気が付く妻

 僕の妻はよく気が付く。
「あなた、はいどうぞ。今日はあなたが好きな肉じゃがですよ。」
「ありがとう。」
「はい、温かいお茶ですよ。外は寒かったですからね。」
「ああ。」

 僕の妻は僕の事をよく知っている。
「この時間はこのチャンネルのニュースですね。」
「うん。」
「どうぞ、味噌汁の七味は控え目にしてありますからね。」
「よく分かったね。」

 僕の妻は僕の事なら何でも知っている。
「あら、お電話が鳴っていますよ。出なくて宜しいのですか。」
「いや、多分仕事の電話だから良いよ。」
「そうですか。今年異動された××さんって、お綺麗で皆様から御人気らしいですね。」
「・・・。」
「でも、ご用心なさって下さいね。色々と良く無い噂も聞きますので。」
「どんな。」
「ええ、どうやらよく違う男性と歩いている姿を見られた人がいるそうで。あなたなら大丈夫でしょうけれども。」

 僕の妻は時々鈍くなる。
「なあ、何か知らないか。」
「あら、何のことでしょうか。」
「・・・。」
「・・・。」
「何かしたのか。」
「いいえ、私は何もしておりませんよ。でもそうですね、ひょっとすれば、何かあったのかもしれませんね・・・。」
「・・・。」
「愛していますよ。あなた。」






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最終更新:2017年12月11日 19:59