幼いころ幻想郷に迷い込みしばらく面倒を見てもらった、しかし何らかの要因で帰ってしまったあなた。その4
でもまた何故か幻想郷に戻ってきてしまった!
そんな時の彼らの反応とは…
「春ですよ~春なんですよ~。
そこの人間さんも春ですよ~?
おや? もしかして君は○○くんではないですかー?」
「おかしーですねー?
確か以前会った時は私よりもちっちゃかった気がしますが…。
ああ! これが大人と言うやつですね!!」
「○○は大人になれたんですねー! おめでとー!!」
「ところで○○は今何をしてるです?
お仕事ー、ほほー。
私も何かお手伝いできるですか?」
「畑に種植えですか、簡単そうですね!
任せて下さいっ!!」
「いやー、結構大変でしたねー。
ところで○○はどうして働いているですか?」
「あー、帰るための方法を探しながら働いているんですかー。
じゃあ、私も手伝いますっ!
きっとあっちこっち探していればそのうち見つかりますよ!」
「あれ? 帰るってどこに帰るんでしょう?
お家にはいつも帰ってますよね…?」
「懐かしーですねー。
昔はよく○○を背中に乗せて空を飛んだりしてましたね。
今は…私の背中に乗せるのは無理そうですねー…」
「今もそれが出来ればそらから探す事も出来るんですが…
まー、しょうがないですよねー」
「それにしても、やっぱり○○と過ごす春は楽しいですね!
○○の横に並んで歩いているだけで春を感じます!!
ん? どういう春なのって…? うーん、分かりません!!」
「あそこに見えるは○○ですね!
…あれ? 何か女の人と一緒にいるです?」
「何ででしょう? 春を感じませんね。
ほの暗く、いやな気持ちがわき上がりますです」
「○○! 昨日の女の人はどちら様ですかっ!?
アレですか? 春にうつつを抜かすなんとやらですか!?」
「ほぉ、外に帰る方法を教えてくれた!
ところで外ってなんなんです?」
「え? 外の世界に帰るってことは私から離れるってことです?
え? ○○、私の傍からいなくなっちゃうですか?
ま た ?」
「だーいじょーぶでーすよー!! ○○さーん!!
大人しく出てきてくれれば何もしませんよー!!」
「むー…森の中に隠れられると中々難しいものがあります…。
でも大丈夫です! おねーさんがしっかり見つけてあげるですよー!!」
「うえーん!! どこを探しても見つからないですー!!!
○○帰っちゃいやです―!! いなくなっちゃいやですー!!」
「むー…あれ? ○○どうしたですか? 自分から出てきてくれたですか?
なになに…お姉ちゃんがあまりにも情けないから…?
う、事情はともかく、お、おねーさん感激ですっ!!」
「お姉ちゃんは感激です! 感激過ぎて…」
「一 生 外 出 禁 止 で す よ ♪」
「…あれー? 人間がこんなとこに…。
まさか私の毒に侵されちゃったかなぁ…。
スーさん、何か知ってる?」
「うーん…それにしてもどこかで見た様な顔だけど…?
とりあえず、家まで連れて行こう」
「やあ、大丈夫かい?
おはよう、私の名前はメディスン。
君の名前は?」
「へー○○…え? ○○?」
「…私の事覚えてるかな?
確か…結構前に遊んでた事あったと思うんだけど。
そうそう、突然フラーっといなくなっちゃってびっくりしたよ」
「それにしてもどうしてここに…?」
「ああ、最近流行りの外来人って存在は君みたいな人の事を言ってたんだね。
良く分からないまま戻って来ちゃったんだ」
「まあ、良く分からないけど久しぶりに会えたし一緒に遊ぶ?
え、仕事探し…? ああ、帰るために…そういうこと」
「やあ○○、無事にお家もお仕事も見つけられたそうで。
これからお仕事大変そうだね」
「君さえ良ければ私も手伝いたいんだけど、何かないかな?
いや、人間たちの事も知っておかないといけないし、
何よりも幼なじみみたいなものだしね!」
「で、お勤め先は?」
「へーお薬屋さんね…永遠亭があるのに…。
まあ、あそこの薬、効果は抜群だけどちょっと高いらしいからね」
「多少効果は薄くとも安い方が良いってこともあるのかもね」
「あ、○○がカゴ背負ってどっか行った。
花か薬草でも採りに行ってくるのかな。
1人だと見ていて心配だし付いていこっと」
「やあ○○、1人で薬草摘みは大変そうだね。
良ければ私も手伝おうか?」
「大丈夫だよ、そう周囲を警戒しながら作業しなくても。
私の能力で下っ端妖怪程度なら近寄って来ないように出来るから」
「それにしても薬屋さんねぇ…他に働き口なかったの?
