「文危ない!!」

大声とともに○○が文を突き飛ばした。

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今日も私は○○に会いに行く 理由?そんな事は○○が好きだからに決まっている。
○○は外来人で妖怪に襲われていたところを私が助けた、といった所だ。
私達妖怪は極々一部を除き人間に良いようには思われていない。
それどころか里の人間の中には私達妖怪を排除しようと考えている人間もいるらしい、全く愚かな事だ。
しかし、そんな中○○だけが違った。
彼は私が彼が襲われているときに何となく助けた事に感謝してくれたのだ。
最初は助かりたいが為の一時的なものだと思っていたが彼はその後何度もお礼をしてくれたり更には私の仕事をも手伝うと言い出した。
流石の私も最初はやんわり断っていたのだが彼の真剣な眼差しに負け、彼の申し出を
引き受けた。今思えばこの辺りから彼、○○の事を好きになっていたかもしれない。


○○と待ち合わせしていた場所に着く 彼は既にそこに居た。
彼を視界に入れただけで心が躍る。

「すいません、○○さん。待たせてしまいましたかね?」と、不安げに私は聞くも

「いえ、そんな事はありませんよ。僕も今来たところです。」

そう言い、彼は笑った。本当に彼は優しい。そういう所も大好きだ。
暫く二人で他愛ない話をする。この時間が堪らなく愛おしい。

「射命丸さん今日はどちらへ?」と、○○が話を切り出してきた。

「今日はですね休みなのでのんびりしませんか?
 私の家まで案内しますy「文危ない!!」
「へっ?」

「死ね!この化け物が!」

話の最中に突然○○が大声とともに私を突き飛ばし、知らない男の怒号が聞こえた。
あまりにも突然の事だったので私は何が起きたかすら分からなかった。
しかし理由はすぐ分かった。
何故なら突き飛ばされた直後に里の者であろう男の鍬を振り下ろす姿を見たからだ。
大方妖怪が気に入らない人間の集団が襲いにきたのだろう。私はそうのんきに現状を確認していた。...ん?
○○が私を突き飛ばしたなら○○はどうなるのか?
私はその答えにすぐ気づいたが既に遅かった。
「○○ッ!!」
そう言い終えると同時にガンッ!という生々しい音が響いた...。


気がついたら目の前に血まみれの男が倒れていた。恐らく死んでいるであろう。
自分が何をしたのか全く覚えていない。が、こんな男の事はどうでもいい。
そんな事よりも○○を早く治療しなければ...


「んん...ここは何処だ?..痛っ!」
辺りを見回そうとしたら頭に激痛が走った。思わず手を頭に当てると

「駄目ですよ!安静にしてないと!」と、言う聞き覚えのない声が聞こえ
そこに目を向けると、うさぎの耳を生やした少女が居た。

「此処は何処ですか?貴方は?」と言うと目の前の少女は

「順を追って説明しますね。私は鈴仙。此処は診療所というか薬屋というかう~ん、病院みたいなものです。
 4日前射命丸さんが蒼い顔をして貴方を此処に連れてきたんですよ?」と、言った。

そうだ。あの時射命丸さんを庇って頭を怪我したんだった。射命丸さん大丈夫だったのかな...

「そうでしたか。鈴仙さん治療していただきありがとうございます。」

「いえいえ、でも暫く安静だから大人しくしt「○○さん!!!!」

突如扉を勢い良く開ける音と同時に聞き慣れた声が聞こえた。

「○○さん!!!大丈夫でしたか!!??」
血相を変えた射命丸さんが飛びついてきた。
いきなりの事に驚きながら

「射命丸さん...痛いです...」と、言うと

「知りませんよそんな事!!!どれだけ私が心配したとおもってるんですか!!!うっ...うう...」
そう言い、目の前の射命丸さんは頬を濡らしていく。
ははは、なるべく静かにしてくださいね。と言い奥へ行く鈴仙さんを尻目に

