例えばこんなヤンデレ
アリス・マーガトロイド風雲編

「どうして?」

と、アリスは問うた。
時は子の刻。場所はアリス宅のベッドの上。独り言ではない。背を向けて寝た振りをしている男に向けてであった。

彼女と男……○○との関係は表向き客とそれを遇する家人というものだが、アリスとしてはそれをもどかしく思うほどの情が既に育まれていた。
出会いはなんということもない。これまで幾人もそういった外来人がいたように、また彼も森に迷い混んで保護された者の一人でしかなかった。
だが、彼の場合義理堅いのか危機感が薄いのか、翌日には菓子折りもって礼に来て再び迷い混むという塩梅で、それをアリスは「馬鹿なのかしら」と率直に思いそのまま口にした。
それから付き合いが始まった。
○○は話してみるとそう馬鹿な男でもなかった……というか、面白い男だったし、アリスが気に入ったのは魔法の森に二度迷い混むというその大胆さに比べて、人間関係の距離感の取り方が非常に慎重であることだった。
いいよ、というまで決して踏み込んで来ない。
彼女の知り合いを引き合いに出すなら魔理沙と正反対といっていい。
いつしか彼は自然とそこにいて、居なければ空間に穴が空く、そんな対象へとシフトしていった。

初めて○○が泊まった日、アリスは魔法の研究を一晩中続けていた。○○は急拵えのベッドで一晩安眠を得た。
2回目に来たときはアリスが森のそとまで見送った。さよなら、といって。
それから過ぎて、六度目のときには上海人形がアリスのもとへと案内した。
そして今宵が十八度目。アリスがいらっしゃいと笑顔でドアノブを開け、自ら台所にたち、昨晩用意した材料を手ずから調理して振る舞う……そういう関係に発展していた。
アリスを知る友人、後に語る。
「最近のアリスはさあ、なーんかおかしいんだよなぁ。宴会でもふいに俯いたかと思うとさ、徐々ににやけだしてさ、正直ちょっと不気味だぜ」
恋の魔法使い、この頃のアリスをのちにそう語る。

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最終更新:2015年04月21日 20:52