胡蝶夢丸ナイトメア





 胡蝶夢丸ナイトメア。

 悪夢を見れるという丸薬である。

 それがどんな悪夢なのかは服用した本人しか分からない。

「ねぇ、起きて! ○○!」

「う…うーん。れ、霊夢か?」

 揺さぶり起こされて俺は目を醒ました。

「また魘されていたわよ」

 霊夢はため息をつきながらも、俺が起きたことに安心したようた。

 俺は最近、毎晩の様に悪夢を見る。

 切欠となったのは、八意永琳特製の丸薬である。

 神社で恒例の宴会が催された時に、話題の上がった悪夢を見れる薬。

 なんの因果か、俺が飲む羽目になった。

 しかし、この薬にはなんの副作用も無いはずである。

 だが、結果はどうだろう。

 今や毎晩、俺は悪夢を見ている。

「怖いくらいに、その…魘されていたから、おこさなくっちゃって思って。ごめんなさい」

 気が付けば霊夢が俺に謝ってきた。

 どうやら無言でいたのを勘違いしたようだ。

「いや、いいよ。起こしてくれてありがとう」

 そういって俺は心配顔な霊夢を抱きしめた。



「それじゃあ行ってくるから、○○は無理しないで休んでてね」

 霊夢は永遠亭まで話をしに行ってくる。

 毎晩深夜に魘され、起こされ、疲れは回復しない。

 おかげで最近は目にクマができ、食欲もないし体調不良で満足にうごけやしない。

 だが、それは霊夢も同じ事。

 それでも俺のために無理する霊夢。

 縁側に座りお茶を淹れて目を閉じる。


 霊夢との出会い。

 幻想郷での日々。

 そして惹かれあう思いを否定するかの如く、異変に見舞われる。

 その異変を乗り切ったとき、俺達は愛し合う恋人同士となった。

 そのことに後悔なと微塵もない。

 むしろ幸せだと言ってもいい。


 けど今の現状が霊夢におんぶに抱っこの状態が悔しくて仕方が無い。

 お互い支えあってこその恋人同士じゃないのか?

