古明地さとりのカウンセリング17

 いやあ、ようこそ、地霊殿へ。最近は急に寒くなってきましたね。
これ程に寒いのでしたら、外来人の方には少々厳しいのではないかと思いますがいかがですか?
そうですか、あまり苦にされていないようなのは良かったですが、実は貴方が寒さに強くなっている訳では無いのですよ。
拝見したところ、その服に色々仕掛けがあるようですね。どうですか、ちょっとここでお話でもしていきませんか。

 なるほど、最近ある女性と喧嘩をしてしまって、しばらく距離を置いているということですか。
しかしそれでも彼女のことが、時折頭に張り付いてしまっているという事ですね。
ふむ、友人にも話したが、誰も相手にはしてくれないと。
そうですね、確かに他の人からすれば、たかだかそれだけのことでと思われてしまうかもしれませんが、
しかしそれでも本人からすればそれはそれは大変なものですからね。ええ、どうしてそれが分かるかですか。
 私はさとりですが、今回は別に貴方の心を読んでいる訳では無いのですよ。
まあ、さとりの第三の眼を使っているのは同じなのですがね。

 実は貴方の問題は心ではなくて、脳の方にあるのですよ。
ええ、外来人の方からすれば確かに脳の中の神経が化学反応を起こして、
それで心と精神が作られていると考えるのは自然なのですがね。
実は私に今見えているのは、貴方の脳に植え付けられた種なのですよ。大丈夫ですよ、慌てないで下さいな。
ええ、別に、貴方がいつか飲み込んだ西瓜の種が、貴方のお腹から芽を出す訳ではないのと同じ様に、
その種も貴方の頭蓋骨を物理的に突き破る訳では無いのですよ。
 しかし、いくら物理的に影響を与えないからといって、精神的に影響を与えないかというのはまた別の問題なのですね。
貴方の脳に植え付けられた妖怪の力で作られた種は、精神的にしっかりと影響を与えていますね。
どうですか、最近彼女から離れることを考えると、罪悪感が湧いてきませんか?
彼女の元に一刻も早く戻らないといけないような焦燥感が湧いてきませんか?
この幻想郷から逃げ出すことが何かとても恐ろしいことのように感じてきませんか?
ええ、そうなのですよ。貴方のそういった思いは、全て貴方が距離を置こうとしている
その女性から植え付けられたものなのですよ。

 貴方がその女性が望まない物を考えるたびに、貴方に植え付けられた種が、
貴方に罪悪感や恐怖を植え付けているのですね。
いやはや、なかなかに巧妙な手口ですね。これは普通の医者に行けば見過ごされますし、
永遠亭でもかなり乱暴な外科手術でないとどうにも出来ませんね。
しかしまあ幸運にここのカウンセリングルームに来られましたので、
折角なので、貴方の脳にある種を取り除いてしまいましょうか。
安心して下さい。永遠亭のように頭を切り開いてしまう訳ではありませよ。
一、二の三、はい、これで貴方にあった種は取り除かれましたよ。
いやあ、さとり妖怪に精神で勝負を挑むのは少々どころか、無茶だというものですねぇ。
それでは貴方はこれで健康体なのですが、しかし少々問題が有りましてね。

 実は貴方が今着ておられる服なのですが、その服を着ていると不思議と寒くないでしょう?
ええ、その女性が丹精込めて作った、特製の植物から作った繊維が使われているのですよ。
そしてその服を貴方が着ている限り、貴方の居場所がその女性には直ぐに分かるという事なんですよ。
ですから、貴方が地上に出られたら、直ぐに女性から貰った物を全て捨ててしまうことをお勧めしますね。
そして家にある全財産を掴んで、大急ぎで博麗神社に駆け込む方が良いですね。
何せ貴方に植え付けられていた種が取り除かれたのは、その女性に直ぐに分かってしまいますからねぇ。
 そうですね、確かに博麗神社に行っても直ぐに外に出られるかは分かりませんし、
その女性が外界まで追ってくるかどうかは分かりませんね。
でも、一つ分かっていることがあるとすれば、その女性は大層に花と植物を愛しているそうですね。
自分の花壇を荒らした妖精に酷い折檻をしたとも聞きます。
さて、そんな彼女が折角丹精に育てようとした「モノ」を枯らされたと知ったら、一体どうするでしょうね。
きっと全財産を失うことよりも非道い事になりそうな、そんな気がしますねぇ。






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最終更新:2017年12月11日 19:56