昔あれだけやんちゃだった君ならもっと大工とか色々あったと思うんだけど」
「…ずいぶん大人しくなったんだねぇ。
私は特に変わらないけど」
「とりあえず終わったのなら戻ろうか。
大丈夫、帰りも付いてるから」
「やあ、お疲れ」
「君が仕事をしているを見るのは楽しいね。
それに、人間の文化とかそういうのを学ぶのにもちょうどいい」
「そういえば、君が行方不明になっていた間にね、
恋愛っていう文化について知ったんだ」
「どうやら男の人と女の人が仲良くなる文化らしいんだけど…知ってる?」
「ふーん、外の世界でも同じなんだ。
でさ、2人でお出かけする事をデートって言うらしいんだけど」
「君のお仕事休みにさ、そのデートって言うのをやってみたいんだよね。
ほら、人間の文化って実際に体験しないと分からないだろうし」
「分かった、じゃあそれまでにもっと詳しく調べておくねー」
「こういう時は人里で見たり聞いたり、
本で読んでみるのがいいのかな」
「ふむ、男女が仲良くなる…」
「仲良くなる…恋仲になる…?」
「恋仲になる…夫婦…?」
「一生…一緒…?」
「ずっと…一緒…?」
「おはよう○○。
今日は確か休みだったよね?
よし、じゃあ行こうか」
「…あ、デートスポットっていうの、
幻想郷だとどこだか良く分からないから、
とりあえずスーさんのところで良いかな?」
「もう少し安全な所とか知ってれば良かったんだけどね…」
「あ、気を付けてね。
スーさんには強い毒があるから。
触るのも、もちろん食べるのも禁止だよ?
…子供じゃないから流石に食べたりはしないって?」
「綺麗だよねー、スーさん。
白くて鈴みたいで。
これで触ると強力な毒があるーとかじゃなければ、
君みたいな人間にとって安全で良いのにねー」
「覚えてる?
君が子供の時にここにやってきた時、
スーさんに触ろうとした君を慌てて止めたんだよ」
「そのとき君はなんでー?、って顔で私を見てたよね。
私もあの時説得するのは大変だったよ。
でも、あの時君がスーさんに興味を持ってくれたから私たちは幼なじみになったんだよね」
「そもそもあの時は君が私を怖がらない理由が良く分からなかったなあ。
君が一番最初に会ったのが私だからかな?」
「その後は確か、私の家に泊めてあげてたよね。
今は君の仕事もあるから強くは言えないけど、
私は君が泊まりに来てても気にはしなかったんだよ?」
「うーん、デートってこういう感じで良いのかな?
うん、私は色々お話できて楽しかったけど」
「じゃあ、また今度お話ししに来ようか。
それとも君がデートスポットって奴を探してくれる?」
「よし分かった、君の調査結果に期待するよ!」
「○○は昔と比べて大人になったなぁ…。
何だか話しているだけでも楽しかったなぁ」
「それにしても今度は○○が私を連れてってくれるんだ…楽しみだなぁ。
どこに連れてってくれるんだろ?」
「あ~次の○○のお休みが待ち遠しいなぁ」
「やあ○○、お薬の材料で少々お困りの様だね。
でも大丈夫。
私について来ればいい場所を知ってるよ!
もちろん、店主にも教えてあげてね」
「それにしても繁盛って程ではないにしても結構人気なんだねぇ。
○○がいるからなのか、それとも薬の出来が良いのか…。
ま、多分両方だよね!」
「あれ、おはよう○○。
君が私の家に来るなんて珍しいね…えっ! お休みだから迎えに来たの!?
私すっごい嬉しい!」
「でもそれなら私に予め言ってくれれば…
驚かせるためにワザと黙ってたって?
むー…でも嬉しいから良し! で、どこに連れてってくれるの?」
「わぁ…これおいしい…。
へー、これが団子って言うんだ」
「凄い風景…氷がいっぱい、水がいっぱい…。
これが綺麗って言うんだ」
「ねぇ○○、私、気になる事が有るんだ」
「外来人って外から来た人たちの事なんだよね?
