今日はあなたの結婚式の日だ。
絶世の美女とは言えないが、貴方が妻と迎えようとする相手は
心をさらけ出せるほどの信頼のおける伴侶であり、つがいとなるには十分だった。
――ところでさ。
さとり妖怪って心を食らう妖怪だって知ってる?
慎ましくも普段よりも煌びやかな和装を着こなすあなたとその相手は、少し息苦しそうになっている。
慣れない雰囲気と、緊張が相まったせいか。あなたはいつの間にかやるようになった『おまじない』を試みる。
(妖精さん、妖精さん)
そう誰にも聞こえないような声で呟くだけ。
――ふっ、と誰かに抱きしめられるような、そんな心地よさが。
貴方を一瞬取り巻いたようだった。
――ふふ。私は何時だってあなたの傍に……ねっ?
婚礼を終え、誓いを交わす。そしてあなた達は晴れて夫と妻として認められ
ました。
ました。
ましたましたましたまシタマシタマシタ。
あなたの傍らには緑髪の髪をした、幼齢の美少女が居ます。
あなたと周りの人達はは知らぬうち 無意識と潜在意識を弄られており隣で人形のように横たわる女性にも
新婦が入れ替わったことにも気づきません。
ああ、なんということでしょうか。
こいしというさとり妖怪の少女はあなたのとなりで屈託のない残酷な笑顔で幸せそうに笑うだけです。
あなたの、心という心を貪って。
……えっ、おまじないをすりこまれなければよかったのかって?
いえいえ、それは違いますよ。
私は博麗神社から盗み出した札を彼女に張り、魔法使いの家にあった危なそうな爆弾のスイッチを入れると
あなたの メ ヲ ツ ブ シ そこからあなたを連れ、テレポートして逃げました。
愛の力ですよ、はい。
やる気になれば何だって出来るんですよ、妖精さんだって、ね?
痛みに絶叫を上げるあなた、無意識を弄られたあなたに私は優しく優しく声を掛けてあげます。
刷り込まれた、そして思い人が誰だったのかすら分からなくなった、混濁した思考のあなたに。
大妖精さんが、優しく優しく おまじない を、かけてあげるのです。
……あなたから痛みは消えてゆく。そう、もう大丈夫なんですよ。
例え目が見えなくても、あなたが自然に還ったとしても。
「妖精さんは、何時だってあなたの傍に……うふふふふふふふふふふふふふ」
……あなたもやってみたらどうかしら?
メリーさん、メリーさん。
ゆかりさん、ゆかりさん……とか、ね
最終更新:2014年11月02日 01:39