例えば小傘が○○の持ち傘だったら
急な雨にも虚空に向かって「こーがーさー!」って叫べば鬼○太郎どーんって感じで飛んでくるんだろうな。
小傘は耳がいいよね、って腕組ながら小傘(本体)をさして雨の道をあるくんだけど、違うんだよね。
雲ってくるとご主人の足音聞いた犬のみたく、○○の家の玄関から出て声掛かるの待ってるんだよ。健気だね。
たまに、寺の山彦も「こがさー」って鳴くから案外聞こえるんだよ。
それで、小傘(本体)をシャバババって高速回転させながら「あーい、アチキをお呼びでありんすかー」って小傘なりのカッコイイキャラ作ってやって来るんだ。
自分使ってくれることが多いから小傘は梅雨時が好きなんだ。道工の鑑だね。
○○に喚ばれてから家に帰るまでの道のりも小傘は大好きなんだ。
肩を寄せあって、小傘は傘なのに○○は濡れないように肩を抱いて、心持ち小傘よりに傘をさすんだ。
そんな○○の心遣いと体温に、濡れないようにしてたのに濡れてきちゃうんだ。
ところで、家に傘がひとつしかない家ってないよね。
普通は少なくとも人数分、さらに何本か余分にあるよね。
でも、○○の家にはないんだ。
なんで、って?
そんなの小傘が壊すからに決まってるよね。
誰かお客さんの忘れ物でも、取りに来ないって分かったらへし折っちゃう。
だって、困るもん。もし、九十九神になりでもしたら、
もしかしたら自分よりそっちが使われちゃうかもしれない。
少なく見積もってもあの帰り道のドキドキわくわくを味わうのが半分の頻度に減っちゃうからね。
要らないよね、小傘以外の傘なんて。
「だから、ゴメンね」
みしみしみし……ベキッ
その分、大事にしてもらう積りなんだ、小傘は。
一途だよね
最終更新:2015年10月08日 23:51