それってつまり、どこか違うところから来た人たち、なんだよね?
ってことは…○○もいつかは元の場所に戻りたいってことかな…?」
「そ、そうだよね、初めに帰るために働く、って言ってたもんね。
ごめんね、いきなり」
「人間ってさ、恋愛をするといつか恋仲になって、
夫婦になって、一生一緒になるって本で読んだんだ」
「私と○○って、人間同士じゃないんだよね。
そういう場合に恋愛をするとどうなるのかな?」
「…うん、人間と妖怪でも同じようになりそうなことくらい分かってる」
「うん、自分でも良く分かってないんだけど多分、私は○○の事が好き。
でもさ、○○は外の世界に帰りたいんだよね。
じゃあ、私が○○と仲良くなるってことは○○の事を邪魔するってことになるんだよね」
「もちろん、○○の事は好きだよ。
でもそれが○○を縛っちゃうことになるのは…うーん…」
「ねえ○○、私は君とずっと一緒にいたいと思う。
でも君は外の世界に帰りたいと思ってる」
「私はどうするべきなのかな?」
「…今日は○○に色々ぶつけちゃったな。
○○も悩んでるだろうな」
「○○は帰りたい、でも私は帰したくない。
でも帰りたいという○○の意思は邪魔したくない…」
「だったらもう…○○に選ばせるしかないのかな」
「…スーさんの周辺に良く見えるように毒を散布して、
私はここにいよう」
「○○が来たら…呼び止めてみよう」
「私はどっちでもいいよ○○?」
「でも、もし君がこの毒を恐れないなら…
もし君が外を捨てて私を選ぶのなら…」
「外 の 事 は す っ か り 忘 れ て
一 生 一 緒 に な り ま し ょ う ?」
幽花
「あら…花畑にちょうど花を下敷きにしないように人が倒れてるなんて、
ずいぶんロマンチックな生き倒れね。
でもこの領域に入っている以上、不届き者である事に変わりはないし、
ちょっと家で話を…まさか」
「あなた、○○? ○○なのね?
おかしいわね…確かあなたは1ヶ月くらい私の庭で遊んだ後、帰ったと思うのだけど」
「何? 外の世界で山で友人と遊んでた際に崖から落ちて気が付いたらここに居た?
あなたねえ…もう少し危機感持って遊んだらどうなの?
まあいいわ、また1月くらい過ごしてから帰るの? どうするの?」
「久しぶりに風見さんに会えたからまたお話ししたいなって…
中々良い口説き文句じゃない? 年取って変わった?
…あ、別にそう意識して言ったわけじゃないのね。
あ、えーと…うん落ち着いて? うん、お姉さんは別に気にしてないから」
「ふーん…外に戻ってからあなたにも色々あったのねぇ…。
あら、恋人も出来たの? おめでとう」
「私の方?
別に昔と特に変わってないわよ?
そうね、住居が魔界から幻想郷に移ったくらいじゃない?」
「そうよ、だから昔と景色が違ったのよ。
まあ、私は魔界にあなたがやって来た理由の方が謎だけど」
「ところで恋人ってどんな人なのかしら?
いえ…ちょっと気になったから…ね」
「やっぱり花が似合う人なのかしら?
それとも強い人? 優しい人?
…あら、写真を持ってるのね。
見せてもらえる?」
「綺麗で花の似合う人ね…ちょっとお姉さん妬けちゃうな」
「ねえ、覚えてる?
この向日葵はあなたが短い間とはいえ育ててたものなのよ」
「他のと変わりないように見えるって?
よく見てみなさい。
あなたの向日葵は他のと比べて少し鮮やかなのよ」
「全然分からないって?
じゃあ分かるように違いを徹底的に教えてあげようかしら?」
「懐かしいわね…昔は2人で如雨露を持って
あちこちの花に水やりをするために歩き回ってたわね」
「歩くのが辛くなったら私に捕まって空を飛んでたりもしたわね。
他にも空から水を振りまいて虹を掛けてみたり」
「あんなに可愛かった子供が、こんなにカッコ良くなって再会できるなんてね」
「ねえ○○。
私があなたの事が好きって言ったらどんな反応を返すのかしら?