 俺は自問自答する。


 永琳の丸薬に罪はない。

 問題なのは俺の方なのだ。





「そう。話は分かったわ。副作用は無い様に作ってあるのだけれども……もしかしたら体質かもしれないわね」

 霊夢は永琳に目を見据えると、

「嘘だったら承知しないわよ?」

 と、不機嫌を隠そうともせず言い放つ。

「そんなに睨まないで頂戴。とにかく今から診察に行くから大丈夫よ」

 そう言って永琳は鞄に怪しげな薬やら器具やらをバラバラとほうり込む。

「来るならさっさとして頂戴」

 霊夢はいてもたっても居られないのか、情緒不安定の様にうろうろと歩き回っている。

「はいはい、少しは落ち着きなさいな。貴方がそれでは彼も心配するわよ?」

 言われた霊夢は心当たりがあるのか、眉を顰めると、むぅと一言零してため息をつく。

 準備が整い霊夢と永遠亭を後にした永琳は、飛行しながら今回のことを考えていた。


 いくつかの仮説があるが、一番有力なのは一つ。

 依存。

 悪夢依存だ。


 人間の中にたまにいる事だが、生い立ちや過去になんらかの不幸があった人間にある現象。

 幸福になりすぎると、その幸福に恐怖する事があるという。

 そういった人間はタチが悪い。

 適度な不幸が無いと安心して生きていけないのだ。

 それが彼であった場合……




「同調?」

 怪訝な表情で霊夢は永琳に問う。

「ええ、今回の事は彼……○○一人では多分難しいと思うのよ」

 いくつかのよく分からない道具を身体に装着され、診断されていた○○はポカンとした表情でいる。

「なあ、それって俺の夢に霊夢が入ってくるって事か?」

「そうなるわね」

 正解と指を立てて片目を瞑り微笑む永琳。

「つまり○○の悪夢に入って私が救えばいいって事ね?簡単じゃない!」

 やたら霊夢は乗り気だ。

「いやいや、ダメだ、そんな事させられないよ」

 霊夢の事を心配してか○○はやめさせようとする。

「だーめ!やるったらやるわよ!」

 そういって霊夢は○○を押し切ってしまった。


「一応一週間分置いていくけど、良くなりだしたら様子をみるように、これも一応薬だからね」

 そういって永琳は神社を後にした。

 ○○は結局夜になっても、やっぱりやめよう、と何度も霊夢を宥めるが、霊夢は頑として引かなかった。

「ほら、お互いが飲まないと意味ないのよ」

 霊夢は白い丸薬と水の入った湯のみを差し出してくる。

 ○○は悩んだ末、霊夢に半端強制されて飲まされてしまった。




 薄暗い闇が広がっていた。

 そこに○○はいた。

 霊夢は呆然と見ていた。

 そこには私が、霊夢がいた。

 あれは私じゃない。

 泣け叫ぶ○○。

 いつも使っている針を○○に刺している。

 やめて。

 そこの私は、酷い形相で○○を痛めつけている。

 やめて。

 何処から取り出したのか、鉈の様なものを振りかぶる私。

 絶望の表情で私を見つめる○○。

 それが振り落とされる。

「やめてーーーーーーーーーーーーー!!」

 瞬間、私と○○が、鏡に映ったソレにヒビが入って砕け散った。


「どうして?」

 ○○が立っていた。

「○○!大丈夫だった!?」

 私は無事な姿の○○に駆け寄ろうとして、動けない事に気づいた。

「あれ?○○!助けにきたのよ!もう大丈夫だから!」

 それでも私は声を上げて○○に呼びかける。

 ○○の顔は翳っていて表情が良く見えない。

「大丈夫だから!こんな悪夢なんかすぐ消し去ってあげるから!」

 怖い。

 初めて思った。

 こんなの知らない、○○が○○じゃない。

 でも私が助けてあげる、○○は絶対に

「霊夢。愛してる」

 唐突に○○が口を開いた。

「え……? うん、私も好き。大好きだよ。愛してる」

「でもダメなんだ」

 ○○が顔を上げた。

 その目は虚ろだった。

「怖いんだ」

 その声は左の方から聴こえてきた。

「霊夢がいつか俺を捨てるんじゃないか」

 今度は右の方から。

「いつも異変に狩り出されて、戻ってこないかもしれないって思う」

 後ろ…

「また不幸になるかもしれない」

 上…

「なんの助けになれない俺が霊夢の重荷になるのが嫌なんだ」

 いろんな方向から○○の声がこだまする。

「だから、怖いんだ」

 はっと気づいた時、目の前の○○が口を開いていた。

「私は……絶対に○○を裏切らない」

 そう言った瞬間に私は腕に痛みを感じた。

「こんなことをされても?」

 腕を見ると、針が貫通していた。

「な…なんで?」

 言うや否やわき腹、足、太もも、肩に鈍い痛みが走る。

 針が刺さる、夢のはずなのに痛い。

「○○…?どうして」

「なぁ、俺は霊夢に殺されてもいいくらいに愛してる」