「ご心配をかけてすいません...でも、射命丸さんが無事で良かったです」と、言った。

「あんな無茶は二度としないでくださいよ...貴方は私が護りますから...」
この時の射命丸さんの目が虚で黒く何処を見ているかが分からなかった。

昨日の一件から射命丸さんが妙にべっとりしてくる。
今までにも多少過保護な面があったが事あるごとに「貴方は私が居ないと駄目なんですから...」と虚な目で
言ってきたり鈴仙さんと話をしている間に強い視線を感じたり永遠亭に居るのにも関わらず束縛が激しくなってきた


いよいよ退院も近いという時にも相変わらず射命丸さんは僕にずっとくっついてばかりいた。
看病してくれるのは凄くありがたいのだが以前射命丸さんに
「ずっと看病するのも大変でしょう、此処には鈴仙さんも居ますし数日休憩してくださいな」
と言ったら顔が曇り物凄く不機嫌になった。だからあまり強く押し退けるような事は言えない。

今日も射命丸さんは僕の前に座り、気味が悪い程のニコニコした笑顔で見つめてくる。
正直な話最初の方は入院生活で色々大変だった僕を助けてくれて凄く助かったのだが最近の射命丸さんは
何を考えているのか全く分からずあまり良い印象を持てない。
しばらく考えていたら射命丸さんが
「何か食べるもの買ってきますね~すぐ戻ります!」と言い永遠亭を出て行った。
気をつけてと一言かけ見送ったら真剣そうな顔の鈴仙さんから声が掛かってきた。

「○○さん、師匠から大事なお話がありますので診察室まで付いてきてください。」
雰囲気からただ事ではないと分かり、分かりましたと一言言い、彼女に付いていった。
診察室に着き何の話だろうかと思いながら八意先生の話を待つ。
八意先生は苦い顔をしていたが口を開いた。

「○○さん、単刀直入に言います。射命丸文は危険です。」

「...急ですね、それはまたどういう意味で」

「そうですね、射命丸文は貴方を好いています。異常なほどに。」

面を食らった。彼女とは仲が良いとは思っていたがそれ止まりだと思っていた。

「しかし彼女は妖怪です。妖怪は精神に依存する生き物だと知っていますよね?
 恋をした妖怪がどうなるか、ましてや独占欲が混じった歪んだ恋を。これがどれだけ危険な事かお分かりですか?

「...。」
質問の意味は分かったが答えが分からなかった。

「簡単な事ですよ。独占欲に支配された射命丸文は貴方を自分の物とし、貴方の周りにも危害を加えるでしょう。
 これが人間の恋なら可愛い話で済みますが彼女は妖怪です。」

言葉が出なかった。いきなりの話に頭がパンク寸前だった。

「事実、射命丸文は鈴仙に危害を加えてます。」

「...!?」
追い討ちをかけるように言われた言葉に○○は頭の中で何故?としか言葉が出てこなかった。

「何故だ、と考えているようですね。理由は簡単です。鈴仙が貴方と喋ったからですよ。」

「そんなっ!」
単純明快な回答に思わず声が出た。

「ご理解して頂けましたか?射命丸文は鈴仙が貴方と喋っただけで嫉妬して危害を加えたのです。
 今後も徐々に彼女の歪んだ恋と嫉妬は酷くなりいづれは貴方にその全てをぶつけてくるでしょう。
 悪い事は言いませんが早急に彼女と縁を切るべきです。」

ただただ恐ろしかった。あんなにも陽気で朗らかな射命丸さんが僕を狙いあまつさえ鈴仙さんを傷つけていた事。

「急な話でしたから驚くのも無理はありませんね。すいません。が、全て事実です。
 今すぐに決断を出せとは言いませんが明日までに決めておいたほうが身の為ですよ。」

そう言われ放心している○○とは逆に怖いほどの笑みを浮かべた射命丸文が診察室の扉の前に居た。
永琳と○○の話を聞き終えた彼女は真っ黒な目で小さく呟く

   「○○さんは私の物ですよ...ふふふ...」

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最終更新:2017年01月09日 21:54