○月○日

今日から永遠亭の薬師さんの弟子として永遠亭に住み込むことになった。
医学経験など一切無い私が名高い八意永琳先生の弟子になる事など夢にも思わなかった。
何でも先日の里の流行病の際、先生が来る前の応急処置が良かったというが…。
まぁ、明日から本格的な修行が始まるらしい、今日は早くに眠るとしよう、姉弟子に当たる人と仲良くできればいいが…。

×月△日

今日の作業中、補助をしてくれていた鈴仙が急に倒れるというハプニングがあった。
しかも高熱を発し酷く苦しんでいた、幸い永琳先生の処置により一命は取り留めたが原因は不明。
原因が究明されるまでは流行病の可能性も考慮し隔離、病も毒も通じない蓬莱人であるという先生が処置を施す事になった。
鈴仙は先生の姉弟子としても、一人の女性としても慕っている人、何とか無事助かって欲しい……。

×月□日

鈴仙は無事峠を越し命に別状はないそうだ、だが、高熱のせいか、それ以外の何かのせいか記憶障害が起こったらしい。
なんでも幼児期位まで精神が退行してしまったらしく、私達との関係も全て忘れてしまっているそうだ。
あと少ししたら、香霖堂で売っていたあの指輪で告白しようとしていただけにショックは隠せない……。

×月×日

あれから数日、未だに鈴仙の記憶は戻らない、だが、私も何時までも立ち止まってはいられない。
先生も鈴仙の記憶復活に最善を尽くしてくれいるし、てゐさんも落ち込んでいる私をみて優しく励ましてくれている。
鈴仙が復活した際に笑われないよう、傍に立てるだけ立派になれるよう、もっと頑張ろう。

追記

これから眠ろうとしていた時に因幡の子達が大騒ぎしていたので何事かと聞いてみるとなにやらてゐさんが急に倒れたらしい。
他にも因幡の子達の中にも急な高熱で倒れた物がでたらしい、まさか鈴仙と同じ……。
先生もどうやら同じ判断をしたらしく、この騒動を「流行病」の物と断定、症状が出たものは隔離し、各自処置を施す事になった。
先生一人では流石に手が足りない為に永遠亭の主である輝夜様と友人と言う妹紅さんの手も借りる事にしたらしい。
こういう時、ただの人間である自分のみが呪わしい…… なんと、無力なんだ、私は。


△月Ω日

どうなっているんだ!? 一向にあの謎の流行病が治まる気配が無い。
日に日に患者は増え、最早私も永琳先生が作った特別な防護服を着て看病に回らねばならぬほどに自体は緊迫している。
幸い、鈴仙の頃の知識が活きる形で高熱は直ぐに抑えられる、だがその後の記憶障害だけはどうしようもないらしい。
次々と幼児化していく因幡達、あの悪戯好きだったてゐさんでさえも、今は外見相応の幼子状態。
だが、輝夜さんが何かを発見したらしく、私に「もしかしたら解決の糸口が掴めるかも」と言う情報を伝えてくれた。
しかし、自分の情報が間違っているかも知れないので永琳先生には確信になるまで伝えないで欲しいとも言われた。
どうか、輝夜さんの発見が正しいものでありますように、鈴仙達が元に戻りますように… 今の私には、祈る事しかできない。



△月Σ日

最悪だ… もう、永遠亭は、いや、この病が広がったらこの幻想郷も終わりかねない……
蓬莱人である蓬莱山輝夜、藤原妹紅両名が病を発症、持ち前の治癒能力の高さゆえか直ぐに熱は収まったが、障害がでた。
幸い鈴仙達ほどの幼児化には至ってはない物の、二人とも精神退行を引き起こし、今や普通の少女でしかない……。
永琳先生が一人奮戦しているものの、どうすればこの病を抑えられると言うのだろうか。
そういえばこの永遠亭に近づくものを、人妖、動物問わずに此処最近何一つとしてみた事が無い。
幻想郷の大事にはスキマ妖怪が動くと言うが… もしや、永遠亭はそのスキマ妖怪に見捨てられ、切り捨てられたのだろうか…?


□月Ζ日

……なんと言う事だ、信じていた神が残酷な悪魔だったとは……。
私は恐らく、今日中にでも処理されるだろう、だが、その前に真実を、書き記しておく。

永遠亭に流行った病の正体、それは八意永琳による実験によるものだった、どうやら記憶の逆行、並びに任意抹消により対象を幼児化する薬の実験を行ったらしい。
最初の実験台は鈴仙、次にてゐ、そして因幡達、そして輝夜・妹紅両名はこの事実を嗅ぎつけたが故に実験台にされたらしい。
信じがたいが、事実だろう、何せ本人の日記から読み取った物なのだから。
さらにこの永遠亭を完全な密室にしたらしく、スキマ妖怪でさえも侵入できない程に強固な結界を張っており、誰も出ることもはいる事もできないらしい。
幸いなのはその密室内部で完全な自給自足が可能、と言う程度か。

自らの家族を実験台にし、完全なる密室を作ってまで彼女、八意永琳が何を求めていたのかと思えば… これこそ信じられない。
どうやら彼女は、この私を、△×○○に一目惚れしたらしく、私を蓬莱人にする為の下準備としてこのような事をしたらしいのだ。
私の記憶を完全に逆行させ、自らが『母』代わりとなり育て、【永遠】を【普通】にし、蓬莱人にした後、『妻』となる為に………
狂っている、彼女は、八意永琳は狂っている、何故私一人の為だけに、自分の家族を、全てを犠牲にできると言うのだ!!

どうやら、私の記憶も此処までらしい、先生が、彼女がこの部屋に歩いてくる音が聞こえてきた。
蓬莱人にすら効果を発したと言う薬に、ただの人間である私が抗えるはずも無く、彼女との力比べなどなおできようはずも無い。
……部屋の前についたようだ、しきりに私を呼ぶ声が聞こえる… たとえ自殺を図っても、彼女相手では直ぐに蘇生されて終わりだろう。
願わくば、この日記が誰かの手に届きますように、△×○○という存在がいた証が、誰かに……(此処から先は墨が零されているらしく読むことができない)

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最終更新:2017年04月08日 04:54