月都貴人専属医療班、隊長の日記10


1月31日 同期の出世頭から画像付きのメールが届いた
彼もしんどい立場なのだろう、やや罵倒含みであった
しかし中身を見れば罵倒含みなのも理解できる
野戦病院の写真だからだ
酷いのは想像しなくても理解していたが、実情を見ると自分の想像力の低さ
に涙が出る

2月1日 今日も兵器たちはエリアを動き回っている
何も気にせずに撃ちまくっている
完璧な空調がある空中庭園ですら、すえた臭いがあるような感覚に陥る
しかしそれは錯覚なのだろう、綿月の二人は戦果にホクホク顔だから

2月2日 同期の出世頭は、言葉すらもう思い付かないのか
写真を何枚か私あてに送るだけであった
これを書いている間にも、爆発が起こり黒煙の立ち上る場所がまた増えた。つまりまた死者が、そして怪我人が増えた
……私も医者のはしくれだ

2月3日 空中庭園に持ち込んでいた医療具を持てるだけ持って、野戦病院に向かった
依姫はまた剣を振り回しに、豊姫は端末に映る内容に夢中であったので。思ったより楽であった
外に出ると同時に、鼻をつんざくどころか切り裂く臭いに襲われた
だが行くしかない
同期の出世頭の姿は無かった、彼がいないのだから針のむしろである
しかし、猫の手も借りたい状況
私が治療を始めると、皮肉含みではあるが、腕前を老齢の医者から誉められた
かつての部下の姿が見えたが、私とは目を合わせてくれなかった
それも、その通りであろう

2月4日 携帯端末がうるさいので、投げ捨てた
履歴だけは見たが、綿月のどちらかであった
構うものか

2月5日 もっと手の足りていない野戦病院に行けと言われた
行くしかない
私以外にも向かう者がいて、かつての部下であった
話すことが出来ず、息が詰まった

2月6日 止血と消毒だけで精一杯
枕元輸血ですら手を掛けれた方である
その枕元輸血も、ボロボロの者がもっとボロボロの者に与えている始末、なので共倒れした者もいた
まだ戦火は続いている、助けれなかった者は多いが、新しく運ばれたものがそれを上回る

2月7日 ドレミーが兵士を連れて近隣を蹂躙していると言う噂が飛び交っていた
確かに、爆発音が昨日より多い
情報畑が通信設備の破壊や電波妨害をやっているとの話も聞こえた
私の腕にある電波時計が圏外だと訴えていた
多分これも本当なのだろう

2月8日 屋根を光の帯が通ったのが見えた
後には何も残らなかった
しかし、消えたのが屋根だけなのは不幸中の幸いと思う他は無い


2月9日 わたしが、あのものたちを、しにおいやったのだろうか
わたしは、くうちゅうていえんで、○○のように、なにも、かんがえずに、なにもせずに、いたほうが
もっと、すくないかずの、しにんですんだのか?

2月10日 感情を出すのが辛い
ここからは箇条書きで、私の見た事実のみを書き記す

昼頃、2階から綿月の私兵が見えた
少し経って、綿月の二人が私の名前を叫びながら入ってきた
依姫は私の名前を叫んでいた
豊姫は、あのメールは罠だと。同期の出世頭の端末がハッキングされたと叫んでいた
隣にいた、私のかつての部下が。家族の仇だと言いながら、私に向かってメスを突き刺そうとした 
部下が、粒子になって消えた。近くにいた負傷者の下半身も消えた
豊姫は私の心配しかしていなかった
依姫は、私と豊姫の間を。私兵や自分の剣で片付けていた
同期の出世頭が叫びながら入ってきた
彼も、自分の端末がハッキングされて、私に送った記憶の無いメールがと叫んでいた
現場を見た彼は、ヒザから崩れ落ちて泣いた
依姫が彼を立ち上がらせ、顔を一発殴った。ハッキングされた事の罰らしい
空中庭園に戻るまでの間、何度か投石があった
全員死んだ
皮肉混じりとは言え、私を誉めてくれた老齢の医師もいた
もちろん、死んだ

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最終更新:2017年09月04日 23:16