幾枚かの大きな金貨と添えあわせの銀貨が重ねられてチャリンと音を立てた。
そのまま私の手の内に収められたものを無造作に財布に仕舞いこんだ。
(本当は私の働きではないのだけれど、姉さんの物は私のモノだから)枚数の確認などという、面倒くさいことはしない。
どうせ几帳面に決められた金額だろうから。
「どうだった?」
席を立つ前に目の前の女に聞いたのは、ふとした気まぐれだった。
ただ、何となくの、だけれどもある種の確信をもった怖い物見たさのような、そんな気持ち。
「ええ、最高だったわよ。」
中々の笑顔で答える目の前の女。軽く笑みを溢す様は、女が使っている人形の様に美しかった。
普通の人間ならば騙されるであろう、その表情の偽物度合いは宝石やらバッグやらで「作っている」自分にはよく分かった。
「三人とも…ええ、皆居なくなってしまったのは、本当に良かったわ。最高のお姉さんね。」
「そりゃどうも…。」
姉さんが褒められると嬉しくなってしまう。例え見え透いたお世辞めいた決まり文句であってもだ。
「本当、あそこで無理をしてでも縁を切っておかなければ、きっと彼を悩ませる災厄になってしまったわ。」
それじゃあ、と挨拶をして席を立つ女。疫病神は厄を操り引き寄せる。
その当たり前の事実のせいか、タップリと砂糖を入れた筈のコーヒーは、これまで飲んだ事がない程に苦かった。
感想
- ん?よくわからん -- 名無しさん (2018-12-04 01:08:01)
- 普通 -- 名無し (2018-12-06 16:55:09)
最終更新:2018年12月06日 16:55