 虚ろな目で○○は言葉を発した。

「霊夢は違うのか?」

「そんな事はないわ!ただこれは間違ってる…○○目を醒まして!」

 私の○○に戻って欲しくて○○に必死に呼びかける。

「何を言ってるんだ霊夢。これは夢なんだ、夢なんだから殺しても殺されても死なないから」

 そして○○は私の首に手を伸ばし、そのまま締め付けてきた。

 殺されるのね……私は○○に……

「うん……いいよ。○○にだったら私……ころされてもいいよ?」

 首を絞められ、苦しいけど私は必死に笑顔で言った。

 その時、初めて○○の目に光が戻った。

「ありがとう霊夢……あいしてるよ」

 首を絞めながら○○は私に優しく口付けをした。

 そして私の意識は暗転した。



「おはよう霊夢」

 その日、久しぶりに目覚めと共に朝日が昇っていた。

 ○○は穏やかな笑顔で微笑んでいた。

「おはよう○○」

 きっと私も笑顔でいたと思う。



 それから数日、私達の夢の逢瀬はつづいた。

 殺して。

 殺されて。

 そんな夢なのに、私達は満たされていた。

 たとえ夢でも、否、夢だからこそ、お互いの汚らわしい衝動をさらけ出す事ができた。

 心のどこかで危険信号が出ている気もしたが、○○の為なのだから。

 丸薬も残りあとわずか、そうしたらやめようと○○とも話がついている。

 だから。

 今は、ただ夢を見ましょう。








「相変わらず汚い部屋ね」

 突然の超えに驚いて振り向くが、それはいつもの知った顔。

「紫か、いつも言ってるが玄関から入ってほしいぜ」

「はいはい、そんな事より見に行って欲しいところがあるの」

 隙間に腰掛けて、胡散臭い笑みを浮かべていた八雲紫が珍しく真面目な顔になる。

「何処にだ?」

 そんな雰囲気につられてついつい、霧雨魔理沙も真面目な表情になる。

「博麗神社」


 魔理沙は愛用の箒にまたがると全速力で神社へと向かっていった。



 ここ最近、博麗神社に人が訪れていなかった。

 それは霊夢の人払いの結界が張られていたからだという。

 斯く言う私も最近神社に行く気がしなかった。

 なら紫はなぜ気づいたというのか。

 境界に一番詳しい妖怪なのだから気づかないはずがない。

 隙間を開いて神社に入ろうとしたら強力な結界で弾かれたという。

 強大な力を持つ妖怪であればあるほど反発力を生むというその結界では、紫ではどうすることも出来なかったらしい。

 そこで人間の私にご指名が来たというわけだ。

「胸騒ぎがするぜ」

 そう言って魔理沙は更にスピードを上げた。





 【胡蝶夢丸】

 眠る前に数粒飲用することで悪夢を見ず、楽しい夢を見られる。

 ‐服用の際の注意点‐

 夢の世界はもう一つの自分である。

 夢だけが楽しすぎると夢と現実が入れ替わる可能性があるので、服用のしすぎには注意をしてください。




「○○…?なんだこれ…」

 魔理沙はただ呆然とソレを見つめていた。

「ああ、痛い、痛いよ霊夢」

「そうね○○、痛いでしょう?でも大丈夫よ、明日は○○の番だからね?ふふ」

「そうだな、明日は俺が霊夢を達磨にしてやるからな…ぐふっ」

 ○○の両手両足はぐちゃぐちゃにミンチにされていた。

 それを妖艶な笑みを浮かべて見つめているのは霊夢だった。

「なに…してんだ?…霊夢?……○○が死んじまうぞ?」

 それは異様な光景だった。

 霊夢が○○の返り血を浴びて、熱に魘される様に愛を囁きながら、○○を残虐に殺している。

 ○○が朦朧とした表情で、霊夢の殺されながら、愛を囁いている。

 怖い、と思った。

「あら、魔理沙じゃない。見ててもいいけど邪魔しないでね」

 その口調はいつもの霊夢だけど。霊夢じゃなかった。

「せっかく誰にも邪魔されないように結界張ったのにね…まぁいいわ明日で最後なんだし」

「…そ、うだな…明日で最後だったっ…け?まぁ…いいか…霊夢なら…」

 そういって二人は、ワラッタ。



















































                      • ちるののうら------------
友人がヤンデレが良いという。
俺はリアルにヤンデレいたらこわくね?言う。
友人が二次だから良いという。
つまりヤンデレスキーは夢でヤンデレならサイコーということ?と俺思う。
胡蝶夢丸ナイトメアとかクリティカルヒットじゃね?思う。
書いてみた、収拾つかなくなった。
夢と現実が曖昧になるとかニュースとかであるけど、それって怖くね?






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最終更新:2019年01月26日 20:21