アルカナゲーム
ふと気が付くと暗い闇の中にいた。目の前には
僅かな明かり、紫色のドレスを着た女性が一人
自分の目の前に座って居る。女性がハラリと扇子
を広げると机にカードが現れ、漸く僕は自分が
椅子に座っていることを自覚するのであった。
「○○さん、ゲームをしましょうか。」
暗い所為か女性の顔はぼんやりとしているが、綺麗な
声が耳に染みこんでくる。
「何のゲームです?」
「タロット占いはご存じですか?」
ある程度は知っています。と答えながらカードを良く
見ようと体を前に倒そうとするが、体は全く動かない。
それどころか、腕すら動かせないことが分かった後で、
自分が今口を動かして、喋ることすらしていなかった
ことに気づく。
慌てる自分をよそに、目の前の彼女は微笑みながら、
指をスッと動かす。
「落ち着いて下さい。」
そう彼女に言われた途端、何だか僕は熱が冷めたように
平静に戻ったのであった。
「今から貴方には、カードを一枚選んで頂きます。
それぞれのカードにはタロットの大アルカナと、女性
の名前が書かれていますから、直感で選んで下さい。」
「直感で?」
「ええ、占いですから。」
知らない女性を選ぶという選択を、唐突にするように
言われ思わず聞きかえすが、こともなげに返される。
そう身も蓋もなく言われてしまってはそうするより
仕方なく、いざカードを選ぼうとすると、まるでゲーム
でカーソルを合わせたように、二枚のカードが目の前に
飛び出してくる。赤い髪の女性が書かれているカードは
見た瞬間に、死神だと分かり、もう一方の閻魔の帽子を
被ったカードは、何故か何のカードかよく分からない。
しかし緑髪の彼女が、閻魔大王であることは頭が勝手に理解して
いたので、正義か審判のカードであろうと当たりを付ける。
暫くその二枚を見ていると、女性の下には星のマークが
勲章のように何個も付いており、気になって尋ねる。
「この星のマークは何ですか?」
「これは彼女達のレベルです。」
「レベル?」
「そう、レベルです。」
禅問答のような埒が開かない回答を聞き、これ以上目の前の
彼女から情報を得ることを諦める。数分程、あるいは十数秒
だったかも知れない時間が経ち、僕は二枚のカードから彼女を
選んだ。タロットカードには二十一枚の大アルカナカードが
あり、目の前の机には残りのカードが伏せられていたのだが、
不思議と他のカードをめくる気にはなれなかった。
僕が選んだカードを見て、彼女が尋ねる。
「どうしてそのカードを選んだのですか?」
「うーん、これから行動を共にする女性だったら、自分の好みの
人が良いからかな。姉御肌で頼れそうだし。」
-まあ、下の星のマークがもう一人の人より少ないから、何だか
弱いみたいで気に掛かるけれど-と言ってから自分がいつの
間にか、赤髪の女性の人柄や「この後自分が、彼女と一緒に行動
すること」を知っていることに驚く。目の前の女性は口元で微かに
笑った後、-其れでは-と告げると、急に僕の意識がこの空間から
消えていく。視界が曲がっていく中で、為す術も無く翻弄される
僕の耳に彼女の声が聞こえる。
「あのレベルは色々な強さを表しております。スペルカードの強さで
あったり、貴方に対する独占欲であったり。強い人を選べば、それ
だけ苦労が酷くなると。良かったですね、もう一人の方を選ばなくて。」
最終更新:2017年01月01日 21:22