…あらまあ、ずいぶん綺麗な赤いバラが咲いたわね」
「もう一度、ハッキリと言わせてもらうけど、私はあなたが好き。
どう? 憧れかどうかは知らないけれど、お姉さんからの告白は?」
「どれくらい好きかって? またなんか陳腐な質問ねぇ…
そうねぇ、魔界を滅茶苦茶にしちゃうくらい、かしら?
あ、これ事実だから」
「あなたがいきなりいなくなった時、私はすごく悲しかったわ…。
大切な家族みたいな存在が突然置き手紙1つ残さず消え去ってしまうんだもの。
慌てて魔界中を探したわ」
「でも結局、あなたは見つからなかった。
そんな時に幻想郷という世界がある事を知った。
そして、そこには外来人が時々訪れてくることも」
「私は大慌てで幻想郷に行こうとしたわ。
みんな、簡単には許してくれなかったけどね。
やってくるかどうかも分からない存在相手にどうしてそこまで固執するのかとか、
それだったら私がその子の代わりになる存在を創造するわ、とか。
まあ、なんやかんやでみんなを説得して、花畑を移してここに住んでいるという訳」
「そこからまた長かったわ…どれだけ待ったのかしら。
ねえ? まるでおとぎ話みたいでしょう?
来るかどうかも分からない片思いの相手を待ち続けるなんて…」
「でも実際に待ってみたら、
意外と早く願いは叶ったわ…本当に、まるで奇跡よね」
「ねえ○○? 私の告白への返答はどうかしら?
イエス? それともノー?
…まあ、あなたは帰りたいし、既に彼女がいるのだから当然ノーよね」
「じゃあ、残りの期間の間にあなたが帰りたくなくなる様にしてあげようかしら…?
うふふ…冗談よ?」
「長いようで短い1ヶ月だったわね…名残惜しいわ。
じゃあ、さような…あら、どうしたの○○?
花が妨害してこれ以上外に出られないって?」
「ああ…私の妖力の影響を花も受けちゃってるのね。
でも、あまり気にしてなかったけど最終的にこんなに凄い事になるのね…
これじゃあ私にも操るのは難しいわ。
それにしても帰れないんじゃ残念ね…じゃあ、どうするの?」
「花 が 枯 れ る ま で こ こ に 居 る ?」
小町
『やあ小町さん、今日はどうしたんで』
「あー、あたいは別にどうもしてないよ。
いつも通りサボって怒られる毎日さ」
『やれやれ…それなら真面目に仕事してりゃあいいのにね』
「まあいいじゃないさ、そんなの。
じゃあ大将、いつものお願い」
『はーい…。
○○ー!! 俺は仕込みをやっとくから代わりに接客頼むー!!』
「○○だって!?」
『ん、どうしたんで』
「いや、なんでもないよ」
「ふーん…あのちっこいのが大人になって居酒屋で…ねぇ」
「そもそも今まではどこに居たんだい?
まさかずっと幻想郷に居たわけでもないんだろう?」
「あー…またこっちに来ちまったのか。
なるほど納得。
まあ後の詳しい話は仕事終わりにでも聞くさ。
大将! ○○は何時仕事終わり?」
『ああ、別にお持ち帰りでもいいよ。
どうせあと数刻もしないうちに仕事は終わりだ』
「分かった、じゃあ借りてく」
「で、これからはどうするんだい?
帰るのか、ここに残るのか。
その目は…帰りたいって目をしてるね
じゃあ、昔馴染みのお姉さんからのアドバイスだ。
困った時はあたいに相談しろ、いいね?」
「まあ、巫女に納める金子のために頑張って働きなよ」
「それにしても懐かしいね、
昔はよくサボって遊んでやってたもんだが。
流石にそんなに大きくなると遊ぶわけにもいかないしね」
「なんだったらアレかい? いっそあたいと大人の遊びって奴でもやってみるかい?
あーっと、大丈夫か? 冗談だよ冗談」
「それにしてもあんたウブだねえ…
その様子じゃあ外の世界でも散々からかわれてるんじゃないか?」
「まあいいや、今日はこの辺で。
そろそろ仕事に戻らないとえーき様に怒られるし」
「やあ○○。
仕事はどうしたって? サボったに決まってるじゃないか」
「あたいだってさー、いちいち死者を渡すのもつまらないんだよ。
あいつら話しても基本的に何も返さないし。
気の利いた冗談を言ってもクスリとも笑わない。
もう少しやりがいがあるならあたいだって頑張るさー」
「ん? 相談したい事があるって? 良いよ別に。
何があったのかお姉さんに話してごらん」
「店に居る時の客以外、人がほとんど寄り付かない…ねえ。
まあそりゃあ、お前さん外来人だろう?
