――もう直ぐ、秋も終わる。
「私と一緒に、その身を埋めるつもりはないかしら」
紅葉舞う紅葉の木々の中、奥に枯れ木が見え隠れする。
静葉の顔は伺えなかったが、彼女も似た様な顔をしている気がした。
「此処を、貴方と私の終焉の地にしましょう?」
告白の、つもりらしい。
彼女は横顔を一瞬向けると、その頬が赤く染まっているのが見えた。
「もうじき、冬が来るから」
そう言って一枚の枯葉を摘むと、手の中で握り締めてバラバラにしてしまう。
「私と貴方の関係がこうなってしまう前に、ね。
今あるこの気持ちを、永遠のものにしたいから」
枯葉の欠片が、風に流されて舞ってゆく。
「残された時間は、もう僅かなものだけど――」
静葉は空を見上げる様に、目を伏せると。
小雪がそっと、舞い落ちて来る。
「”YES”か”NO”か」
静葉は真っ直ぐに此方を見て。
「私を好きかどうか。その気持ちは、教えて下さい」
自分への好意を確かめて来た。
口を開く。
瞬間。
びゅうっ、と大きな風が吹いて。
スカートを靡かせながら、彼女が笑っている。
「……ふふふっ……うふふふふ」
紅葉が全てを覆い隠すほどに舞う。空さえも覆い隠すほどに。
「――私達の世界へ」
かんげいするわ。
其処にはもう、静葉の姿は無かった。
……彼女を探そうと、一歩足を踏み出そうとする。
そのまま転ぶ様に、男は一面の紅葉のベッドへと、落ちていった。
男は動かない。
また、大きな風が吹き、紅葉が舞うと。
其処にはもう、誰も居ない。
ただ風の音に、幸せそうな女の声が、舞い踊る様に聞こえるだけだった
最終更新:2010年08月27日 11:12