河童は元来工作好きである。手先が器用な上に、新しい物好きな性格が重なり、
色々な発明品を作り出していた。特ににとりは外来人と知己になっており、
外の世界の発明品を聞くことで、自分でそれらを再現していた。
外界の発展は幻想郷を大きく上回っており
-だからこそ妖怪の賢者は、全てを受け入れる場所として
ここを作ったのだが-
外界では当たり前となった機械であっても、明治時代のレベルにも達していないような
幻想郷では、まだ誰も作っていないことが多々あった。
しかも河童もれっきとした妖怪であり、ご多分に漏れず妖力やら、能力やらが使えたのだから、
原理さえ知っていれば、短時間で試作品程度ならば作り上げる事が出来た。そのため
にとりは彼を知識をあてにしていたし、好意すら持っていた。
しかし持ち前の内気さが災いとなり、彼には伝わっていないことから、
未だに友人としての付き合いであった。最も、河童の家に招かれて夜遅くまで滞在し、
帰り道に山の麓まで送って貰うことは、彼ら-あるいは彼女ら-の感覚からすれば、
「こいつは私の物だ。」と口外に言っているに等しいのであるが。
そのような日々を過ごしている内に、彼に恋人が出来た。
それを彼の家に仕込んだ盗聴器から聞いた時には、にとりは思わずスパナで、
周囲の機械を砕いてしまっていた。まあ、盗聴機の受信機は壊さなかっただけ、
紙一重の部分で冷静さが残っていたのかもしれないが、それだけ執着が
強すぎたのかもしれない。いっその事盗聴器も粉々に砕いてしまえば、
彼への思いも諦めがついたかと思えば、大変口惜しいことであろう。
其れからのにとりの日常の中に、盗聴やら盗撮が一層組み込まれることとなったのは、自然の成り行きであった。
以前は日常の刺激として聞いていただけだったが、徐々に費やす時間が増え、
遂には阿片にはまった人が、其れ無しでは動く事すらままならなくなるように、
暇さえあれば、イヤホンを付けて画面を見つめるようになった。-ジャンキーが一丁出来上がり、である-
最終更新:2016年03月29日 21:26