古明地さとりのカウンセリング13
こんばんは、最近は雨が降っていて暑さが和らいでいるようですね。ですからあなたもここまで来る事が出来たのかもしれませんね。
ようこそカウンセリング室へ。そのようなお体ではさぞご苦労なさったでしょう。さあ、椅子にお掛け下さいな。ええ、大丈夫ですよ。
あなたの胸の内を存分に伝えて下さいな。
ほう、そうですか。ええ、お話は良く分かりましたよ。そうですね。中々に涙ぐましいお話ですね。あなたが彼に尽くされているのは
良く分かりましたよ。しかし、あなたはそれでも不安な様ですね。実はこれにはあなたの心の奥底に潜む物が関係しているのですよ。
例えば幻想郷の外の世界には、湖よりも広い海というものがあるそうですが、そこには時に大きな氷の塊が浮いているそうなのですね。
そしてその氷を飛んで眺めると、まあ結構大きな氷の塊なんですけれども、実は氷の塊は水の底にも存在しているんですよ。そしてなんと
その氷の塊は、見えない方が大きいそうなんですよ。それも上から眺めているだけでは想像も付かない程だそうで。ですから迂闊に小船で
近づくと見えない部分にぶつかって、あっという間に船が破れてしまうと。
実はあなたの心の奥底にも、そのような氷の塊が潜んでいるんですよ。それを私達
さとり妖怪は、無意識として読んでいるのですけれど
ね。あなたの心の中に潜む、外からでは目に見えないその無意識が、実はあなたに訴えかけているんですよ。
あなたは相手の人からの愛を得ようとしていますね。それはもう自分の体を犠牲にする程ですが、しかしそれは少々危険なことなのです
よ。あなたの全てを相手に捧げても、相手の人がそれをどう感じるのかはそれはまた別という問題なのですね。あなたがええ、もしかした
たらの話しでいいのですが、全てを捧げた相手の人があなたを捨てたら、あなたはどうするのでしょうか?はい、そうですか、と言って円
満にお二人が別れるようには到底思えませんねぇ。ええ、恐らく泥沼になるというやつでしょう。あなたも無意識ではそれが分かっている
ので、不安になるのですね。相手の気持ちを操ることはあなたの場合難しいでしょうし、かといって自分の恋を捨てることもできないと。
たしかにそれでは不安にもなりますよね。自分がいかに努力をしても、自分を犠牲にしても、どうすることもできないですから、人は自分
ではどうすることもできないことを考えると、不安になりますからね。
ふむ、不安の解消方法でしょうか。そうですね、一番は相手から愛されなくなった時に、すっぱりと諦めることなのですが、それができる
のならば苦労はないという奴ですね。ならばどうするかという訳ですが……。そうですね、あなたは童話の様に今まで行動してきました。
そしてその童話が不幸な結末に終わっていることも、あなたの心に影を落としていますね。
ですから、童話を分析するのが良いでしょうね。あなたは人間の男性と恋に落ちました。そして人間として生きるために、足を得るために
魔女の秘薬を使いました。そしてその代償として声を失いました。いまやあなたはかすれ声すらも出すこともできません。童話では王子に
は婚約者として、人間のお姫様が居ました。そうですね、例えば王子にはヨーロッパの近場の王妃と、遙か遠方の、スカンジナビアから
来た王子の国の言葉を話せないもう一人の王妃がいたとでもしましょうか。もう一人の王妃は遠征で怪我をした王子を助け、それが元で宮殿
に入ることとなったのですが、王子の愛を巡って二人は争ったのかもしれません。遠い異国の地では、海を自由に渡れる味方を動かす権力を
使えず、権力争いで不利に立ったもう一人の王妃の方は逆転を狙い、毒薬で相手の王妃を暗殺しようとしましたが、それが失敗し、王子を暗殺
しようとしたと罪を被せられて海に投げ込まれ、哀れ泡となって消えました、と。
ええ、これはあくまでも一種の想像に過ぎません。しかし、重大な示唆を含んでいますよ。もし、もしもあなたがどうしても不安を解消し
たいのであれば、もう一人の王妃がやったように、相手を排除することが必要なのかもしれませんねぇ。それも彼女は異国で仲間を使えません
でしたが、あなたには里や周囲に仲間がいますからね。いくら弱小の妖怪と言えども、ただの人間からすれば太刀打ちできないものですから
ね。ええ、不安というものは具体的に解消できる方法があれば、それは収まっていくものなのですよ。さて、不安は収まりましたでしょうか?
最終更新:2017年08月21日 21:22