珍しい人がくりゃあ、誰だって気軽には声は掛けられないさ」
「ん? そもそも人影すら見ないって?
それはね…きっと顔どころか姿を見るのすら恥ずかしいんだろうよ。
いやーまさか幻想郷に2度来たらモテモテになるなんてねー!」
「まあお姉さんに任せときな。
怪しいのがいたら博麗の巫女じゃないけどとりあえずボコボコにしといてやるから」
「いやあ、やっぱりお前みたいに表情がころころ変わるやつと話すのが一番楽しいね。
えーき様は何か言うと説教が帰ってくるからね」
「っと、そろそろ戻らないとまた怒られるだろうし、じゃあね」
「なあ○○、そろそろ金子もたまったんだっけ?
じゃあ、そろそろ幻想郷ともお別れってわけだね」
「じゃあ帰る前にその…お姉さんからの大事なお知らせを…」
「○○、あたいはお前の事が好きだ!!
だから、あたいとしてはお前には帰って欲しくない!
お前の優しさが、表情が、全部が好きなんだ!!」
「こんな怠け者なあたいでも嫌いにならずに受け入れてくれるお前が好きなんだよ…」
「…でも、お前は帰りたいんだよな。
それなら…せめてあたいに見送らせてほしい…」
「…ごめんな○○。
お姉ちゃん、突然こんなこと言って…」
「なあ○○…博麗神社ってこんなに遠かったっけ?
おかしいよなあ、鳥居は見えるのに全然近づいてこない。
それなのに休憩がてら人里に戻る時は一瞬で帰ってくる」
「おかしな話だよねえ。
まるで蜃気楼みたいだね」
「しょうがない。
今日は妖精のいたずらでもされてるんだろう。
明日また行くかい?」
「よし分かった。
明日、時間が空いたら迎えに行くよ」
「…おかしなもんだね。
妖精ってこんなに手強いものだったっけ」
「お? 走ってみる?
いいね、妖精たちとあたい達のどっちが強いか根比べといこうじゃないか」
「…ダメみたいだね。
どうする、まだ頑張ってみるかい?
そうだね、帰るためにあたいと2人で今まで頑張ってきたんだからね」
「え? あたいは助言者として頑張っただろう?
何にも間違ってない…よねぇ?」
「…しょうがない、あたいに捕まりな。
地上からでダメなら空中からならいけるだろう…。
あ、ほら問題なく行けた」
「おーいごめんくださーい…。
えぇ? 博麗の巫女が掃除する姿も見せないなんて…。
ちょっと、あたいよりサボっちゃいけない存在だろうにマズイじゃないのさー!!」
「えー…反応なしって…あたいよりひどいサボり様じゃないか。
これじゃあ帰るに帰れないね…
どうする? また今度適当な時にでも来ようか」
「距離を操って、
帰るために必要な人物と会えない様にしていても諦めないなんて…。
中々○○も頑張るねえ…」
「まあ、だったらあたいもとことん折れるまで付き合おうか」
「寿命が尽きていつかあたいの元に来るか、
それとも諦めてあたいを今受け入れるか」
「ど っ ち を 選 ぶ か 楽 し み だ ね え」
映姫
「こら! そこの人間、そんな所で寝ていては…
ふむ、寝てるわけではないようですね…。
これは、助けるべき存在ですね」
「おや、目が覚めましたか。
あなたの名前は……○○!?
