古明地さとりのカウンセリング16

 こんばんは、すっかり日中も涼しく成ってきましたね。地底では灼熱地獄があるので少し暑い位ですが、高い山の上ではもう寒い位なのかもしれませんね。それでは
どうぞお二人ともお入り下さいな。ええ、そうですお二人ともですよ・・・。

 そうですか、自分が仙人として未熟過だという訳ですか。そして或る時、偶々知り合った青い邪仙にその事を漏らした際に、ここに来る様に言われたと。その言葉が
どうにも気になってここに来たと。成る程それは中々面白い状態ですね。
 しかしそちらの女性の方は、あなたが此方に来ることに大分反対していたのでは無いのですか。いえ、私は確かに心が読めますが、この場合使うまでも無いのですよ。
そうですか、何故か分かりませんか。でしたら少々お時間を頂いて少しお話をしましょうか。「貴方」ではなく、「其方の女性」についてですが・・・。

 さて、あなたは自分が仙人として未熟だと思っている様ですが、さてはて本当にそうなのでしょうかね。そちらの女性は名だたる仙人ですから、その人と比べるのは
少々、さながら聖上人と出家していない一般の仏教徒を比べるような物でしょう。そして普段の修行の様子を伺いますと、どうやら彼女は随分と熱心に指導されている
様ですね。ええ、それは大変に良いことであるのですが、同時に大変に恐ろしいことでもあるのですよ。
 いえ、別に神通力を得る事自体は、其程までに恐ろしい物では無いのですよ。この幻想郷には文字通りの人外が、いたる所にウロウロしていますからね。しかし、彼
女の指導については問題があるようですね。ええ、その熱意は大変に良いのですが、しかしその熱意の裏に執着が潜んでいるとすれば、話しはまた違うものとなるで
しょうね。彼女があなたに指導する時に、実は裏のメッセージが込められていたのですよ。あくまでも表向きは、指導することであなたのことを良くしようと、そういう
気持ちがあるのですが、同時に裏では「貴方は一人前では無い」と、そういう意味が込められていたのですよ。彼女が指導すれば、それだけ貴方の脳裏にはこのメッセー
ジが植え付けられ、そしてあなたは指導されればされる程に、自分がだらしなくなっていくと思い込んでいく訳ですね。思い込みの力は凄いですからね、あなたはそれに
縛られて、自分の力を全く出せないようになってしまったと。

 そしてその修行が全ての生活に及べば、それはもはや洗脳と言っても差し支えがないかもしれませんね。あなたの一挙手一投足に彼女は目を光らせ、そして全てに干渉
すれば、あなたの個人の意思は全て無くされて、彼女の操り人形に墜ちていますね。そしてあなたはその洗脳を修行だと勘違いしている様ですので、益々もって救いが
無いのかもしれませんね。ですから彼女はあなたが此処に来る事に反対していたのですよ。あなたを自分の思い通りに操っていることが、バレてしまいますからねぇ。
 あくまでも彼女は仙人としては善人かも知れませんが、その薄い布の下には鬼の角が隠れているのですよ。そしてあなたは彼女の上辺に騙されて、その内面に潜む執着心
に気づいていなかったと。

 ですが、あなたには救いがありますね。邪仙に漏らした言葉が切っ掛けで、彼女の本心を知ることが出来たことですね。昔から鬼は怪力乱神として理屈が付かないもの
として恐れられていましたが、その鬼の内面は実は脆いのですよ。ええ、自分一人では立つことが出来ないからこそ、嘘を殊更に嫌ったりして正義により掛かったり、自
分の力を誇示してそれを他人にも強制したり、そして他人を操ってそれを精神的支えにして、無理矢理に生きているのですよ。彼女の執着心の裏には、自分の精神の脆さ
があったという訳ですね。いやはや、修行をした仙人がこんなにも脆いとは、全くもって矛盾なのでしょうね。

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最終更新:2017年09月25日 22:00