最近、お嬢様は一人の人間をお気に入りのようだ。
彼は吸血鬼であるお嬢様や妹様を見て、微塵も嫌悪感や恐怖を抱かない。
それが理由か、お嬢様や妹様、パチュリー様と美鈴まで、彼と親しくなっていた。
私はどうなのだろう。
私のこの能力はかつて人間に忌み嫌われ、私は迫害された。
彼もそんな人間の一人なのか?
私はそれを恐れ、彼には「メイド」としてしか話す事はできない。
本当はそれで充分なのだろう。
私はこの館のメイド長なのだから。

止まった世界。
この世界の時間は私の手で支配する事ができる。
今まさにこの世界の時間は私の物となっているのだ。
お嬢様でさえこの私の「世界」に干渉する事はできない。
無論、彼も私に支配されている。
この「世界」にいる時だけは、彼に近寄る事ができる。
「メイド」ではなく「十六夜咲夜」として。
彼に近寄るだけで、心の底から何かが湧き出てくる。
私はこの青年に恋しているのだろうか?
そうなのかもしれない。
私はこうやって、彼に近寄りこの心の正体を探っている。

最近、彼が他の女性と話しているのを見ると、心の底から何かが湧き上がってくる。
これは今までとは違う。
「嫉妬」?「殺意」?
そうか、私は彼に近づく者にそんな感情を抱いているのか。
こんな感情をいちいち抱いていては、メイドとしての仕事は務まらない。
ならどうするべきか?
私は一つの考えが浮かんだ。

時が止まる。
彼も止まる。
私はそんな彼に近寄って、彼の頬に触れる。
この感覚だ。
心が熱い何かで満たされる。
このまま、キスでもしてみようか。
そうすれば、私はこの感覚はもっと強くなる。
それに、キスをすれば私は他の女の先を越す事ができる。
彼に近づく者達全ての頂点に立てる。

私は彼にキスをした。
ああ、心が熱い。
さっきよりもずっと、ずっと。
やっとわかった。
私はこの人が好きなんだ。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。嬉しい。
もっと触れたい。彼に触れたい。
もっと、もっと、もっと。

時は動きだす。
私はいつものように彼から離れ、ただの「メイド」に戻る。
でも、今はそれが辛い。
離れたくないんだ。
彼から離れるだけで、涙が流れる。
これではメイドの仕事は務まらない。
次はどうすればいい?
そんな事はもうわかっている。
彼を私だけの物にするんだ。

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最終更新:2017年01月16日 21:06