月都貴人専属医療班、隊長の日記4

7月3日 『事故』に会った部下は誰も助からなかった
運命が操作されたとしか思えない程に、運が悪かった
貴人に使われる設備を私の権限で、無制限に使い続けたが。誰も助からなかった
あり得ない

7月4日 依姫様は月初めの特訓をされている。サグメのお気に入りである○○の姿は、今月も見えない

7月5日 生き残った部下が騒がしくなったと思ったらサグメが私の持ち場にやってきた
拳に力がこもったが、わざとらしく敬った
無駄に丁寧な言葉を使ったおかげで、少しはしゃべれた
要約すれば、損失の穴埋めをしてくれるらしい
ふざけんな!!

7月10日 先の、サグメからの『ありがたい提案』にわざと回答しなかったら豊姫様から空中庭園に誘われた
空中庭園には依姫様もいた、サグメもいた
サグメは○○の注いでくれたワインを飲んでいた、頭が痛くなってきた
綿月姉妹から、サグメの『ありがたい提案』を受け入れるように説得された
吐き気が込み上げた

7月11日 綿月姉妹からの説得にも、はっきりと回答しなかったが。無駄な抵抗だった
依姫様から資料を受けとるように『命令』された
資料の中身は、サグメが選んだ……『事故』で喪失した部下たちの穴埋めに送られる人員についてのものだった
手を後ろに組んで、受け取りたくないと言う意思を示したが、依姫様が私の手を掴んで無理矢理渡した

7月12日 酒場でヤケ酒を喰らっていると、豊姫様が隣に座られた
他の客や店員は、青ざめた表情で逃げた
豊姫様は、明日にサグメの選んだ人員が来ると言われた
そして私の心中は理解しているから、後で厚遇で穴埋めすると約束してくれた
そんなものはいらないから、サグメに持ち場を荒らさないように言ってくれ!

7月13日 穴埋めの人員は私が来る一時間以上も前から待ってくれていた
こいつらは驚くほどに忠実で、資料の通り技能もあった
だが、世間話すら出来ないほどに決まった言葉しか話さない
無理もない、サグメが裏で糸を引いているのだから

7月14日 酒場の主人に言われた、豊姫様ならばもっと良い場所に案内してくれるでしょうと
店に入れてくれなかった。居場所がひとつ無くなった

7月15日 酒場の話が豊姫様の耳にも入ったのか、豊姫様から空中庭園で昼食を取らないかと声をかけられた
サグメが連れてきた連中は、息を吹き替えしたように私に誘いに乗るように促した
だが私は見た、生き残った部下たちをにらむ連中の顔を

7月20日 ここ何日か、昼食は空中庭園で綿月姉妹と食べている
サグメはいつも、定位置で○○を横にはべらしていた
ドレミーはいたりいなかったりであった

7月21日 ○○がサグメのワイングラスに、目を盗んでキツめの蒸留酒を入れたあとにワインで味を誤魔化していた
一気に酩酊させて眠らせるつもりのようだ

7月22日 残念ながら、サグメは酒豪のようだ
まったく潰れない

7月23日 ○○の思惑は外れたようだ、下手に酔わせたせいで突飛な発想をするようになった
ワインが空になったのを見て、買い物に行こうと言い出した
綿月姉妹が血相を変えて付いていった

7月24日 判読不能

7月25日 まだ筆を持つ手が震えている
7月24日の日記は、私でも解読できなかった
当たり前だ、サグメが○○との買い物中に、いきなり玉兎の頭をワイン瓶で殴り付けたのだから
殴り付けた理由は、○○がその玉兎からすれ違いざまに罵倒されたからだそうたが
だがそれは、サグメ。お前が○○を追い詰めたんだ
だがそんなこと、酔った頭で無くても理解してくれないたろう
サグメは持っていた瓶で何度も殴った。瓶が割れたら、今度は足で踏み抜いた
何度も、何度も、何度も
意識を失っても、死んでしまえと叫びながら、何度も、何度も、何度も

7月26日 自宅にも戻らず、空中庭園への誘いも断り。私は意識を失った玉兎のそばを離れないと決めた
サグメが連れてきた連中の様子が明らかにおかしい
何かを待っている、わたしがここを離れたらこの玉兎の命は無いだろう

7月27日 サグメが連れてきた連中の一人に、やや乱暴に話かけた
何故そこまでやれるのかと
サグメと常娥の世話をしていたから、貴方ぐらいまったく怖くないと言われた
常娥、その名を知らないものはいないたろう。たが私ですら、あれは都市伝説ではないかと考えていたが
むしろ納得できた。だから綿月姉妹はサグメを止めれないのだ

7月28日 サグメが酔った頭で興奮しながら叫んでいたのは、不幸中の幸いだ
あれのお陰で、この玉兎は死の運命から外れている
希望の芽はある。この玉兎を助けて、あいつの鼻っ柱をへし折ってやる

7月29日 生き残った部下たちに、無期限の休暇が与えられた(その間も給料が出る辺り、肉らしい)
ますます、そとに出るわけには行かなくなった

8月1日 連絡を取っていた、生き残りの部下たちが全員。旅行に招待された
クソ!!!!

8月2日 部下たちが何とか、かき集めてくれた缶詰めの食料と水で飢えをしのいでいる。密封されているものでなければ、何をされるか分からない

8月3日 判読不能

8月4日 判読不能

8月5日 あれは忠誠ではない。恐怖で縛っているだけだ

8月6日 サグメが連れてきた連中を殴り飛ばしていても、まるで気分が良くならない
むしろ悪くなるだけで意味が無い
私は負けてしまった。8月3日の朝、私は強烈な眠気に襲われた
ガスか、それとも空けっ放しの缶詰めに何かを入れられたのかは分からない
起きたときには全てが手遅れだった
あの玉兎は、トイレで首に縄をかけられて吊り下げられていた
自殺等と言う表現は、絶対に使わない

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最終更新:2017年08月21日 21:19