ある日、紫様は一人の赤子を拾ってきた。
その赤子は幻想入りしてきた捨て子だったようだ。
紫様はその人間の赤子を育てると言い出したのだ。
その子は私の弟になった。こんな何の変哲もない人間が。
その子は紫様をお母さんと、私を姉さんと呼ぶ。
人間は下等な者と思ってはいたが、私も段々とその子に愛着を抱き始めていた。
あれから18年程経った今、その子は成長し、立派な青年となっていた。
その子は変わらず、私を姉さんと呼ぶ。
だが私は、もうあの頃の私ではない。
私はお前をこんなに愛しているのに、お前はまだ私を姉さんと呼ぶ。
私はお前をこんなに愛しているのに、
お前は私を藍とは呼ばない。
私はお前をこんなに愛しているのに、
お前は他の女の側にいる。
私がどんなにお前を愛しても、お前は私の弟なのか?
そんな事はあり得ない。
そんな事は許されない。
お前の側にいるべきはこの私だ。
お前のためなら何でもする、お前のためならどんな願いでも叶えてみせる、
私に愛を教えてくれた、お前のためならば。
お前は寝ている。何も知らずにすやすやと。
私がお前に恋い焦がれている事も、私がお前の近くにいる事も。
私は悪い妖怪だ。だからお前の寝床へやってきた。
その唇は、もう誰かの物になってしまったのか?
もうそんな事はどうでもいい。
これから私に書き換えるのだから。
「愛しているぞ...私の可愛い◯◯...」
私はお前にキスをした。
私の初めてのキスだ。
もうお前を離さない。
お前が私を藍と呼ぶまで、永遠に...
最終更新:2017年01月16日 21:03