『アニムス』

【1】
 私、古明地こいし。今、適当に外をぶらついているの。で、そしたら人里を歩いていたの。
だから、あの人を探しにそこら辺をうろうろとしてみた。そしたら見つけた、あの人、○○。

 嬉しくなって私は○○に駆け寄った。彼の腕に取り付いて、一緒にお散歩をした。
とても楽しい。何も無かったけど、○○と一緒に居るのは楽しい。
何故なら私の居なきゃいけないのは○○の隣だから。

 いつの間にか夕暮れになっちゃった。そうなったらもうおうちに帰らなくちゃいけない。
もっと○○と一緒に居たいのに……。

 名残惜しいけど、今日はもう○○とは離れることになった。
別れ際に、○○の首に抱き付いて、
頬っぺたにチュウをした。また会おうねのチュウ。

 あ、寺子屋の子たちだ。一緒に遊ぼうと声を掛けた。
けどみんなはこれからおうちに帰るみたいだから、一緒に遊べなかった。
ちぇっ、つまんないのー。仕様がない、私もおうちに帰ろー。
お姉ちゃんも私を心配して探してるみたいだし。だってそう言ってたもん。

 あれ? いつの間にか夜になっちゃってる。お月様が綺麗。
お星様たちがキラキラ空に散りばめられている、お砂糖みたいに。

 私は歩きながら晩御飯のおにぎりを頬張って、時々夜空を見上げた。
やっぱりお月様は綺麗。お砂糖みたいに輝くお星様。いっぱい。

 風も気持ち良いし、今日はこの空の下で寝よう。

【2】
 今日、○○の家に入れてもらった。お邪魔しまーす!

 置いてる物のは少ないけど、散らかってるって印象だった。
布団は出しっぱだし、急須もお茶もあんまり洗わないで使いまわしてるみたい。
だから片付けてあげた。布団もぱっぱと押し入れに、
お茶もジャブジャブ水で洗った。○○、ビックリしてた。

 そのあと、○○の作ったお夕飯を食べた。とても美味しかった。
ちなみに、○○が作ってる最中、おかずをちょっとだけつまみ食いしちゃったのは内緒。

 で、ご飯を食べさせてもらったのだから、食器は私が洗うことにした。
ていうか、どうせ○○は碌に食器を洗わないんだろうし。

 その日はそれで帰ることにした。日もすっかり暮れちゃったし。
それに、うちには最近帰ってないし、きっとお姉ちゃんが心配してる。

 帰り際、私はその場で、○○の持っている電話に電話を掛けた。
こんな近くで電話をする意味なんてないのに。ちょっとした演出ってやつかな。
○○ってば、怪訝な顔をしていた。風情の無い人よね。

 だからちょっとしたいたずらをした。

 私、メリーさん――って。

 いじわるだったけど、でも、また会いたいよ、また会いに来るよって気持ちの裏返し。


【3】
 あ、起きた。

 私は○○の枕元に屈みこんで、彼が起きるのをじっと見ていた。
○○は寝惚け眼で目をしばたたかせてから、二度寝を決め込もうとしていた。

 ふっと○○のおでこに息を吹きかけてあげると、驚いて跳び起きた。
危うく頭ぶつけるところだった。危ないなー。

 でも、それで周りをきょろきょろ臆病なネズミみたいに見回しているのって可愛いなぁ
。男でも、可愛いものは可愛い。

 まだ寝坊助さんな○○に、モーニングコールをしてあげる。

 もしもし、私、メリーさん。今、あなたの家の中なの。……これからもね。

【4】
 ○○の家に知らない女が来た。○○はその女に連れられてどっか行っちゃった。

 私は追いかけた。そして後を尾けた。

 ○○を盗られた。我が物顔で盗ってった。
○○は抵抗しないばかりか、笑ってさえいる。女も笑っている。
男に媚びる女がするような、品が無くて甲高い声で笑っているのが癇に障る。あいつ……
私を嗤ってるッ!

 ムカついた! ムカついた、ムカついた、ムカついたッ!

 だから包丁で刺してやった。そこら辺にあった包丁で、後ろからぶっすりと。

 はしたない笑い声だった女は、次の時には見っともない金切声を上げて地面をのた打ち回った。
まるでゴキブリの死に際。そんな女に私はトドメを刺す。何度も、何度も、刺してあげる。
何度だって刺してあげる。死ぬまで刺してあげる。
傷口から滲み出る程度だった血が、飛び散るようになっても。
それで私の服に付いたとしても、そんなこと知らない。

 やっと死んだ。手を洗わなきゃって私は立ち上がった。

 でもその前に片付けなきゃ――ってもう一度それを見た。
そしたら○○がそれの前で膝を突いていた。
私は彼をゆすってみたけど、全然何も言ってくれないし、動いてくれなかった。

 つまんない。

 それから、あっと閃いて、私は電話を二つ取り出した。
一つを○○の前に置いて、それに電話を掛けた。
果たして○○は、鳴る電話に気付いて、出た。

 ――もしもし、私、古明地こいし。

 私は○○の目の前にしゃがんで、そう言った。

 ゆっくりと○○は私の方へ目を向けた。そして私と目が合って、大きく目を見開いた。
やっと目を見て話せたね。

 私は微笑んで、それから満面の笑みを浮かべようとした。
でも、急に可笑しくなってきたものだから、笑顔を見せるどころか、
いきなり噴き出して、大きな笑い声を上げることになった。

【完】

 ※余談ですが、こいしは上の一連の行動を全て、原作通りに終始笑顔でやっています。







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最終更新:2018年09月16日 18:29