易経講座3

 最近本を読み進めるに至って、紅魔館に入り浸るばかりとなってしまった。仕事と最低限の休息を除けば、大抵は図書館の中で本
を読んでいる。本も中盤になり面白くなってきた頃であり他の何よりも本を読む事が楽しくなってきている。騒々しい外界に居る時
には、こんなにも読書が面白いなんて思いもしなかったが、最近はすっかりと活字中毒となってしまった。
 今日もいつものように図書館へ行くと、彼女はいつものように自ら紅茶を煎れてくれる。茶葉の微かな苦みを 引き立てる甘い
ミルクの味を楽しんでから、僕は前回読んでいた本を開けようとするが、彼女は本を開こうとした僕の手を押さえる。白くほっそり
と柔らかい彼女の手であるが、意外にも力は強く、僕の指は少しも動かない。
 お腹が空いている時に目の前の食事へのお預けを食らった様な、強烈な飢餓感を感じて思わず彼女に文句を言いたくなるが、
彼女の真剣な目を見ると興奮がやおら醒める様な気がした。透き通った水の様に僕を見透かすような、だけれど温かいお湯の様に
僕を気遣うような、そんな目で彼女は僕を見ている。

「大丈夫かしら、貴方疲れている様だけれど。ちょっと熱を入れすぎじゃないかしら。」

 彼女は僕の手を握りながらそう言うが、本を読みたい僕は彼女をやり過ごそうと適当な事を言う。まるで道化の様に振る舞る
姿は、どこかで見た薬物疑惑が報じられた有名人が、空元気を出して否定をするような姿であった。


 震為雷 

 この卦は天から雷が落ちる様を表した卦です。古代の中国では天からピカリと落ちてくるその姿を見て、速い動きを意味する震
という文字を当てはめました。夏目漱石の様な作家は電光影裏に春風を斬るなどと著作の中に書いておりましたが、正にそのよう
に一瞬の電光石火の様なイメージを持つ卦であります。その卦では雷が鳴ると人は驚き慌てるが、落ち着いて対処すれば、雷が音
だけ響く事と同じ様に実際は大して問題は無いであろうというシュチュエーションを表しております。附和雷同と言われますが、
そのような態度では問題が有るでしょう。ここはしっかりと冷静に対処するべきです。

 占例 震為雷 一爻

 私が以前占った人でありますが、ある男性が女性より猛烈なアプローチを受けたため、それに対してどのように対応するべき
かと、質問を受けた事があります。普段は私は筮竹を用いたりすることが多いのですが、その人の話を聞いて卦を立てることが
あります。易は色々な状況を整理しているため、その状況に当てはまる卦を選びアドバイスをすることが有ります。
 よく筮竹をじゃらじゃらかき混ぜて当てずっぽうで占っているのに、正しい答えが出る物かと疑う人が居られますが、それには
この様な裏が隠されていたのですね。
 さて、今回ですが男性から聞いた話が大変この卦に当てはまっていたため、直ぐに自信を持って回答することが出来ました。
なにせ女性の名前は某天子と仰られる方でおり、しかも地震を起こす能力をお持ちの方。ここまでくれば易の立て方は自ずと定め
られます。震為雷の卦の如く、男性の方には驚くことがあろうが、落ち着いて対処すれば問題は無いとアドバイスをしました。
 そしてその後、相手の女性の方もまた、私の所にて易占を求めにやってこられました。私は驚きながらも、男性と同じ様に
易の卦を求め、女性の方に対しては二人で力を合わせるようにすれば、問題が無いと答えました。そしてその後、男性と女性は
お幸せになられたそうで、目出度し目出度しというお話ですが、実はこの話には続きがあります。

 男性も女性も両方共に私の所に来たのは偶然では無く、両人ともにある人物から勧められたからという言葉を、私は易占の時に
聞いていました。後日その人物について調べたところ、竜宮の使いであることが分かりました。
 古来竜宮の使いは竜神の意思を伝えるために、空気を読む力を持っているのですが、この能力は古代中国では、立派な人は身に
つけるべき能力であるとされていました。
 別に単に人に謙りお世話をするというのではなく、物事の前兆の空気が震えるように微かな兆しを察知するという能力であり、
これで時流に乗り遅れずに付いていくという能力です。これだけ見れば、単にそのお付きの女性が主君の身を案じ、一肌を脱いだ
だけなのかも知れませんが、お付きの女性はその後で直ぐに婚約に至ったそうです。
 ところで、某天子なる女性は大変行動力がある、と言えば聞こえはいいですが、我儘放題をしていたという中々の評判を、
迷い家の住人より聞く事が出来ました。もし使いの女性に恋人がいたのならば、仕えている主人に嗅ぎつかれる事が一番厄介で
しょう。邪険にすることができず、然りとて放っておいては、我儘な総領の娘に奪われるやもしれず。となっては夜もおちおち眠
れないでしょう。主人に隠れて交際する内にバレてしまっては、飽き性の彼女が隠していた男性に興味を抱くのは目に見えています。
 自分の恋人を奪われることを恐れた彼女がとった行動は、先に主人に良縁を宛てがい、その後自分の婚約に持ち込むことでした。
そのためには主人の恋愛が上手くいかなくてはなりません。
主人は見た目は大変麗しいものの、その言動は我儘放題、まるで雷か地震の如くとあっては相手の男性はそれに耐えなければなり
ません。そのため女性の方には多少の自重を求め、男性の方には外堀と内堀が埋まるまで、全く動かないでもらえるようなアドバ
イスをする人物が必要であったのかも知れません。
 勿論これは全ては私の想像にしか過ぎません。しかし私が聞いた事の中で一つ確かな事を挙げるとするならば、お付きの女性は
主人の女性よりも一ヶ月程早く、お子様を授かられたそうですよ。

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最終更新:2017年02月12日 19:16