スレタイssその11。テーマは第7夜。


「ずっとお慕いしておりました」
頬を染めながら、真っ直ぐにこちらを見据えて彼女は告げた。
「私と付き合ってください」
こんな美人に好かれるなんて、僕はきっと幸せ者なんだろう。
だけど、僕はこの告白を受けるわけにはいかない。何故なら
「僕は生者で、貴女は死者だ。付き合うことはできない」
その代わりに1つだけ約束しよう。

「僕がいつか死んだその時は、貴女の元へ参ります」


それから時が過ぎたある日。
その日は、ある男の葬儀が執り行われていた。
家中に男の友人や知人が集まり、男の死を悼んでいた。
誰もが男の死を悲しんでいた。
男の体に傷跡は一切なく、一見すると眠っているだけのように見える。
だが男が死んでいるのは紛れもない事実で二度と目覚めることはない。

まるで他人事のように葬儀を眺めていると、不意に彼女の気配を感じた。
「あらあら、随分とお友達がいたのね」
いつの間に来ていたのか、幽々子さんが僕の隣に姿を現していた。
「まぁそれなりには。それで、どうしてここに?」
そう訊くと幽々子さんは扇子を広げ、優雅な仕草で口元を覆い隠した。
「そんなの決まってるじゃない」
クスクスと笑いながら(実に様になっている)彼女は答えた。
「迎えに来たわよ、○○」
ああ、やっぱりそうだったんだな。
男が――僕が死んだのは、彼女が、僕を。
「死んだら私と一緒になってくれるのよね? だったら迷うことなんて何もないわ」
そのまま身を寄せて来た幽々子さんに腕を絡まれ手を握られる。
冷たい手だ。しかし不快ではない。
「私はあなたが好き。あなたは死んだから私のものよ」
これからはずっと一緒よ。そう付け足すと彼女は安心したように目を閉じ微笑みを浮かべた。
あの時僕は確かに言った。死後の永遠を共に過ごすと。
約束は守らなければならない。もう僕は生者ではないのだから。
幽々子さんの耳元にあることを囁く。
すると幽々子さんは絡めていた腕を解き、ますます嬉しそうな顔をした。
躊躇うことなく抱きしめると、同じように抱きしめ返された。

蝶が、人ならざる者と化した僕を歓迎するかのように舞い踊っていた。

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最終更新:2015年04月21日 20:21