結界の内で育った僕は、12の春に外へ出た。きっかけは覚えていない。ただ、初めて過ごした夜は、寂しくて肌寒かった。警察に保護されてからは施設に7年、それから今のこの暮らしに繋がる。

ルーミア。かつての幼なじみは昨日まで記憶の底に沈んでいた。が、今この瞬間に彼女は目の前にいる。昔と変わらぬ姿で。
「○○…?」
仕事からアパートへ戻り、電気をつけた時だった。懐かしい彼女に僕は驚いた。
「やっと会えたね。○○」
クスリとした笑みは少し歪んでいた。
「○○はもう大人なんだね。」
少しずつ近づいてくる。つい僕は後ずさりしたが、ドアにぶつかった。
「また、逃げるんだ。」
目の前に来たときに部屋の明かりは突然消え、暗闇に包まれた。僕はそこで意識を失った。

翌朝、新聞配達のバイクで目が覚めた。何か美味しそうな匂いがすると思えばルーミアが食事を作ってくれていた。
「○○、おはよう。」
にこりと笑う彼女。変わらない味噌汁の味。
「久しぶりだね、○○にご飯食べてもらうの。」
ただ頷く。僕は彼女に昨夜の事は何も聞かない。それが昔からのルールだったから。
「これからは毎日作ってあげるね。」
うれしそうに彼女は笑う。
「いってらっしゃい。」
僕が仕事に行く時には弁当を渡してくれた。おいしかった

いずれこうなる事は感じていた。

仕事が終わり夜になる頃、彼女は目覚める。 今日はやけに寒い。帰らないでおこうか。そう考えていたら、背後でルーミアの声がした。
「帰ろう。○○」
風が吹いて、雪が降ってきた。もう僕にはどうしようもなかった。

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最終更新:2015年12月16日 22:32