あなたが一体なぜここにいるのですか!?」
「ほう…何やら分からないうちにこちらに戻ってきた、そういうことですか。
しかし、これからどうするのです?」
「ああ、帰るのかここに残るか、ですよ」
「帰る…ですか。
仕事のあては私の方でも探してみましょう。
見つからなければ私の補佐でもお願いしますね」
「ああ、住居は私の家で構いませんよ。
家賃も取りません。
少しの間とはいえ、弟のように育てた人が頑張ろうとしているのに
その足を引っ張るような真似はしません」
「ともかく本日は大変でしたでしょう。
それではお休みなさい」
「結局私の補佐になってしまうとは、
我ながら不甲斐ないですね…」
「何か良さそうな仕事でも、と探してはみましたがどうも自警団くらいしか見つからなく…
さすがに何の武器もないあなたには危険過ぎましたので、結局こうなってしまいました。
申し訳御座いません」
「まあ、基本的にはなんでも私が行いますので
あなたは私の傍にいて下さい。
何か私の対応で誤った点が有ればそれを報告する、その程度で構いません」
「…休憩時間ですね。
少し、昔話をしてもよろしいでしょうか」
「あなたと初めて会った時、私は久しぶりに命というものを実感しました。
私は閻魔。
魂1つ1つの罪の重さを計り審判を下すもの」
「そんな毎日を過ごしていたら、
いつの間にか命とは何なのかが分からなくなってしまいました。
生きているという事は命がある、でもそれ以上に命は大事なものなはずなんです。
それを…忘れてしまった」
「でもあなたと会って命の意味についてまた思い出せたような気がしたんです。
命とは活力であり、生きる意志そのもの…。
そして…育まれていくもの」
「他にも色々知りました。
恋焦がれる気持ち、他人を慈しむ気持ち。
あなた…いえ、正確には子供の頃のあなたは
私が見失っていたものを思い出させてくれた存在なんです。
その他にも…」
「そして今、あなたが帰って来て…
あ、いえ、もうすぐ休憩時間が終わってしまいますね」
「本日はこれから人里の方に視察に行く予定です。
あなたもきちんと見て回るように。
小町の様にサボったら容赦はしませんよ?」
「懐かしいですね…あの頃私に付いてきていたあなたが
今や部下という存在になるとは…」
「あ、そういえばこの辺に部下たちの中でも評判の店があるらしいので、
休憩時間になったら寄ってみましょうか」
「どうしたのです…ってこら!」
「今は職務中ですよ? 女だからと目を奪われてはいけません。
もしかするとあの女は色香であなたを惑わし我々の審判から逃れようとしているのかもしれません…!」
「全く…あなたが男性とはいえ困ったものですね。
それとも私に色香がないのが…ブツブツ」
「…ふむ、たまには団子を食べてみるのも良いものですね。
あなたと2人で食べているからこそ、余計においしいのかもしれませんね」
「私らしくない…ですか?
確かに私は厳しい仕事人ではありますが、
女性らしさを失っているわけではありませんよ」
「それに最近は逆に小町がしつこいのです。
たまにはのんびり仕事をしてみたらどうです、と」
「部下にそこまで言われるならば、と思いましたが、
流石に1人で茶屋にいるのも変ではないか、と言う事で誘ってみたわけです」
「そういえば○○に聞きたい事があったのですが宜しいでしょうか?」
「そうですね、別に難しい話ではありません。
至って単純な質問です」
「私の事は好きでしょうか?」
「大丈夫ですか? お茶は吹き出しましたし顔が赤い様ですが」
「ええ、回りくどい言い方をしてお茶を濁されるくらいなら
いっそ直球で質問した方が早いかと思ったのですが」
「で、質問の答えはどうでしょうか。
そうですか、私…○○に選ばれたんですね。
閻魔ではありますが女として嬉しい限りです」
「え、何でそんな質問を、って…
まあ、それについてはまた後ほど」
「さて、また視察のため歩いて回りましょうか」
「本日も私の補佐、お疲れ様でした。
毎日毎日私の傍で私を監視して下さり有難うございます」
「いえ、自分では問題ないと思っていても
もしかしたら他人から見ると職務を全う出来ていない可能性がありますからね」
「…自分は、本当にこのままで良いのか、とか。
他にもやりようがあるのではないか、とか」
「だからこそ、こうして監視役が付いていると気を引き締められます」
「そういえばいつかの質問についてですが、
私も白黒ハッキリ付けようかと思います」
「○○さん、あなたが好きです。
愛しています」
「えぇ、あなたが帰るために頑張っているのは存じています。
ですが私の中で浮き立つこの思いをそのままにはしておけず、伝えた次第です。
私らしくない方法ではありますが…」
「私とあなたは両想い…これで白黒ハッキリついたわけですね」
「さて、これであなたは帰れなくなりましたね。
何故って?」
「閻 魔 さ ま に 嘘 を 付 い て
無 事 で 済 む と 思 う の で す か ?」
最終更新:2022年10月23日 00:15