さとり/24スレ/22
ええ、どうして此処にたどり着いたか、ですか…
そうですね、実は私、物書きをしておりまして。
いやあ、そんな大層な先生と呼ばれる程ではないのですが、此処に来る前はお陰様で少々売れておりまして。
最近文章を書いておりますと、なんというんでしょうかね、心の中で少女が呼び掛けてくるんですよ。
そして、その少女が言うとおりに、作品を仕上げると、不思議と売れましてなあ。
私の作品は、心理描写をメインにしておりましたので、いつも執筆時には作品の中の世界に没頭して、
いわば映画監督がメガホンをとるように作品を作るのですが、ここ最近あの少女が作品の世界の中に現れるんですよ。
そして私の手を引いて、二人でとぼとぼ作品の中を歩いているんですよ。何せ私の作品はシリアスと言われていますからね。
必然、二人でとぼとぼと、あの少女に手を引かれて、まるで自分が小さい時に、知らない場所で迷子になったように、
暗い作品の中を歩くんですな。
まあ、あくまでも妄想の世界の出来事ですから、私も余り大袈裟に捉えていなかったのですが、どんどん二人で潜る時間が長くなりましてね。
そして一旦潜ると、深くてより酷い世界に入り込むので、一層彼女の手を離せないんですよ。
生憎その作品は良く売れましてな。私としても、読者の期待に応えるためには、彼女と二人でいないといけなかったのですよ。
そうしていると、大作の中に入り込んで、いや、私が思い付いた話なのですから、そういうのは、変な言い方なのですが、
一大大作だと思ったら、遂に此方に来てしまいましてね。
いやあ、あれを元の世界で出版出来れば、さぞかし有名に成れたのでしょうがね。そこは惜しいところですよ。
え、此処に誘拐されて来て、帰りたくないのかって?
私としても、そう思うべきなんでしょうがね、ついぞそう思えなくってね。
そもそもあの少女を最初に拒まなかったときに、そして二人でとぼとぼ歩いている時に、私は彼女の虜になっていたのかもしれませんね。
そうそう、彼女の名前なんですけれどもね、ピンクの髪に、目玉をくっつけた、ああ、×××と言うのですか。
いやあ、いつも聞くのですが、頭の中で聞いた瞬間に言葉が溶けていってしまいましてね。
音としては認識するのですが、脳で理解は出来ないのですよ。
おや、噂をすればというやつですね。私はこれで帰りますので失礼しますね。それでは、また何処かで。
感想
最終更新:2019年01月23日 21:53