのようだ。
だから幼女の事はあいつに任せた。
面倒ごとはごめんだ。あいつも幼女も同意してくれたしな。
今日はこんなもんにして寝るか。明日も商売しないといけないからな。


×月△日
今日は印象的な客が三人も来た。
一人目は「わかさぎ姫」という名前の、霧の湖に住んでいる人魚だ。
人魚がわざわざ陸に上がって、こんな小さな万屋の何の用だと思っていたら、
この店の商品について説明させられた。
使い方が分からないものは置いていないはずなんだがな。
その後、何か買うのかと思ったら、何も買わずにお帰りになった。
ただひやかしに来たのか、あの人魚。
二人目は「今泉影狼」という名前の女性だ。
特製の爪きりが欲しいを作って欲しいと言っていたな。
なんでも、普通の爪きりだとすぐに切れ味が落ちて、使い物にならなくなるらしい。
一体どんな使い方したら、そんな風になるんだ?
まあ、客にそんな事を聞くのは野暮だろうし、あいつに頼めばなんでも作ってくれるだろう。
三人目は「赤蛮奇」という女で。
くそ!あの女の事を思い出すといらいらする!
けど、こういう事も一応は書いておこう。会話のネタになるかもしれん。
あの女は突然、おれの店にたいしていちゃもんをつけてきた。
この店の商品の配置がどうとか、品揃えがどうとか言っていたっけ。
そんなにこの店が気に入らないなら、霧雨店に行けよ!
ああくそ!霧雨店め!潰れろ!
……はあ、明日は店を休もうかな。
疲れが溜まっているのか、赤蛮奇の頭が一瞬浮いているように見えたしまった。


×月□日
今日は縁日なので、命蓮寺の近くで露店を出した。
俺は昔から縁日に神社や寺で露店を出すのが好きだ。
なぜなら、露店で売れ残りの商品を格安で売る事ができるし、店の名前も売る事ができる。一石二鳥というやつだ。
といっても、たくさんの人と触れ合い、情報の共有ができるっていうのが一番の理由だけどな。
いつもなら楽しく客と商売するはずなんだが、……まさかあの女が向かいで露店を出しているとは思わなかった。
河城にとり。俺が今まで出会った人妖の中で、一番嫌いな奴だ。
にとりとは顔を合わせる度に、お互いに罵詈雑言を浴びせかけあう関係、つまりは犬猿の仲だ。
なぜそんな関係になってしまったのか、俺にも分からん。
初めて顔を合わせた時から喧嘩しているので、生前からの因縁かなにかと思う。
もしもその時、お互いに仕事が無かったら、小一時間ほど喧嘩していたと思う。
だがその時はお互いに仕事中だったので、俺とにとりは相手にアイコンタクトを送る程度で済ませた。
ちなみに俺は「チビ河童」と送った。にとりは「失せろ××」と送ってきた。
××ってお前、人が一番気にしてる事を言いやがって!
……あれ、なんでにとりは俺が××だって知っているだ?
そういえば、またあの三人が来た。
わかさぎ姫、赤蛮奇、今泉影狼の三人だ。
わかさぎ姫は、俺が「あの人魚をてんぷらにして食べたらどんな味がするだろう?」とか考えている時に現れたので、かなり動揺した。
わかさぎ姫は俺にどんな商品がおすすめか聞いた後、数十分間何を買うか迷っていた。
考え抜いた末に、木製の人形を買って帰った。
よく考えたら、わかさぎ姫は陸に上がると動きが遅くなるから、別の妖怪に捕食されるリスクが高くなるはずだよな。
なせそんなリスクを背負ってまで陸に上がるのだろうか?
……まあ俺には関係のない事だし、気にしないでおこう。
赤蛮奇も来た。俺は赤蛮奇の事があまり好きではない。
というか、クレーマーが好きな奴なんているのか?
そして今日も赤蛮奇は、俺の店の品揃えが少ないだのいちゃもんをつけてきた。
勘弁してほしい。そんなにうちの店が嫌いなら霧雨店に行けばいいのに。
もしかしたら赤蛮奇とも、にとりと同様に生前からの因縁があるのかもしれない。
……ふと思い出したんだが、外来人が赤蛮奇の俺の店に対するクレームを聞いて、「つんでれ乙」とか呟いていたが、つんでれってどういう意味だ?
あと、今泉影狼も来た。
今度は少し大きめのドレスを作ってほしいとの事だ。
今の時期から冬対策か?それにしては早すぎるきがするが。
まあいいか。客の事に首を突っ込まない、これが俺をポリシーだ。
寸法に関しては本人が自分で測ってくれるらしい。
これはとても助かる。
俺には女の知り合いがにとりぐらいしかいないので、店で測りたいなんて言われたらとても困る。

今日は一段と疲れた。
にとりが向かいで露店をやっていたのもあるが、あの三人の相手をするのは、特に赤蛮奇の相手をするのは疲れる。
こういう時、美人な彼女がいてくれたら、疲れなんてすぐに吹っ飛ぶのに。


□月×日

なぜかあの三人がうちの常連客になってしまった。
どうして彼女達はこんな店に来るんだ?
今泉影狼はまだ分かる。
だがわかさぎ姫はどう考えても、行きと帰りで捕食されるリスクが高いし、
赤蛮奇は店に数時間居座った後で、クレームを言って帰るだけで、この店に来る理由が分からん。
別に常連客が増える分には文句は何だが、わかさぎ姫に関しては死んでもらったら目覚めが悪い。
赤蛮奇に関してはもういい加減、霧雨店に行ってほしい。

