以下は、私が金髪の少女に話したジョークの内容である――。
ある日、ジェフとアンディという二人の男が旅に出た。
二人はキレイな綺麗な満面の星空の下、テントを張って眠りについた。
二人が就寝してから数時間後、まだ暗い時間にジェフがアンディを起こして、聞いた。
「アンディ君…、今、上を見て君はどう思うか聞かしてくれ」
アンディほ少し考えた後「無数の星が見える」と答えた。
「では、そのことから何が分かるかも聞かして欲しい、アンディ君」
アンディはまたも少々の間をおいてから答えた。
「この大宇宙には何百万もの銀河と何十億もの惑星がある。占星学的に言えば、土星が獅子座宮に入っている。
測時法で言えば、今はだいたい午前3時15分…。神学的に言うと、神は全能で、ぼくたちはちっぽけで取るに足らない存在だ。
気象学的に言えば…明日はきっといい天気になるよ」
この答えを聞いたジェフは、アンディの答えを静かに否定してから、苦笑いをしながら真実を告げた…。
「違うよアンディ…、正解はね…僕たちのテントが盗まれてしまったんだ!」
私がこの話をすると、長い幽閉で娯楽に飢えていたからであろうか、少女は、さぞ面白そうに笑った。
手をパチパチと叩き、椅子をカタカタと鳴らし、キャッキャッと高い声を出しながら…、それはモウ楽しそうに…。
私がこの少女から、生粋の少女の天真爛漫さを感じた初めての瞬間であった…。
「アハハハハハハハ ア――ッハハハハハハハハッハハハ…。面白い、アナタ面白い人ね。約束した通り、命は奪らないであげるわ…
その変わり、アナタを壊さない代わりに…モットモット面白い話をしてよっ!とびっきりオモシロイのを!」
私は少女のこの答えを聞いて、心の底からホッとしたのを、今でも覚えている…。
しかし他でもない、この少女との始めての会話が――全ての始まりであったのである。
私はこの日以来、晴れて幻想郷に迷い込んで初の、祝就職ということになった。
仕事内容は、495年幽閉された金髪の少女…吸血鬼フランドール・スカーレットの子守兼教育係。
つまり、
レミリア自身ハタハタ手を焼き、厄介払いに軟禁した狂人の世話係を――――ジキジキに任命されたのである。
私はその後さまざまなジョークや笑い話を金髪の少女の眼前に展開していった…。
朝目が覚めるとムシになっていた男の話
先生という人物の恋と友人Kに対する嫉妬のエゴイズムの話
男が河童の国に迷い込む話(この話は幻想郷に迷い込んだ私には何かクルものがありました)
哀れな金貸しのユダヤ人が苛められる話
本の上にレモン爆弾を置く話(この話は少女はあまり好きではなかったようでした、少女曰くつまらないと…)
二人の少年が銀河鉄道なるものを旅する話
ダンテなる人物が詩人ウェルギリウスと共に地獄、煉獄、天国と彼岸を巡る話
人間の生活をユーモアたっぷりに語る猫のエッセイ
U・N・オーエンなる者の手紙により集められた10人の男女が次々と消えてゆく推理小説
………等々、全て羅列すると上記の数倍になるであろう物語を私は少女に聞かせた。
私がこのような色々な話を言って聞かせると、必然金髪の少女は次第に私と親睦を深めていった。
そして、あのメイド妖精に聞かされた話―――この少女の過去の詳細が、次第に分かって来たのである…。
少女の名は「フランドール・スカレーット」である事。
ありとあらゆるものを破壊する程度の能力…を所有している事。
紅霧異変以降は幾分か屋敷内を自由に歩ける事(しかし屋敷から外へ出ることはできない)。
吸血鬼には様々な弱点が存在しているという事。
…とまァこんなところである。
また、私と出会った当初は時折力加減ができず何度か生命の存続を危ぶまれるような状態になったこともあった
(そういう時は基本的に館の他の住人に治療してもらうことが常であった。
これは
フランドールの面倒を見てくれる私が死んでしまっては損だからと考えたからであろう)、日を増してゆくにつれて
そういったことはなくなっていった。
この他にも色々な問題点があったが、その問題点も館の住人と協力して解決することができた。
かくして、私は衣食住が完全に保証される場をようやく確保したのである
最終更新:2017年01月16日 20:15