「……はぁ、はぁ……」
どのくらい走ったであろうか
とっくに足は限界を超え、心身の疲労もピークに達そうとしていた
それでも俺は走るのをやめない
ふと立ち止まり、息を整える
やはり日頃の運動不足の所為か、それとも必死の逃避の所為なのか、汗がやまない
「どうしてこうなった……は禁句だよな……」
……確か、この先には小屋があった筈だ
そこでなんとか朝までやり過ごそう
俺は再び走り出した
……あった、この小屋だ
幸い中には誰も居ないみたいだ
ギシギシと鳴る扉を開けて俺は中を見渡す
所々に蜘蛛の巣が張ってある。大分前に空き家になったのだろう
これぐらい汚ければ虫や鼠なんかが……
いや待て、『鼠』、ということはーーーー
「ようやく見つけたよ、oo」
ーーその声は……!?
「まったく、鼠の大将である私にここまで探させるなんて……とんだ旦那様だなぁ、君は」
俺はお前の夫になったつもりはないぞ、ナズーリン
「はっはっはっ!!冗談はよしてくれよ、私達はちゃんと式も挙げた。寺のみんなだって認めてくれている夫婦じゃないか」
少なくとも俺はお前を女としては見ていないぞ
「またまた、君は本当に冗談が好きだなぁ。……あの夜、君が激しく私を求めてくれていたのにか?」
……!?、どういうことだ?
「……まぁいいさ、忘れてしまったなら、また見つければいいさ、また作ればいい、また見つければいい」
お、おいナズーリン!なにを……
「何ってナニさ。大丈夫、私に見つけられないものはない。例え君が忘れてしまったものでも、必ずミツケテアゲルカラネーーーー」
最終更新:2015年06月11日 23:00