アリスさん、さすがにずっと家にいるのもアレだから外で働きたいんだけど。
「ダメよっ! 外には怖い妖怪や人間が一杯いるもの!
もしかしたら食べられちゃうかもしれないわ!」
…それ、既にあちこちに妖怪の友人を作ってる僕に言う台詞?
「あんな女達より、より恐ろしい存在が何処かに潜んでいるのかもしれないわ!
そうね…どうしてもというのならこの子達を連れて行きなさい!」
「シャンハーイ…」「ホウラーイ…」
人形達の目が死んでいる…よっぽど主人のことが気に掛かっているのか…。
はい、いらっしゃいませー…って何で来たのアリス。
というかなんで店知ってるの。
「もちろん、あなたが心配だったからに決まってるじゃないっ!!
上海も蓬莱も中々連絡よこさないし!」
あー…何か触ってたような気がするけど…報告用だったのねあれ…。
ともかくアリス、僕は問題ないから、後、あちこちに設置済みの人形は回収して行ってね。
僕には上海と蓬莱がいれば十分でしょ?
「…くっ、遅くならない内に帰るのよ」
それは仕事の終わりの時間によるからなあ…。
<随分綺麗な嫁さんじゃないか。
一体どこが不満なんだい…うぉっ!?>シャキーンッ!!
妙に客入りが少ないと思ったらやっぱり人形を設置してたか…。
あとご主人、アリスは彼女かも知れないけどまだ嫁ではないです。
<なるほど…中々苦労しそうだなこりゃあ…>
じゃあ自分、表のトラップ片っ端から解除してくるんで。
上海、蓬莱、お仕事だよー。
「シャンハーイ!」「ホウラーイ!」
やっぱりこうやって仕事をやってた方が彼女らも楽しいみたいだな…。
「お帰り○○っ!! 怪我はない!? 危険な客に襲われたりとかは!?」
ないよ。 そんな強盗みたいな事件は。
「分からないわよ…前は、
妖怪『賽銭入れてけ』とか、
妖怪『ボム置いてけ』とかいろんな妖怪が出没してたんだから」
被害者の皆様、お疲れ様です。
それよりアリス、店の周りに人形を隠して設置しておくのは止めてくれないかな…?
「ダメよ! さっきも言った通り、危険な客があなたに危害を加えてくるかもしれないじゃない!
さすがにお仕事に行くのは許しても、これだけは妥協できないわ!」
上海や蓬莱も一応警護のためにいるんだからこれ以上は必要ないと思うんだけど…。
そもそも、どうしてそこまでして保護したがるのさ…。
「あなたは大事な大事な旦那様よ? 夫の身の安全も守れずして何が妻よ」
あの、結婚した覚えはないのですが…?
「私はあなたと初めて会って閉じ込めたときから、
既に婚約済みよ?」
えぇ…これが愛のゴリ押しって奴ですか。
えぇい、このままでは埒が明かない。
「だって」
アリス。
「な、何?」
僕は君のことが好きです。 愛しています。
「…な、何よ、口説いてどうにかするつもり?」
あなたの愛は痛いほどに良く分かっています。
僕の事を大切に守ろうとしていること、僕の事を心配していること。
「そうよ、私はあなたのことが心配だから…」
でもだからこそ、
僕の事を大切に想っているなら、敢えて何もしないで欲しい。
「…いやよ、何かがあってからじゃ遅いもの」
もちろん僕だってある程度の自衛策はしておく。
例えば…上海や蓬莱は必ず連れて行くようにするよ。
「…」
君が望むなら…今夜、僕を好きにしてくれてもいい。
えっと…例えば恋人の契りを結ぶとか…。
「え!? いや、いいわよそこまでは!!
分かった、分かったからそんな覚悟をした目でこちらを見ないでちょうだい!?」
ごめんねアリス。
「…ちゃんと、上海や蓬莱は連れて行きなさいよ」
うん、何かが襲ってきたときに彼女らがいないと、
ホントどうしようもないからね。
「…でも嬉しいな、○○が私の事を好きって言ってくれるなんて」
嫌いだったら、家に閉じ込められても無理やり出ていたさ。
でも君は別に外に出さない以外、ロクに制限もしなかっただろう?
ところで恋人の契りについてなんだけど…
「い、いいわよそれは! わ、私達にはまだ早いでしょうし!
そ、そうね、もっと仲が深まってからでも…」
まあ、君がそれでいいならいいんだけど。
じゃあ、明日以降からまた頑張るから、応援よろしくね。
僕は君に捕まるうちに 君のことが気になった
君はいつも人形と話す 生きてる物とは話さなかった
唯一の例外は僕くらい 僕以外とは話さなかった
いや 細かく言うならば 僕以外の異性とは話さなかった
それは彼女が恥ずかしいから? それは彼女が分からないから?
彼女が僕を捕まえたとき 彼女は僕にこういった
ようこそ私の旦那様 ようこそ理想の旦那様
そう言って僕を閉じ込めた 魔法の家に閉じ込めた
けれど彼女は何もしない 精々したのは会話と食事
急に関係も迫らなければ 寝こみを襲ったりもしない
外に出ようとすると怒られるけど それ以外は何も怒らなかった
そうして大事にされてるうちに 彼女のことが気になった
彼女は愛が分からない? 彼女は想いを伝えられない?
そう思った時 僕は決意した
彼女に愛を教えてあげよう 長い時間を掛けて教えてあげよう
いつか彼女が理解をしたら 晴れて旦那様になってみよう
なんてね。
彼女と一緒にいるうちに僕もおかしくなっちゃったのかな。
まぁ、それならそれでもいいや。
私は彼が理想と思った けれど私はまだ受け入れきれない
それは恥ずかしいから? 彼は私の旦那様なのに
私はどうすればいいのか 分からないけれど
まずはこの関係を続けていくの
きっとそうしていくことで きっと何かが見つかるから
お休みなさい 旦那様
私の大好きな旦那様
いつも弾幕はブレインと言っているけれど…
恋はブレインだけではダメなのかしら…?
最終更新:2017年02月06日 22:34