ああ、本当にさみしいんだ。普段誰もいないこの荒ら屋で、こうやって月明かりの元で一人で居ると、心の中にぽっかりと
穴が空いたような心持ちがするんだよ。初夏なのに、昼間の空気は暖かくなってきたのに、夜になると冷たい風があたりに吹き
つけるように、何だか私の心まで寒くなってくるんだよ。
そんな時、君に側にいて欲しいんだ。今だけじゃ無くって、ずっと・・・。一人で居て、心が凍りついてしまいそうな時でも、
君が私の側に居てくれれば、それだけで良いんだ。君が居てくれるだけで、私は一人じゃ無いって、そう思えるんだよ。
うん、確かにそうだ。君の言うとおり、私には配下がいる。だけれども、それはあくまでも唯の手下に過ぎないんだよ。ふむ、
勿論そんな意味じゃないんだ。彼らは私の大切な配下なんだよ。だけれども、そうなんだけれども、私は一人なんだ。妖怪として
一人で生きられる程に強くなく、然りとて命蓮寺では一人部外者のようで、まあそんな風に思っている私が悪いんだけれども、
それでも私は孤独を感じていたんだ。君が側に居て、嬉しいんだけれども、それでも君が居なくなった後のさみしさを今、私は
想像してしまっているんだよ。
ああ、本当に面倒な女だと思っているよ。今君がいるこの瞬間を上の空にして、君が居なくなる恐怖を感じているのだからね。
それでも君がいてくれることに、私は感謝しないといけないのだろうね。君は本当にいい人だよ。だけど、ああ、だからこそなの
かもしれないのだけれども、私は君がいなくなることに耐えれないんだよ。弱い女だと笑ってくれても良い、呆れてくれても良い、
だけれど、私は君にいて欲しいんだよ。本当だよ、君がいつまでもいてくれないかと、私はいつもひっそり願っていたんだよ。あ
あ、お願いだ、どうか、どうかこの夜は、朝が来るまでは、私の側に居てくれないだろうか。本当に馬鹿なお願いだと、君の都合な
んて微塵も考えていないものだと、頭では分かってはいるんだよ・・・。それでも、それでも、どうか、どうか・・・。
最終更新:2017年06月19日 23:01