TH_YandereSS/download/7




この文書は今までにこの幻想郷において
様々な女性に娶られていった外来人たちが行方不明になるまでの記録を残したものである。
なお、(意味は無いが)各外来人たちのプライバシーに配慮し、各犠牲者(?)の名前は全て○○で統一させて頂く。



赤き色は我が為 白き色は貴方の為

白き純粋な心にて 貴方をただ待ちわびている



その男は博麗の巫女、博麗霊夢に惚れられた。
数多くの妖怪が住まう幻想郷において、
博麗神社に婿入りできるのはかなり幸運なことと言えるだろう。

更に言うならば、数多くの実力者と関係の深い博麗神社に嫁ぐ事が出来たなら、
この幻想郷において困る事など何一つも無いだろう。

…無論、普通にお付き合いが出来ればの話、だが。



『霊夢さんって凄いっすね~』

彼がそう話しながら私の家にやってきたのは春の頃だったか。

『初めて…なんていうでしたっけ? あの…そう! 弾幕ごっこって奴です!
 アレを見たんですけど…うん、すげえカッコ良かった!!
 華麗に弾を避けて相手の妖怪をやっつけてたんで思わず応援しちゃったんすよ!』

興奮した様子で私に話してくれた。

『でさ、倒し終わった後にこっち向いてニッコリと笑ってくれて!!
 流石は色んな実力者に認められているだけあるっすよね~♪』

私はそうか、と言いながら聞き流していた。
もうこの幻想郷で何年も暮らしている私にとってはそのくらいの出来事は日常茶飯事だった。
まあ、だからこそ外来人がこうやって反応するのを見るのが楽しいのだが。



『ヤバいっすよ先輩先輩!!』

またある日、彼は話しかけてきた。

『あの…霊夢さんにですね? お茶のお誘いしてみたんすよ…
 そしたらその…オッケー、貰えちゃいました…』

私は静かに、おめでとう、と言ってやった。

『やーばーいー!? 外の世界では良くナンパしてたけど成功した覚えとか一度も無かったから
 成功した時にどうすればいいのかとか全然分からないしそもそも何を着て行けばいいのかも分からない
 あああああわからないわからないわからない先輩助けてえええええええ』

私は深呼吸して落ち着くように促した。

『スー…ハー…』

正直、外の世界と比べてかなり服の種類が少ない幻想郷においては
ダサい、だの、イケてる、だのと言ったファッションはない(と思う)。
そこら辺を含めて説明した結果、彼は落ち着いた表情でこう話してきた。

『そうだ! ありのままの自分を見せればいいっすね!?
 よっしゃあああ! 行きます!!』

彼はその時、全く気付かなかっただろう。
彼が笑顔で話している後ろで顔だけをひょっこりと出して聞き耳を立てている少女がいた事には。



数日後、○○とは異なるお客さんが来た。

「おはよう。 アンタに用があるの」

○○のお目当ての少女、博麗霊夢が私の家に来たのだ。

「私は彼について色々調べたつもりよ。
 だから彼の事は何でも知っている…つもり。
 でもね、私の知っている彼は本当の彼じゃないのかもしれない」

珍しく回りくどい話し方をする彼女に対し、私は『要件は何だ』と答えた。

「アンタの所に彼についての情報は紙かなんかで保管してあるはずでしょ?
 それを私に頂戴」

要は○○の情報を売れ、というのである。
全く困ったものである。

「もちろん、タダでとは言わないわ。
 そうね…」

断った所で力押しで盗られる事を考え、私はすぐに渡す事にした。
どうせ、今盗られるか後で盗られるかの違いなのだ。

「あら、物分かりが良い人…!?」

恐らく、彼女は書類のある一点を見つけたのだろう。
この幻想郷において外来人に恋した女が必ず着目する点。

「『帰還希望者』ですって…!?」



彼女はそれっきり、私の家には来なかった。
恐らく、準備をしているのだろう。

『いや~この前のお茶会から全然会えてないんすよ。
 神社に行っても人気も無くって』

彼女はもう、糸が付いただけの風船では無くなったのだろう。
彼は知らないが、彼女はもう、その糸を引っ張ってもらえるものと思っている。

『聞いてますか先輩? この前のお茶会の時の笑顔がも~』

何も知らずに惚気出す○○が哀れであり、可哀そうであった。



「おはよう。 これ、返しに来たわよ」

ある日、彼女は○○についての資料を返しにやってきた。

「もう要らないわ。
 彼についての情報は集めるだけ集めたし」

そうして、無造作に私の机に書類を置いて言い放つ。

「これで○○は私だけのもの。
 今更アンタが何をしようとアイツを助ける事は出来ないから」

私は返す。
何をしようとも、彼を助ける事は出来ないだろう? と。

「それもそうね♪」



『あの、先輩…』

それからしばらく経ったある日、
いつもより妙に元気の無い感じで○○が家を訪ねてきた。

『あの…霊夢さんの様子がおかしくて…
 可愛い子だったはずなのに…まるで別人みたいに…怖くなって…』

どうやら均衡を保つ巫女にも保てないものは有るらしい。
何か最近変わった事が無いかどうかを聞いてみた。

『最近…ああ、そういえば色んな女性に声を掛けられるようになったんっすよ。
 まあ、その場で仲良くなっても二度会う事は無いんすけど』

あっ、このパターンは…

『俺…この世界が怖くなって来たっす…
 女の子はみんな可愛いけど、あの子たちってみんな妖怪とか神様とか、
 例え人間だったとしても俺たちよりもはるかに強力な存在っすよね…!?』

人間というものは大変めんどくさいもので、
未知なるものに対しては恐怖といった感情を特に強く持ちやすい。

『お願いします先輩! 帰る方法を教えて下さい!!』

私はこの時、言うべきか言うまいかで迷った。
言うにしろ言わないにしろ、結局は地獄なのだ。
だって帰るには…

「はくれいれいむのちからがひつようなのよ」

彼の後ろからこちらを伺っている彼女が、声を出さずにそう言っていた。



「ありがとう、彼の友達になってくれて。
 お陰で無事に間に合わせる事が出来たわ」

それから数日後、彼女が私の家に来てそう話した。

「アンタが彼を引き留めてくれていたお陰で、
 完全な形で結界を作り出す事が出来たわ」

彼はどうなってしまったのかを聞く。

「今、彼は楽しく外の世界を満喫中よ。
 幻想郷の中でね」

そうか。 私は静かに頷く。

「あらいけない。
 彼と夕方からデートだから急いで行かなくちゃ」

彼と彼女は2人で楽園を作ったのか。

「そうそう、河童のボイスレコーダーとやらで今の○○の声を聞く事も出来るわよ?
 聞いてみる?」

私は彼女の申し出を受け、レコーダーを再生する。

『レイムさんってすっごい可愛くて綺麗な人っすね!』
「あらそう? あなたもカッコ良くて素敵よ?」
『恥ずかしい話なんすけど…俺、異世界に行った事があるんすよ!
 そこでレイムさんと瓜二つな女性に会ってちょっとしたロマンスを…』
「も~…まさか浮気?
 そのレイムさんがどういう人かは知らないけど、
 今は私だけを見てよね?」
『もちろんっすよ! 2人でいっぱい幸せになるっすよ~!!』



巫女は2人で暮らす為 力を付けて楽園を築く

それは2人の愛の為 それは2人だけの為

例え見た目は牢獄でもね 幸せならば楽園だよね?






感想

  • すき -- 名無しさん (2022-06-21 10:50:38)
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最終更新:2022年06月21日 10:50