藪の中

1 射命丸文の友人からの事情聴取

 ええ、文ですね。たしかに○○さんに対しては、とても気に掛けていたようです
ね。現在Nのところで「保護」されている××さんが切っ掛けで、○○さんが幻想
入りした時もとても気に掛けていて、椛から連絡を受けた時にも直ぐに駆けつけて
いた位ですから。さすが、幻想郷最速の名前は伊達ではないですね。
 そうですね…確かにちょっと度が過ぎている感じは無くもないですね。以前は
仲が良かった椛とも、結局それが原因で揉めてしまいましたし…。
 でも、文はいい奴だったんですよ。普段はおちゃらけている風を装っていますが、
本心はそんなのではなくて、熱いといいますか、何と言いますか、私達記者は事実
を追いかける事を仕事にしていますけれど、文は特にそれが強いと言いますか、
私ならとっくに諦めるようなことにも、諦めずに追求して最後にはスクープを挙げ
ることは何度もありましたし…。

 ですから、あの文があんなことになるなんて信じられません。まさか永遠亭で強
制入院になってしまうなんて…。しかも大分酷いと永琳先生からは伺いまして…。
どうやら椛と一緒に居たことが、余計に症状を悪化させてしまったなんて…。
 いえ、いえ、別に上の方を非難している訳ではないのですよ。随分稀なケースだ
ったらしいですので。実は私としても罪悪感といいますか、二人の間に居たので、
何かもう少し出来たのでは無いのかと思いまして。本当に残念でなりません…。


2 犬走椛の担当看護師に対する聞き取り調査

 地下202号室の患者さんについてですか…。ええっと、椛さんですね。確かに
私が担当しておりますよ。24時間交代で担当の因幡がいますが、私はそれを統括
する立場ですね。実際の診察は師匠がやっていますので、私は患者様が興奮した時
にそれを抑えることが主な役目ですね。
 最近ですか…。そうですね落ち着いてはきていますが、相変わらず妄想の症状が
有りますね。○○さんという外来人の方と恋仲になっているという妄想ですね。
たしか師匠が言うには恋愛妄想は、誇大妄想の次に難しい症状らしいですから、こ
とによると、完治には非常に長い年月が掛るかと…。
 人間でも長い方では、外界では10年単位で入院される方がいるらしいので、妖
怪となりますと、100年単位で掛るかもしれませんね。月の方でも恐ろしく長い
間に渡って、発作を起こされている方がおられますし。

 え、薬物ですか…。いえ、全くそのような兆候は有りませんでしたよ…。ええ、
永琳先生自らが担当していらっしゃったので。そのようなことは全く有りません。
全く酷い言いがかりですね。確かにそのような精神に悪影響を与える薬物はありま
すが、それは大変デリケートなものですよ。ええ、絶対にそのようなことはありま
せん。唯の妖怪が適切に、そのような薬品を使用することは出来ません。「唯の」
妖怪では絶対にです。

 あら、師匠に姫様ですね。お揃いでいかがされましたか…。その方を地下資料室に
ご案内ですか…。ええ、分かりました、仰せの通りに致しますね。それではちょっと
失礼しますね。私の目を見て下さいな…。


3 外来人○○に対する取り調べ

 はい、私が○○です。職業は外来人です。え、それは違う?そうですか…。以前の
世界では学生をしておりましたが、最近此方の世界に取り込まれまして。たしか幻想
入りと皆様は仰るんでしたっけ。
 そうです。確かに私は文様と椛様から保護されておりました。それに相違は御座い
ません。お二人とも私に対して非常に強く思われていた、掻い摘んで言えば執着して
いたこともまた事実で御座います。
 どうして二人がああなったかですか…。貴方も分かってらっしゃるんでしょう?!
あのお二人が修羅場になったからですよ!修 羅 場 !

 ええ、すいません取り乱してしまいました。申し訳御座いません。私が二人とも受
け入れたことが原因だと…。たしかにそうですね。でもそうするしかなかったのです
よ…。唯の外来人が、人外の怪物に敵う訳ないじゃないですか…。貴方も知っている
んでしょう…。監禁、拘束、暴力、薬物、どうあがいてもこれじゃ無理ですよ!
 ねえ、貴方達天狗はこうすることが当たり前なのですか!人を監禁して、無理矢理
×××して、抵抗すれば殴って!もう、嫌なんですよ、あの生活は…。

 うわぁ!御免なさい!すみません!スミマセン!


4 花果子念報記者による当部署への抗議について

 全く、何をしているかと思えば○○さんが怯えているじゃないですか…。一体どん
な無茶な事をしたのですか。幾らあのお二人に色々あったからといって、こんな事は
断固抗議します。今すぐこの件について手を引いて下さい。
 何ですか…?私を見てから○○さんが怯えたと…。言い掛かりも甚だしいですね。
私はただ、可哀そうな○○さんを保護しているだけですよ、「保護」です。全く、
貴方達が色々しっちゃかめっちゃかにしているのは、こっちの耳にも入っているんで
すから。先程も永遠亭から、調査から帰った天狗が迷いの竹林で死亡していたと連絡
が入りまして、私が「わざわざ」応対していたのですよ。
 そういう訳で、これ以上は何も無かったということで。お二人は偶々運悪く、体調
不良の為に長期療養ということになったと、ついさっき大天狗様からの決定が来まし
たから。はい、この書類ですよ、しっかり印が有るでしょう。

 まあ、結局真相は外来の小説にあったように、藪の中と言う訳ですよ…。
 ええ、永久にそう「なる」んですよ。

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最終更新:2017年01月10日 00:05