……そういえば、最近俺の周りで、おかしな事がよく起きているだよな。
寝ようと思って寝室に行くと、どういう訳か枕が妙に生暖かいだよな。
窓の外から監視されるような視線をかんじるんだよな。
まあ、もしかしたら俺が自意識過剰なだけかもしれないがな。
あと、家の近くで狼の遠吠えが聞こえるんだよな。
ここらへんに狼が住み着いているなんて話聞いたことがないが、夜はできるだけ外出は控えることにした。
だけど、どうして突然このあたりに狼なんかが来たんだろう?
ああそれと時々、朝家の中がびしょびしょに濡れている事があるんだよな。
夜は濡れなかったはずだから、正直不気味だし、家中を拭かないといけないからめんどくさい。
どうして俺のまわりでこんな事が起こるんだか、面倒事は嫌なんだけどな。

□月△日

今日、俺にはストーカーがついている事が分かった。
分かったのは、朝と昼と夜の事だ。
朝、俺が目を覚ますと、家の中がびしょびしょに濡れていた。
濡れていた事に関してはもう慣れてしまった。問題は次だ。
机の上に弁当と手紙が置いてあった。昨夜は机の上に何も置いてなかったはずなのだが。
俺は手紙を恐る恐る読んだ。内容はこうだ。
「おはようございます。
今日も一日頑張りましょうね。
私も影ながら応援しています。
        あなたの恋人より」
念のために書いておこう。
俺には付き合っている女性も、付き合った女性もいない。じゃあこの女性は誰だ?
俺の知らない人、つまりストーカーだ。
どうして俺と付き合っていると思い込んでいるのか、どうやって俺の家に入りこんだのか、何も分からない。
だが、ひとつだけ分かった事がある。弁当がおいしい。
魚介類がふんだんに使われた弁当だった。
昼、また弁当と手紙が置いてあった。
朝のストーカーと同一人物かと思ったが、手紙の書体が違ったので、どうやら別人のようだ。
手紙にはこう書かれていた。
「お疲れ様。
お弁当を作ったから食べなさい。
別にあなたが空腹だとつらいだろうから作ったわけじゃないわよ!
仕事中に倒れられたら面倒だから作っただけだから!
ちゃんとたべなさいよ?
                               あなたの嫁より」
心配してくれたのは嬉しい。
そこは素直に感謝したいと思う。しかしだ。
なぜ俺はこの女性と結婚している事になっているんだ?
前途の通り、俺は女性と付き合った事すらない。
それなのに、なぜ結婚した事になっている。
ストーカーの妄想ってすごいな。
あとストーカーの料理テクニックってすごいな。
野菜と肉がバランスよく使われた弁当だったんだが、今まで食べてきた料理の中で一番おいしかった。
夜、やっぱり弁当と手紙が置いてあった。
俺の家はそんなに入りやすいのか?それともストーカー達の鍵開けがうますぎるのか?
手紙の差出人は朝のストーカーでも、昼のストーカーでもなかった。手紙の書体が違う。あと茶色の長い髪が落ちていた。
手紙の内容は次の通りだ。
「お疲れ様です。
今日も一日お勤めご苦労様。
明日も朝早く仕事でしょうから、明日に備えて疲れをとってください。
                                あなたの妻より
P.S 妊娠しました。
   今度はちゃんと認知してくださいね?」
……怖い!このストーカー、他の二人のストーカーと比べて書いてある内容がなんか怖い!
俺まだ未経験のはずなんだけど。なのになんで二回以上経験してるみたいな事が書かれているの!
落ち着け、落ち着け俺。
とりあえず、この手紙は見なかった事にしよう。もはやストーカーの妄想という域を超えている。
まあ、肉がふんだんに使われた弁当はおいしかったけどさ。
なんで俺なんかにストーカーが三人もついているだろう。
わかさぎ姫と赤蛮奇と今泉影狼が毎日のように店に来て、何も買わずに帰るだけでストレス溜まっているのに、
三人のストーカーにつけられたら、俺ストレスで死んじゃう。本当に。
はあ、もういい寝よう。全てを忘れて寝よう。
これが全部夢だったらいいのにな

□月□日

もうストーカーにも慣れてしまった。
人間、諦めと慣れるという事が一番大切なんだと、この頃理解した。
いや、むしろ毎日弁当を置いていってくれるから、食費が浮いて助かっているぐらいだ。
手紙の内容は日を増すごとに怖い内容になっていっているが、ストーカーの妄想で片付けてしまえばいいんだ。
しかし、ストーカーの正体は誰なんだ?
俺は誰かとも付き合っていないから、付き合ってくれと言われれば、断る理由はない。
はじめは控えめな女性だからかと思ったが、家に不法侵入してくるぐらいだから、肝が据わっている女性だろう。
いやよく考えたら、ストーカーは本人の前に現れてないからストーカーなのか。
だけど、悪い人じゃなかったら(手紙の内容からしてそれはないが)付き合ってもいいと思うんだが。

コンコン コンコン
「ん?こんな時間に誰だろう?」
コンコンコンコン コンコンコンコン
「はーい、今出ますから。
あれ?わかさぎさんに赤さん、それに今泉さんまで。
こんな夜遅くにどうしたんですか?」
「「「あなたに呼ばれたのでやって来ました。
  今晩から正式にお付き合いできるようでうれしいです。」」」
「……えっと、どういう事でしょうか?」

△月○日の文々。新聞にこんな記事が書かれていた。
 万屋の主人が行方不明に!三人のストーカーに誘拐の疑いが!

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年11月02日 01:11