生きるって、何て素晴らしいんだろう。
単調だとつまらないけど、いつも変化のある日常を過ごせば、飽きなんてこないんじゃないか。
○○「おはよう、、妹紅。」
妹紅「おはよう、○○。今日も寒いわね。」
本格的な冬の空、人里、昼時。ここに薬を売りに来るやつがいる。
○○、外来人だ。
無口だけど優しい、自分より他人を優先するやつだ。
ちょっと前に迷い込んで、永遠亭の住人に気に入られて、いまは住み込みで働いてるらしい。
○○「風邪ひくなよ・・・ここは忘れられた病原体とかいるかもしれないから。」
妹紅「フフ、蓬莱人は風邪ひかないわ。」
そんな○○に、ちょっと私は引かれていた。
○○「へぇ・・・そんなことがあったのか・・・」
妹紅「そうなのよ、慧音ったら、早とちりしやすいのよね、真面目なだけに。」
私は、いつも薬を売りに来た○○と一緒に昼食を食べる。
毎日薬を売りに人里まで来る○○と一緒の昼食、私のひそかな楽しみである。
○○「確かにちょっとね・・・早とちりであの頭突きはたまらないよね。」
慧音「ほぉ、それはすまなかった・・・」
妹紅「すまなかったじゃすまな・・・!?」
○○「お題は済ませてあるから、妹紅、じゃあまた。」
そういって店から出ていく妹紅。
妹紅「う、裏切ったな!私を裏切ったな○○!」
慧音「お仕置きの時間だ・・・」
妹紅「キャーーーーーー!!!!」
スコーン!!と、いい音が響いた…
妹紅「・・・慧音ったら、手加減くらいしなさいよ・・・」
今は痛くない額をさすりながら竹林の我が家に戻る妹紅。
しんしんと、静かに雪が積もる中で、サクサクと音を鳴らしながら竹林を歩く。
?「~・・・~~~・・・」
?「~~~~・・・」
妹紅「ん?」
不意に、耳に話し声が聞こえた。
耳のいい私だからこそ聞こえるような、とても小さな声。
妹紅「妖怪が何か企んでるのか…?」
怪しいので接近して声のもとに近づいて言った。
妹紅「なんだよ…永遠亭じゃん・…」
ガクンと肩を落とす。頭突きに動揺しすぎていたようだ。
妹紅「無駄骨食ったなぁ…かえろ…」
足を百八十度反転、そのまま家を目指そうとしたそのとき、
鈴仙「・・・なんです!!」
妹紅「!?」
妹紅(いまのって、鈴仙の声だったな・・・
~~なんです・・・最初の方よく聞こえなかったけど・・・)
怪しいと思って、声の方に向かい、塀をよじ登ってのぞいてみた。
妹紅(よいしょと・・・鈴仙と・・・○○?)
ほんの少しだけ目を覗かせて、その様子を伺うと、顔を真っ赤にさせた鈴仙と、茫然としている○○がいた。
鈴仙「あの・・・ちょっと前から・・・好きだったんです!」
妹紅「!?・・・」
思わず声を上げそうになって顔を引っこめる。
今聞こえた言葉・・・鈴仙が好きですって・・・
誰に?○○に。
どんな意味で?態々言うくらいだから・・・
どんどん頭の中で式が組みあがっていく。
それが私にとっては喜ばしくないことだとわかっていても・・・
妹紅「・・・(○○は…○○はどうなんだ・・・?)」
もう一度顔をのぞかせたそこには・・・
○○と鈴仙の抱き合う姿があった・・・
そこから先はよく覚えていない、無我夢中で家に戻って、いま布団の中でいろいろ考えている。
妹紅「・・・○○と・・・鈴仙は・・・お互い好き・・・恋人・・・」
理性が、それを祝おうと声を上げる。
欲望が、いやだいやだと声を上げる。
○○はちょっとくらいしか、そういう意識はないと思ってた。
でも、気づいた時には遅かった、その気持ちは、大きすぎてきづかなかったんだ。
私は、○○が、本当に本当に好きだったんだ・・・
妹紅「う・・・うぅ・・・」
不思議と涙がこぼれてくる。
それと同時に心に浮かぶ、黒い感情・・・
○○は幸せになれるのか?あんな月から逃げてきたウサギと?
