◯◯さん。
私の大切な人。
幼い私をいじめっ子から守ってくれた勇敢な人。
こんな私に微笑みかけてくれた優しい人。
私の初めてのお友達。私の初めての大切な人。
あなたには
諏訪子様も
神奈子様も見えている。
「きっとこれは運命なんだ」幼い私はそう感じた。
ずっとずっと…あなたの側にいられたら…。
「守矢神社の風祝として旅立つ事になりました」
私はあなたに告白をした。
でもそれは愛の告白じゃない。
心が引き裂かれるほどに辛い。
悲しい。離れたくない。
そんな感情が私を蹂躙していた。
あなたは驚く。
当然だよね。こんなの、普通じゃありえない…。
それでもあなたは私を疑わない。
「頑張ってこい」
そう言ってあなたは私に微笑みかける。
「いつか会いに行くよ
その世界に行ってな 約束だ」
あなたは私は抱きしめた。
嬉しいはずなのに、とっても悲しい。
その約束は、決して果たされないのだから…。
幻想郷。
神奈子様と諏訪子様の存続のためにやってきた。
私の側にあの人はいない。
そんな世界に意味はあるの?
あの人はこの世界には来れない。
そんな世界は必要なの?
そんな事ばかり考える。
今の私は「東風谷早苗」なんかじゃない。
ただの「風祝」だ。
神様のために働くだけの存在。
あの人の側にいない私など、「早苗」ではない。
これから一生、「早苗」にはなれない。
あれから数日、
私はいつものように仕事をする。
神社の掃除、妖怪の退治。
上空から人型の何かが飛んでくる。
どうせ天狗あたりの妖怪だろう。
仕事の邪魔をするなら退治するだけ。
「やっと見つけたぜ」
飛んできたのは、人間だった。
私が、「早苗」がよく知っている人間だった。
「妖怪の山に神社が出現したって聞いてさ
もしかしたらと思ったんだけど…
まさか、本当にお前だったとはな」
その人は私に近寄って…
「会いに行くって、約束したろ?」
そう言って私を抱きしめた。
私は泣いてしまった。
嬉しくてたまらないのに。
違う、嬉しいからなんだ。
◯◯さん。
私の側にいてくれる大切な人。
私はこの世界で生きていく。
あなたと共に、「東風谷早苗」として。
最終更新:2017年01月16日 21:21