「この屋敷から出ること。それがあなたが助かる唯一の道です」
OOの目の前に居る少女、古明地さとりは澱んだ目でOOを見つめながら言った
「一体、俺に何の恨みがあるのか知らないが、ともかくこれを外してもらおうか」
「あら、気に入ってもらえないかしら。せっかく私が選んだのに」
「こんな風に使われりゃ、誰だって嫌になるさ」
「仕方ないわね。愛しいあなたの頼みですもの」
さとりの目つきは明らかにおかしいのはOOにでさえ分かっていた。焦点の合っていない黒目。その先には一体何を見ているのかは分からず、さらには目元にうっすら、しかしよく見れば尋常では無いほどの黒さをもった隈ができていた。
さとりの目に困惑しながらも拘束されていた手足を確認する。そしてすぐさまOOはベッドを降り、出口と思われる扉へと向かう。しかし
「何処へ行くつもりなんですか?話はまだ終わってませんよ」
見た目からは想像出来ないほどの強い力で服を引っ張られ、思わずバランスを崩し、さとりを押し倒す形になってしまった
「ま、まぁ…あなたったら、意外と大胆なのね…」
妙に落ち着いた笑顔、口調。それらがOOの恐怖心を加速させていた
「こんなに近いと私の心、ほとんど丸見えでしょう?」
「…?どういうことだ?」
「どういうこともなにも、私と同じそれよ」
さとりの指す方向に目を向ける。そこにはさとりの持つ第三の目とほぼ同じものが浮いていた
「!?何なんだよ、これはぁ!?」
「銀の鎖だけではあなたを縛りきれない。だから、別の鎖を用意させてもらったは。これがある限り、あなたも私たちと同じ幻想の存在。もう二度と外の世界には帰れなくさせる素敵な存在…」
「ふざけるな!!こんなもの、千切ってしまえば」
「無駄よ。例え千切れたとしても、あなたの中には既に私の妖気でいっぱいなのよ。それは第三の目が在ってもも無くても変わらない。結局あなたはここからは逃げられない………ふふふ」
狂気なんかで説明が付くようなものではなかった。目の前にいる少女が誰であろうと、OOが外の世界に帰れるということはもうないのであった
「大丈夫、ここで私がずっと、ずっと、あなたを飼って差し上げますわ」
そういってさとりはOOを抱きしめる。OOは受け入れもせず、拒否もせず、ただ終わりの日をひたすら待ち続けることにした
「ゲームをしましょう。私とあなたで」
さとりがそんなことを言い出したのはOOを監禁してから10日程たったころだった
「…ゲーム?」
「そうです。もしあなたが勝ったらここから出て行くことができる、勿論外の世界にも帰れるようにします」
「本当か?」
「ええ、勿論。但し、もし負けたら罰を与えます」
「そいつは一体なんなんだ?」
「簡単です。この地霊殿から外へと通じる扉をあなたが制限時間以内に見つけたら勝ち。出来なかったら負け。それだけです」
「妨害とかは?お前のことだ。何か仕掛けてくるんだろ?」
「いいえ。あなたがゲームを始めてから最後まで私は一切干渉しません」
「……………その罰ってのは?」
「ふふ、それはお楽しみです」
さとりが出した突然の提案。内容を聞くだけではOOにとって不利な点は無い。しかし、感じんの罰が分かってない以上OOは承諾することが出来なかった
そんなOOの気配を察したのか、さとりはこう続けた
「もし、あなたが嫌だと思うのであれば、この話は無かったことにしますけど?」
「!!」
その言葉がOOの思考を早める。絶好のチャンスを掴むか、水に流すのか。長い沈黙の中、OOは遂に決断を下す
「……分かった。やってやろうじゃねぇか。そのゲーム、受けてたつ」
さとりはさも分かっていたかのように笑っていた。その笑顔はどこか暗く、やさぐれていた
「分かりました。まずはこれを外さないとですね」
さとりはOOの手と足に着けられていた鎖を外す
「さて、探索の時間はどうしますか?ここで決めた時間が後の罰に影響しますよ」
「10分だ」
「分かりました。では10分間、どうかあなたにとって有意義なものでありますように……」
さとりが扉を開ける同時にOOが外へと歩き出す。長いようで短い、OOの運命を決める一つ目のゲームが、今始まろうとしていた
<続く>
最終更新:2015年06月13日 23:17