慣れないとは言わない、過去の罪はなくすことはできなくても忘れることはできる。
でも・・・でも・・・
妹紅「私が・・・私の方が・・・」
ウサギヨリツライオモイシテル。
サベツヲシナイ○○ナラ・・・
ヨリツライホウヲナグサメテクレルヨネ?
鈴仙「・・・」
てゐ「元気ないね鈴仙。」
朝食時、うつろな表情で朝食を食べる鈴仙。
輝夜「ごちそう様・・・そういえば○○は?」
鈴仙「!!・・・」
永琳「・・・○○?○○なら人里へ行きましたよ、○○、今日は早く行きたいんですって。」
○○と単語が出るたびに、体をびくりと震わせる鈴仙、それを見てゐが思わず、
てゐ「どしたの?」
と聞くほどに過敏な反応だった・・・
鈴仙「・・・昨日・・・○○さんに、告白したんです・・・」
一同「!!!!!!」
てゐ「そ、それで、それでどうなったの!?」
野次馬根性むき出しでていが問うてきます。
鈴仙「・・・ふぇぇ・・・」
それと同時にポロポロと泣きだす鈴仙。
てゐ「!!・・・アー・・・結果分かった・・・」
永琳「あー・・・うどんんげ、無理しなくてもいいわ・・・」
輝夜「それで、どうなったの!?」
パシーンと永琳が輝夜の頭をひっぱたきました。
鈴仙「昨日・・・裏庭で告白したら・・・俺には別の好きな人がいるって・・・だからごめんん・・・・って・・・」
とぎれとぎれでかろうじてつながる言葉。
一同「・・・」
全員が言葉を失います。
鈴仙「それで・・・ずっとがダメならせめて今だけって・・・抱きしめてもらって・・・それで余計に辛くて・・・」
声を静かに上げて泣き出す鈴仙。
永琳「・・・うどんげ・・・今日と明日、あなたの修行休みにするわ、元気出してちょうだい。」
かろうじて月の頭脳が振り絞ってはなった、精いっぱいいの優しい言葉でした。
妹紅「ああ○○・・・ちょっといいかい?」
○○「妹紅・・・どした?」
雪も降らず、冬にしては日差しの暖かい日、妹紅といつもどおりに会話を始める○○。
ちょっと時間が早いだけの日常・・・
妹紅「大事な話があるんだ・・・ちょっと一緒に来てくれない?」
○○「え?ああ・・・」
そういう妹紅に連れられて、人里の方へとあるいていく○○。
その日、○○は永遠亭に帰ってこなかった。
翌日、てゐと鈴仙が人里で慧音に話を聞くと、
昨日急に失踪詳細不明、としか帰ってこなかった。
それでそれはそれは大騒ぎになった。
みんなでそこらじゅうを探索したが、布の一片も見つからなかった・・・
妹紅に聞いても、竹林では昨日は見かけなかったと以外は知らなかった。
目撃情報もなし、まるで神隠しのようだ。
永琳「・・・普通の人間が、竹林を一人で歩いて今まで襲われなかった方が不思議よね・・・」
自らの無知を悔いるような永琳。
てゐ「○○・・・」
さびしそうな表情のてゐ。
鈴仙「・・・」
ただ涙を流し、立ちすくむ鈴仙。
輝夜「・・・」
何かを考えるような輝夜。
結局、○○は見つからなかった・・・
妹紅の家・・・
妹紅「ふふ・・・アハハハハ!!」
その地下室で、妹紅は、高らかに笑った。
妹紅「本当に、いまは最高の気分だわ!」
その地下室は薄暗くてよく見えなかった。
そして、壁から伸びる鎖の先に、
○○がつながれていた・・・
眠ったようにうなだれる○○を抱きしめる妹紅。
妹紅「今まで輝夜との殺し合いっていう人間らしい生活を送ってきて、そしていま私は・・・・恋人を手に入れたの・・・」
その眼には光りどこにも宿っていなかった。
妹紅「正直者は馬鹿を見る・・・略奪起こすくらいのが、人は幸せになれるのさ・・・」
○○から離れ、家の外へと出ていく妹紅。
しんしんと雪が降る中で、空を見上げた。
妹紅「恋人がいて、ますます人間らしい生活ができる・・・」
そして、その両手を広げ、空を泳ぐような姿勢になって、こう言った。
妹紅「ああ、生きているって、何て素晴らしいんだろう・・・」
心底そう思っているような声だった。
最終更新:2010年11月18日 23:57