「○○! 私と結婚しなさい!」
「無理です」

幻想卿のどこかにある(と思われる)八雲の屋敷
一匹の隙間妖怪と一匹の犬妖怪のそんなやり取りが響く

「なぁに? 私じゃあ不満だと言うのかしら?」
「逆ですよ。 式の式と主の主じゃ釣り合う訳がないですよ」

冗談なのか本気なのか分からない会話が続く

「大丈夫よ。 貴方は真面目に修行してるから
 藍の式を剥がして私の式をつければ八雲を名乗れるくらいにはなれるわよ」
「何がどう大丈夫なんですか。 むしろそうなったらやっと藍様に並べる訳ですから
 オレは藍様に告白しますね」
「○○、呼んだか?」
「ぶふぅっ!?」
「あら、おかえり。 藍」
「只今帰りました」

絶妙なタイミングでの主の登場にお茶を吹き出し咽こんでいる式の式、もとい○○
そんな犬を尻目に挨拶を交わす隙間と、たった今登場した狐
もとい、隙間妖怪の式神であり○○の主人である八雲藍


「聞いてよ藍。 ○○ったら私の命令を聞けないって言うのよ」
「はい? あぁ、外の世界には家臣の家臣は家臣ならずという言葉があるそうですよ」
「あら? 家臣には違いないでしょう?」
「ゲホッ……、はぁ。 オレの主人は藍様だけですってば」

ようやく復活した犬は少しだけ疲れた様子で主の主に目をくれる

「それじゃあ、藍の命令なら聞くわけね?」
「はぁ……」

自らの式に意味深な目線を向ける主と自分の式を尻目に
藍はちゃっかり先ほどまで式が使っていた湯呑みで茶を啜りながら芋羊羹に手を伸ばしていた

「あぁっ! 藍様! それオレの羊羹!」
「あぁ済まない。 美味そうだったのでつい、な。 また腕を上げたな、○○」
「そりゃあ、藍仕込みですから~。 って誤魔化されませんよ!」
「ちっ、ダメか」
「ゴホン! 藍?」
「はい、何でしょう?」

2人の世界に入りかけた式達を現実に引き戻した隙間妖怪は自らの式に命令を下す

「○○の式を剥がしなさい」
「……承知しました」
「……え?」



数日後、新しい式との結婚を発表する隙間妖怪と
それに付き従い淡々と祝福する狐と
隙間妖怪の式兼夫になった犬と
最近主と主の主と兄貴分の様子がおかしいと語る黒猫の姿が見られたとか

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最終更新:2015年02月03日 12:00