月都貴人専属医療班、隊長の日記8
12月20日 もう年も押し迫っている
去年の正月の自分には、絶対に想像できない場所に来てしまった
12月21日 綿月ともあまり会いたくない。仮初めとはいえ私の持ち場で寝ていたら
早朝に、同期の出世頭から叩き起こされた
電話などではなく直接叩き起こされた
装甲車に押し込まれて、走り出して何分か経ったら爆発が起こった
私の仮初めの持ち場からだった
同期の出世頭は、裏社会や遺族がどうのと言っていたがほとんど聞こえなかった
私はただ1つの懸念を聞いただけであった
私はもう、綿月のそばにいなければならないのかと
同期の出世頭……彼は、すまないと言いながら頷いた
その日のうちに、綿月の二人の私室に私の分の寝具が運び込まれた
12月22日 同期の出世頭がひっきりなしに、綿月の二人に報告や書類を上げていた
悪い予感しかしない
豊姫はクリスマスよりもお正月の方が重要よと言って……多分、私を慰めているのだろう
依姫はしきりに、もっと兵隊を集めろとうるさかった
12月23日 同期の出世頭が豊姫に報告を上げた際に聞いた
依姫はどこに行った?
彼はやや苦笑しながら豊姫様に聞かないのかと答えた
私の歪んだ顔を見たら、謝りながら教えてくれた
明日、一斉に動くそうだ
サグメも綿月に私兵を、
ドレミーも含めて貸したそうだ
明日は寝ていた方が良いと言われたが、日記を書いてる際も全く眠くならない
12月24日 虐殺が始まった、空中庭園から見下ろせる場所で依姫が訓示を行っていた
しかしそれ以降は穏やかで快適であった
サグメはやや洋風かぶれなのか、○○と一緒に形だけでもクリスマスを楽しんでいた。まだ早いのにワインを○○と飲んでいた
その際にも、豊姫はしきりに情報端末を気にしていて。受話器の先から同期の出世頭の声が聞こえた
○○は何度かこちらを気にしてくれたが、気の効いた表情すら出てこなかった
12月25日 同期の出世頭から電話があった
何故か、トイレにいる時。つまりは一人きりの時であった
彼も今トイレだな?と疑問文でありながら断定口調であった
さすがは情報畑だ。私を襲撃から助けてくれた事と言い、出世するはずだ
しかし声に覇気が無かった、現場の写真が欲しいと言ったが
彼は言葉に詰まっていた
ただ一言、昼頃に依姫から成果報告の電話があるから
覚悟しておいた方が良いとだけ言われた
だが、覚悟なんていくらつけても足りないだろう
依姫は、私の仮初めの持ち場に砲弾を叩き込んだ奴を見つけたと。興奮しながら話していた
自慢の剣でいたぶっているのか、何者かがうめく声と。命乞いすら通り越した、もう楽にさせてくれと言う嘆願の声も聞こえた
12月26日 今は午前中だが、この文章を書いている
朝食の席に依姫がいた
もうこの時点で嫌な予感しかしなかった
表情からして、あまりにも浮わついていた
依姫は嬉しそうに、ひとまずの実行犯は全員捕まえるか『処分』したと話していた
そして、指揮官は生け捕りに成功、してしまったようだ
サグメはこちらに目を向けながらドレミーから耳打ちされていた
サグメは時間があれば行くと言って、○○に向き直った
つまりこないと言うことだ
12月27日 昨日の記憶が途中から無い
と言うか所々ですら抜けている
覚えているのは、依姫が生け捕りにした指揮官の頭を踏みつけて剣を構えていた姿だ。気が付いたら朝であった
トイレで同期の出世頭、彼に電話をかけたが、切れたと思ったら今は無理だと言うメールが来ただけであった
それも切れると同時に来たので、緊急用の定型文なのだろう
情報畑なら、それぐらいの仕掛けは作れるだろう
私はいったいなにをやっているんだ
12月29日 空中庭園へ綿月の二人に、同期の出世頭が報告に来た
何か喋りたかったが、迷惑がかかってはと思って目をそらしていたら
彼の方から声をかけてくれた
世間話、にしては重々しい話だった
生け捕りにした指揮官は案の定『処分』された
他の生け捕りした者も、調べ物が終わったら順次『処分』される
だがそれは、本題に入るための前フリだと信じていた
彼は少し回りを見てから、私に向かってどうしたいと聞いた
自由と尊厳が欲しいとだけ言った
12月31日 希望の光が見えた
同期の出世頭、彼からのメールが届いた
積極的な協力は難しい、私も君みたいに自由と尊厳を求めたかった
たったこれだけの文章だった、しかし私には嬉しい援軍だ
最終更新:2019年12月13日 06:54