「○○、来てください」
「なんでしょうか、四季様」
いつも通り、四季映姫が○○を呼ぶ。
「私を膝の上に乗せなさい」
「…しかし、それは四季様を侮辱しているようなものでは…」
「これは命令。上司の言うことを聞くのが部下なのでは?」
「…わかりました。」
○○は、命令と言えば何でも聞く。そう、何でも…
最初の命令は、肩を揉む、などといったものだった。
ただ近くに居て欲しい、それだけだった。
しかし、願望は欲望に変わり、自分のものにしたいと思い始めていた。
命令も、徐々にエスカレートしていった。
もう、自分を止められなくなっていた。
さあ、次はどんな命令をしようか。
他の女性との接触を禁じようか、
それともいっそ監禁しようか。
あなたが私の部下である限り、私はあなたに命令を下せる。
「○○」
「はい、なんでしょう」
さあ、どのようにして私のモノにしようか…
もういくつ命令しただろう。
この前は遂に人里に行くのを禁ずることが出来た。
相も変わらず、○○は全ての命令を受け入れてくれる。
きっと、今日の命令も受け入れてくれる…
「○○。ついて来なさい」
「はい」
私は、○○をある部屋へと連れて行った。
「今日から、ここの部屋から出てはいけません」
「…ずっと、ですか?」
「ええ」
「仕事は?」
「いいです」
「生活は?」
なんだろう、今日の○○は執拗に粘る。
「全て、私が保証します」
「…無理、です…」
え?
「○○?これは命令よ?」
「こればっかりは…駄目です」
○○が。命令を。聞かない。
なんで?どうして?なんでなんでなんで?いつもの従順なあなたはどうしたの?
私は、もうあなたを私のモノにすることができないの?
いやだ。
そんなの、いやだ。
「…理由は、なんですか?」
「…私は、これからここに一人きりなんですよね?」
「そうですが」
○○が、他の人や人外の手に渡らないように。
「…私には、好きな女性がいます」
え。
「ここにずっと一人きりで、会えないなど…つらすぎます」
○○には、愛する人が、心の拠り所があった。でもそれは、私じゃない。
「それは…だれ…?」
「…今は、言えません」
「命令」
「…あなたは、すっかり変わってしまった。昔は、そんな職権乱用のようなことなんてしなかったのに!周りに悪く言われても!涙を拭って立ち直ってたあなたは!どこにいったんですか!」
「……分からない。自分でも分からない。ただ、あなたを手に入れたくて…」
「なら、しっかり口で伝えてください!」
「…でも、もう遅いでしょ?」
そうだ、○○には好きな人がいると、聞いたのだ。
「…はぁ、……私の好きな人はですね、どんなことにでも一生懸命であり、一所懸命…[でした]」
「……?」
「いつも、慈愛に満ちた眼…[でした]」
「………」
「いつも、差別をせず、…白黒つける人…[でした]」
「……!……私は、嫌われましたね…」
「…でも、良い所も、悪い所も、全てひっくるめて私はその人を[いい人]だと思います」
「…○、○…さん」
「…私は、四季映姫そのものが好きなのです」
そのときの○○は、とても優しく笑っていた。
「良いものは良いままでいい。悪いものは悪いままでいい。変わってしまったものは変わってしまったままでいい。…私に、隣を歩かせてくれませんか」
私は、泣いていた。ありのままの私を、大好きな人に受け止めてもらったことが、嬉しくて。
今のままでいいじゃないか。○○がいいというならば。
○○は、全てを受け入れてくれるのだから…
最終更新:2015年10月08日 23:31