雨、雨が止んだ。
私は緑の長靴でピチャピチャと足音を立てていた。
なぜなら、暇だから。
ピチャ…ピチャ……グシャ。
…あ、カタツムリ潰しちゃった…。
……ま、いいか
…あ、来た。
「○○ー♪」
私はすぐに彼の体に飛びつく。
…あったかい。
―――ここが、唯一にして絶対の私の居場所だ。
私はひとしきり頬をスリスリしたあと、彼を見上げた。
彼は少し困っているようだった。
でもその顔も、やっぱりカッコいい。
「…じゃ、行こ?」
私は一旦○○から離れて、○○の手を握った。
カタツムリのことなんか、もう一切れも覚えちゃいなかった。
最近の私の趣味は、散歩だ。
もちろん一人で散歩なんかしても楽しいわけがない、だから彼を連れて行く。
彼の名前は○○、小説家で元外来人の男の人だ。
私は散歩をしながら、彼の小説の構想や世間話を聞くのが何よりの楽しみだった。
今日も私は彼とくだらない話をしながら歩く、歩く、歩く。
気づくと、もう夕暮れになってしまっていた。
水溜りに、夕日が反射していた。
日が暮れそうになったのに気づいた○○は、すぐに今来た道を引き返す。
私もそれに着いていく。
…夕方なんか嫌いだ。
ずっと朝のままだったらいいのに。
ずっと彼と一緒にいれたらいいのに。
私は帰り道を歩く、歩く、歩く。
そしてやっぱり、気づくと、彼と待ち合わせた場所に戻ってきていた。
彼が、私の頭を少し撫でて、帰りの言葉を口にした。
「…うん、バイバイ」
私はその言葉に返事をして、彼とは別の方向に歩きだした。
憂鬱だ。
私は自分自身の緑色の髪をいじりながら家路を歩いた。
楽しくない。
楽しくない。
ちっとも楽しくない。
…ちぇ、もういいや。
私の意識はすぐにシャットダウンした。
最終更新:2017年01月09日 23:32