私の国の敗北が確定した、あの時、我らの豊生い茂る森の木の上から敵である、神奈子の軍を眺めていた。
また次の木へと、次の木へと飛び移ろうとしていた。その時。
我が国を守らんとする○○を見つけた。身を隠し敵を待ち伏せているのだろう。
『まぁ立派になったものだな。幼き頃は私にあんなに意気地なしと思わせたのに』
そう思いながら彼を隠す朽木の上に飛び乗ると当然だろう、彼は一瞬身を震わしこちらを見た。
しかし、彼はすぐに悟ったようだ。そして、口を開き……
「あぁ、我らの神よ。申し訳ありません」
私は黙って謝罪を続ける○○を見た。
そして続けて言った。
私の身は祖国の路となれませんでした。しかし、私の魂は貴方様の路となることができます」
そういうと彼は先のなくなった左腕を……
私に差し出した。
私の視線が彼の身を捉えると、手足は裂け、額からは血を流していた。
何を言うかと思うと彼は、
「あぁ、死に際になって愛しき人、神を見つけることができるとは……」
そう、つぶやいて。
私の体を素通りしていった矢に射られてしまった。
その瞬間、私は気が遠くなりながらも○○の遺骸を眺めていた。
そして、その時から私はまるで首を絞めるような苦しさを、愛しさを感じながら生きてきた。
そう、まるで真珠のような爪を咲かせている○○の腕と共に。

今、あの時の場所には大きな道が通っている。
『何の因果だろうか。あれは○○の生まれ変わり?』
走りくる彼を見た。そしてその後、
『そうに違いない』
そう確信すると私は現世から車ごと○○を連れ去る。
そして、私は驚いている○○を車から降ろす。
「あの時に私に掛けていった呪詛を解いてもらうよ」とつぶやきながら彼を抱きしめていた。
○○はいつの間にか気絶していたようだ。
私は○○に細工をしながら、嬉しく思っていた。
『あぁ、これであの時守れなかった○○に会えるのね』と。
彼が帰ってきた瞬間、
私はもう一度これまで感じていた愛しさとともに、
私の首を絞め続けてきた彼の言葉の様に、
彼を抱きしめていた。

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最終更新:2015年06月02日 20:28