この歴史はお前のために
ただただ大事なお前のために
作り創って入り込む

「おはようございます、旦那様?」



最初は気にも留めなかった 迷い込んだだけの彼
少し里に住まわせて 帰して終わりの存在だった

「いつもありがとうございます…よければこれを」

彼から贈り物を貰ったときに 私は自分に気が付いた
私はただの守護者ではなく 彼の前では一人の女だと


私は彼の事を知ろうとした 生活の仕方、女の好み
たぶんそれはあくまでも 人間として愛する事を考えていたからだろう

「毎日大変そうですね…何かお手伝いできますか?」

一心不乱に彼を見るうち 私は私ではなくなっていく感覚に囚われた


彼の好みも把握して いよいよ行動を考えたとき
現実は地獄を突きつけた 私の喉元に突きつけた

「実は私、外来の方で好きな人が居まして…
 恥ずかしながら、直接会った事も、話せたこともないんですが…」

彼には惚れている女が居た 私ではなく別の女
私は人として女として ただただその女が恨めしかった


絶望に深く漬かっていた時 私は自分を思い出す
そうだ私には力がある そこらの女には到底ないものが

いまだ彼は抽象的にしか その女の姿を見ていない
ならばそこに成り替わるのは 非常に簡単なことだろう


会いたいならばツテがある 私が呼んで来てやろう
そうして彼を誘い込む

「ありがとうございます慧音さん!
 名前もよく分かってないのに、よく調べられましたね…」

里の守護者として 住人の事はよく分かっている
もっともらしい事を言い 私は着替えに行ってくる


今から私は慧音を捨てる 全ては大事な彼のため
彼の傍に居れるなら この名前なんて必要ない

「あなたが探していた人ですね」

何も気づかず喜ぶ彼 私はそれを見てそっと微笑む
ああ幸せだ 幸せだ 大好きな彼の傍に居れるなら

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最終更新:2017年02月12日 19:33