「いらっしゃい。あら、また来てくれたのね。」
 「貴方程まめに来てくれる人は珍しいから。アガサクリスQの本が入ってるわ。」
 「え、そっちじゃないの?」
 「へえ、貴方はコナン=シャーロックのファンなんだ。」
 「里の人は大体アガサQのファンなのに・・・。あの博麗の巫女でさえそうなのに。」
 「ありがとう、そう言って貰えると嬉しいわ。」
 「そう、実は私があの本の作者なの。」
 「小鈴の「こ」と「す」をもじって良い語呂を考えてたら、外界の本が目に入って。」
 「うーん、なんでって言われても・・・。何となくかな。そんなに深い理由で書き始めた
 訳じゃ無いし。」
 「アガサQ程は上手く書けないから、評判もそんなに良く無かったんだけど、でもやっぱり
 楽しんで貰えると嬉しいわ。」
 「何っていうかね、紙に自分の気持ちを書いていくのが楽しいっていうか、自分のドロドロ
 とした部分をそのままインクの染みに乗せていけるような気がして。」
 「ねえ、知ってる?外界の大作家って言われている人は、よく精神的に不安定ってこと。」
 「きっと自分の欲求や不安を、書いて紛らわせようとしたのかもね。」
 「もしかしたら、書かずには居られないような突き動かされるような、胸の奥から叫びたく
 なるような、そんな気持ちに追い立てられるように書いたのかもしれないわね。」

 「でも、そんな風にしても結局駄目。」
 「幾ら紙に書いても、本物の安心は手に出来ないわ。」
 「だから、貴方は私の物になって欲しいの。」
 「驚いた?でもね、私は本気よ。」
 「冗談じゃないわ。そう思うなら、その椅子からどうして立って出て行かないの?」
 「うん、そう。貴方が私と話している間に、色々仕掛けたの。ここには魔法の本もあるし。」
 「どうして?だから言ったじゃない。不安を消すためにって。」
 「結局書いても心が少しすっきりするだけで、やっぱりすぐに元通り。」
 「貴方に愛して貰えればきっと、私の心の隙間が埋められると思うの。」
 「だから、ね、私を見て。直ぐにそんな事なんか気にならなくなるから。」

最終更新:2017年04月08日 04:52