関西熟年夫婦4 藍夫妻編

廁へ行こうと、縁側への障子を開くと昨年ぶりの雪が降っていた。ああ、今年も自慢の尻尾はもう出せなくなってしまうのかな。目の前の景色に情緒もなく、ため息が出てしまうのはこの地に住み慣れてしまったからだろう。ああ、この様では、紫さまに俗物と呆れられてしまうだろうよ。
「おかあさん、雪降ってる!」
「そうね、綺麗ね」
障子戸の隙間から顔を覗かせて、幼い次女は私が初めてこのクニに来たときのようにはしゃいだ。
「ウチ、外で遊びたい」
「ダメよ、◎◎。もうこんな時間何だから、明日にしなさい」
「ケチな事言わんといて、ウチは妖怪やねんから体力あんねん」
ピンと背筋をはると、後ろから金色の尻尾がふわりと表れてぶんぶんと左右に触れた。もう生意気になっちゃって、ホントに誰に似たのかな、あの人に決まってるだろうけれども。
「問答無用!」
「きゃー!」
私はがばっと娘を担ぎ上げると、そのまま寝間にまで、ややとあやすように運んでやる。
「ほら、あなたが朝早起きしたら、もっといっぱい雪が積もってるわ。そしたら、雪だるまもかまくらも色んな遊びが出来る。だから、少し我慢して今日は寝なさい」
「もう、わかった。おかあさんに免じて、我慢する」
そんな言葉、どこで覚えてきたんだ小娘。

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最終更新:2017年02月12日 20:19