「金が払えないのなら、ある賭けをしようじゃないか」
暗闇の中でにやにやと笑う妖怪の女がそう言った。
「壺の中に二つ石を入れ、黒い石を取れば、此方の勝ち。白い石を取れば、其方の勝ち。」
色々と借金が重なった男にとっては、それしか無いように思えた。

 人間の男は考える。あいつはいやに自分を欲しがっており、恐らく絶対に自分を物にしようとするだろう。
ならばあの話のように、必ず壺の中に二つとも黒い石を入れるだろうと。
女にとっての誤算は二つあった。男が外来人であったこと。そしてとある話を聞いたこと。

 妖怪の女は考える。あいつをとうとう手に入れることができそうだと。ならば二つとも黒い石を入れてしまえば、
男は必ず黒い石を取ると。認めないのならば、力で無理を通せば良いと。
男にとっての誤算は二つあった。女が妖怪であったこと。そして女には妖力があったこと。

 妖怪は目の前の男に壺を突きつけて、さあ選べと突きつける。
すると男は石を掴むと、暗闇の中に石を落っことす。
「ありゃ、石を落っことしてしまったよ。まあ、壺に入っている石みたら、どっちか分かるんじゃないかい?」
そして女は残った石に力を通して突きつける。
「おや、白い石だねぇ。」
 佐渡の二つ岩は考える。あの妖怪はきっと騙くらかしをするだろうと。ならば人間の男に化けて、
自分が見破ってしまえば良いと。
マミゾウにとっての誤算は二つあった。人間の男を助ける代わりに、
伴侶になる約束まで取り付けることが出来たこと。
そして目の前の妖怪が、自分を見破れないほど弱いとは思っていなかったこと。

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最終更新:2016年03月29日 21:19