好きな女の子に、プロポーズの為の花束を作る事にした。
里の花屋で、あーだこーだ試作してると、良く里に来る妖怪さんに声をかけられた。
妖怪さん曰く、そんな花を無駄にするばかりで華が無い花束を作っては駄目だと。
せっかくの花々が悲しんでいると。
親切な妖怪さんは、花束のレクチャーをしてくれるといってくれた。
それから数日間、僕は彼女の花束教室に通い、花束の作製を学んだ。
ようやく手応えを感じた一作を妖怪さんに見せると、花も喜んでいるし良い出来だと楽しそうに笑った。
僕も笑顔で妖怪さんにお礼を言った。
ありがとうございます。これで、彼女に花束を渡して告白が出来そうです。
何故か、妖怪さんが俯いてしまった。
どうしたんだろ、と声をかけて見たら妖怪さんがニッコリ笑って顔を上げた。
私の花畑の奥に、秘密の温室があるの。
そこに希少種の素敵な花があるわ。ちょっと案内するから取りにいかない?
貴方が手ずから取った花々で花束を作れば、きっと素敵なものになるわよ。
僕は、妖怪さんの申し出を快く受けた。
何ていい人なんだろう。妖怪が怖いだなんて偏見だよね。阿求さんの本もあんまり当てにならないなぁ。
僕は彼女の日傘を追うように、里の出口から花畑へと向かった……。
……
…………
………………
数日後、○○の思い人に一束の花束がいつの間にか贈られて来た。
苧環、鬼百合、金盞花、枸杞、華鬘草、鳳仙花、万寿菊で彩られた花束。
結局送り主が誰かは解らず、○○が花束を持ってやって来る事も無かったという。
最終更新:2011年03月04日 01:19