古明地さとりのカウンセリング7

 こんばんは、おや、少々お疲れの様ですね。何やら色々あったみたいですね。どうでしょうか、ちょっとの間ここでお話をして
いきませんか?悩み事は人に話すだけでも楽になると言いますし、是非どうぞ。

 ふん、成る程、団子屋同士で張り合っていた同業者がいつの間にか恋のライバルになり、そして相手を闇討ちしてしまったと。
それは確かにどうなるか不安ですよね。いくら相手が口無しと言えども、自分の心の中で罪悪感が有るのは自然なことですからね。
ふむ、心がはじけそうだと、ええ、それはそうでしょうね。あなたの心の中の衝動がさとりの私には手に取るように伝わってきま
すからね。しかし、同時に私にはあなたが自分では分かっていない、無意識も同時に伝わってくるのですよ。ええ、あなたの心の
奥深くに存在してあなたがこうなった原因を作った、その重大なものがね。

 そうですね、この無意識の原因を話すために、最初にあなたの今までの行動を振り返ってみましょうか。まずは最初に月の兵士
だった時のことですね。あなたとその女性は同じ作戦に従事していたそうで、色々遣り取りをすることも多かったそうですね。
その時には其程まで意識をしていなかったそうですが、その後、地上に残り団子屋を開く時になると、隣同士で商売敵になった
そうですね。そして良く客として来ていた男性を巡って、恋のライバルともなったと。
 いやあ、他の人のことは良く分かると世間ではよく言いますが、全くもってそうなのかもしれませんね。実はあなた、彼女に
囚われていますよ。ええ、殺してやったのにとお思いなのかも知れませんが、いえ、だからこそなのですよ。
 あなたは団子屋を開いたそうですが、どうして隣同士で開いていたのでしょうか。別にその場所がいくら良いものであっても、
流石に其程近いのであれば、自分からさっさと場所を移すという手もあったでしょうに。ははあ、負けた様な気がして、移すに
移せなかったと…。実はその「負け」という言葉が、あなたの心の奥底にあるキーワードなのですよ。

 あなたは団子屋でその方と張り合っていたのですが、無意識では自分が負けることを知っていたのですね。ええ、そんな馬鹿な
とお思いでしょうが、実はあなたの無意識には「自分は負ける」という、その言葉がしっかりと根付いていたのですよ。それも
言霊としてあなたを縛る程になんです。あなたは無意識のうちに、自分は全てに負けるというイメージを持っていたので、団子屋
で張り合い、そして男性を巡って鞘当てをしていたのですね。どうですか、あなたがいくら商売の種を考えても、相手の方の方が
一歩先を行っていたのではないですか。それも完全に打ち負かされるのではなく、僅差で負けるように。ええ、それもあなたの
無意識がこの負けるという状況を長く続けようと、上手に調整していたからなんですね。

 いやはや、本当に上手いものですね。生かさず、殺さず、唯々あなたを痛めつけるために、あなたの無意識は行動をしていたの
ですからね。専門家の私としても、少々恐ろしくなる程ですよ。ですが、あなたにチャンスが訪れました。あなたは遂に負けてい
た相手を殺すことが出来たのですから。ええ、これまでの負け犬の、いえ負け兎と言ったほうがいいのかも知れませんが、まあ
今までの上手くいかなかった人生を、完全に修正することができるチャンスなのですよ。
 どうでしょうか、これを切っ掛けに新しい人生を歩んでいくか、それとも今までと同じ様に無意識に足を引っ張られて生きてい
くのか…。折角殺人まで犯したのに、今のままではその恋人と別れてしまうでしょうね。なにせあなたが恋人とダメになれば、
あなた今までしてきた、どんな行動すらも負けて駄目になったという、無意識が大喜びをする展開になるのですからね。
 ですから、折角カウンセリングを受けて下さったあなたには、幸せになって欲しいのですよ。なにせ、相手を殺してその
存在を奪って、自分の物にして堂々と生きて行くのは、それはそれは、とても身震いする程に楽しいことなのですから…ねぇ。

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最終更新:2017年07月03日 19:59